井戸端は憑かれやすい

ほんのり効いたBLがいい心霊ギャグ4コマ

井戸端は憑かれやすい 竹屋まり子
天沢聖司
天沢聖司

めちゃくちゃ好きでたまに読み返したくなる優しくて笑える心霊4コマ。BL好きにはたまらないコメディだと思います! 神社なんて継ぎたくない不良の御守(みもり)には、ものすごく霊に憑かれやすい可愛い系の幼馴染・井戸端がいる。 神社なんて継ぎたくないわりに、幼い頃から怪異に襲われている井戸端を毎日助け続けて来たために能力はガンガン鍛え上げられている。 バシバシ殴って霊を祓う姿が、どう見てもイジメにしか見えないことが悩みだったが、ハグすることでも祓えると判明。すると今度は当然ながらBL疑惑が浮上して…というあらすじ。 動物霊に憑かれた井戸端が可愛く見えてしまったり、普段の言動から「束縛系オラオラヤンデレサイコボーイズラブ」と誤解されてしまったり、ほんのりBLが効いたギャグが面白い! 「眉唾」で御守の唾を井戸端に…は、オカルトとBLを上手く使ってていいなぁと思った。 また、男子たちだけじゃなくて、女子も「エロいことを考えると霊が逃げる」などで笑わせてくれるところが良い。 あと別にオタクじゃないキャラがオタク文化に精通してる様子をみせるところがすごい好き(グッズのトレードの掲示板の文章とか、息子&娘大好き御守パパが「(息子のフィギュアを作る)いい原型師が見つからない」って言ったり) 実は御守の妹が呪いの人形で御守と井戸端を結びつけていた…という、予想外の展開にはすごい笑ったけど、それをただのギャグで終わらせるのではなく、2人の曖昧な関係にきちんと決着をつけてハッピーエンドを迎えたのがよかったです。 作中に登場した霊感がないひとでも霊視できるようになる「狐の窓」は、思わず真似してしまいました。 https://comic.pixiv.net/works/4102

voiceful

ネットの歌姫と引き篭もりの私

voiceful ナヲコ
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ

こんなに繊細で優しい「救い」の物語が、「コミック百合姫」黎明期に存在した奇跡を思う(「百合姫」の前身、「百合姉妹」から続いた連載)。 キスシーンひとつ無い、女性同士の様々な感情を包摂したこの作品こそが、現在の拡張していく「百合」世界の、感性の基礎になったと言えると思うし、今読んでもその内容は、全く色褪せない。 ♡♡♡♡♡ ネットで出会った歌声に心を救われた、引き篭もりの女子高生は、不意にその「歌姫」と知り合う。会う度に親密になる二人だが、歌姫が歌に打ち込む為、会えなくなると言う時、二人の心は……。 ♡♡♡♡♡ 神様と出会ってしまった女子高生の、浮かれる気持ちと浮かれてしまった後悔、そして会う度に募らせた気持ちが胸に迫る。 一方、女子高生に温かさをもらい、辛い過去を振り切り、勇気を出してネットの世界から出ようとする歌姫もまた、切実だ。 傷を持つ二人が、互いへの想いをよすがに現実へと踏み出す、繊細な友愛の物語。成人誌でも(同性・異性の別無く)傷ついた心を思い遣る関係性を描いて来た、ナヲコ先生ならではの作品と言えるだろう。 (成人誌の作品に関しては短編集『からだのきもち』をご覧下さい)。

