夢の碑 風恋記

少年達は時を超え野を駆ける

夢の碑 風恋記 木原敏江
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ

幼い頃に出会った二人の少年のあまりに強い友情譚と、二人に宿る不思議な力を巡るサイキックSF、それらが絡み合い高まり合い、鎌倉時代を大きくうねる壮大な絵巻物。久々に、読まない間もつい思い出してしまう、という経験をした。 生母を失い継母に虐められる、秋葉介の長男・融明(とおるあき)と、融明の遠縁で父が失踪した露近(つゆちか)。二人は気質は違うが意気投合する。苦しみから逃れるようにして、兄弟のように仲良く過ごす二人の様子が夢の様に美しい。 どこまでも遠くへ駆けて行きたい……しかし二人は引き裂かれ、露近は京で後鳥羽院に飼われ、融明は鎌倉で将軍実朝の側に仕える。 二人を繋ぐ不思議な力は、時に互いを救い、互いの存在を感じさせる。天紋・地紋、鬼としての妖力、融明の力強さと露近の妖艶さ。その魅力で沢山の人を惹きつけ、関係を持ちながら彼らはいつも、共に野を駆けた時代を懐かしみ、遠い目をしている。そんな二人の切なさに感情移入してしまう。 二人に与えられた天命、あまりに強大な力を彼らはどうするのか……そこにはただ見送ってやるしかない、という無力感もありつつ、籠の鳥の自由を喜ぶ感覚もあって、見開き絵の美しさと共に強い感慨を私の胸に残した。

女王の花

姫と奴隷の信頼と恋は…

女王の花 和泉かねよし
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ

舞台は架空の中国の王朝。王子が産まれたため冷遇される王家の姫と、異人で疎まれる奴隷の少年は8歳の時に出会い、主従として、そして無二の友として絆を深める。私はこの物語を何度読んでも、随所で泣きそうになる。 泣きそうになるのはほぼ同じポイントだ。それは「二人で何処かへ行きたい」と願う時。 第二王妃に国を追い出される姫は、彼女に復讐を誓うが金も味方も無く、絶望的に孤立無縁。尊厳を常に奪われる彼女を支えるのは、ともに苦労を重ね、同じ師の元で研鑽を積む奴隷の少年。互いへの信頼は否応なく恋へと変わってゆく……あらゆる点で強まる二人の絆を、美しいと感じる。 しかし事は単純ではない。情勢に翻弄される姫はやがて、祖国の王となる道を選ぶが、王となるには相手と離れる必要に迫られる。互いのため、離れる覚悟をする二人。しかし別れ難く苦悩を深め、行動に迷う。 そして苦悩極まった時、二人は全てを捨て、放浪する夢を見る。 「千年の花」という呪文……千年に一度咲き、あらゆる願いを叶える花を思いながら、二人はただ、二人で生きることだけを夢想するのだ。 敵対する恐ろしい第二王妃の「成長譚」も対置させた物語はそれも含めて、人の不自由さや、人の幸せとは何なのかを切なく考えさせる。