宜保愛子の学校のこわい話

宜保愛子の自伝的マンガ

宜保愛子の学校のこわい話 東堂洸子 宜保愛子
ひさぴよ
ひさぴよ

> 「みなさんこんにちは。私の名前はぎぼあいこ。小学五年生。」 このあらすじを見た瞬間、ゾッと寒気がしました。 霊感ではありません。 実に興味深い漫画だ…という第六感を感じたのです。   宜保愛子(1932 - 2003)さん、ご存じの方も多いと思いますが、かつて一世を風靡した心霊番組に出演していた霊能力者です。 その人生は波瀾万丈なもので、幼少期の事故によって左目をほぼ失明してしまい、それがきっかけで霊能力に目覚め、人には見えない霊や魂が見えるようになるという漫画の主人公みたいな人物です。そんな宜保さんを主人公にして学校の心霊現象を解決するストーリーだなんて、絶対面白そうだと思いませんか…。 ひとまず読んでみての感想ですが、いずれも1話完結型なので読みやすいです。主に学校で怪現象が次々と発生し、それを宜保さんが霊を説得するなどして解決します。 かなり怖い話もあり、ちょっとハートフルな話もあり、心霊学園漫画としてなかなかの面白さです。中には「これはさすがに漫画向けのエピソードだろうな〜」と思ってしまう部分があるのは否めません。宜保さんが美少女すぎるし、時代背景も明らかにおかしいです。 宜保さんは1932年生まれですから、当時の学校生活はバリバリの軍国教育の時代だったはずです。なのに学校は昭和の雰囲気で、水洗トイレが登場したり、服装や設備が現代的すぎます。演出として仕方ないとはいえ、さすがにストーリーとの違和感はありました。 ところが3巻の3話目「鉄矢ちゃんの悲しみ」の回以降で、この漫画はまるっきり別の漫画へと変わります。 > 「ここからのお話は私が生きてきた戦争の時代のお話をしたいと思います」 というモノローグが突如現れ 「えっ・・? じゃあ今までの話はなんだったんだ・・・」 という気持ちは置き去りに、物語は戦時中の体験を描いたエピソードへ変わっていきます。 服装もモンペ服に変わり、厳しい軍国教育と食糧不足に悩まされる日々。最大の理解者だった兄を戦争で亡くし、弟も交通事故で亡くしているんですよね…宜保さん。 そして、空襲で地獄のような体験をします。生きてる人と、霊の区別がつかなくなるほど悲惨な状況に、宜保さんは遭遇してしまうのです。 後半はとても重い話が続きますが、それだけ宜保さんにとって戦争のことは忘れずにはいられない記憶として残っているという事が伝わる内容でした。 ===補足=== 他にも宜保愛子さんの過去が語られている漫画として、『MMRマガジンミステリー調査班』があります。 第2巻のノストラダムス大予言1999「人類は滅亡する!?(前編)」に宜保さんがゲストとして登場。キバヤシ達に、霊界の話や自身の幼少期の体験を語っています。興味があれば併せて読むと良いでしょう。

ブルース

「指が6本ある男」を巡る女達の群像劇

ブルース もんでんあきこ 桜木紫乃
天沢聖司
天沢聖司

色気の魔術師(※勝手に命名)もんでんあきこ先生の新刊ということで購入。町の名士だった影山博人という男が死に、かつて影山に惹かれた女達がひっそりと記憶を分かち合う物語。 この影山がまぁ〜〜〜すごくて。 「暗い過去を背負った陰のあるいい男」なんですよ。 これだけで「そんなの惚れない女いないわ!!」って感じですけど、作中でもまさにその通りで、過去に彼と関係をもった女性たち全員の心の中に、彼の存在が強烈に刻まれ残り続けているんですよね。 https://twitter.com/mondenakiko/status/1283882978381148160?s=20 だんだん明らかになっていく影山の過去も面白かったのですが、女達の間に流れる空気感がすごく素敵でした。 全員にとって影山が特別な男であるということが、不思議な連帯感生み出していて、それがなんかすごくいい…。 若く貧しい6本指の影山と、成功を収めた5本指の影山の両方と寝た有閑夫人。 経済格差が目に見えてわかる閉鎖的な町で出会い、影山が初めての相手だった同級生。 影山が引き取られた店で出会い、母親の葬式に立ち会い指の切断に協力した同僚。 母親の店を存続させるために頼みに行き、「1回分の礼」を受け取った娘。 上巻ではこの4人の女性の口から影山との思い出が語られます。 も〜〜ホントもんでんあきこ先生はナギと嵐とか雪人 YUKITOとか陰のある男書かせたら天下一品だなと実感しました。 影山が死ぬ少し前に「顔に痣がある女」がすぐそばで仕事を手伝っていて、この身体的コンプレックスのある女性がどう影山と関わっていたのか、下巻を読むのがすごく楽しみです。 (上巻1話の15歳の影山。最の高…)