霧島嵐児

ジェットコースター気分が味わえる傑作

霧島嵐児 かざま鋭二
完兀
完兀

この漫画、まず読んでいて非常に振り回される。先が読めない物語進行でありながら、短期的ゴールや障害が次々と現れる。そして倫理観の欠如を蛮勇と脊髄反射的情動で補填した主人公の嵐児はそれらを痛快に乗り越えていく。 その展開の体感速度も尋常ではない。読者が劇中で起こっている事態を飲み込みきる前に嵐児と物語は先へ進んでいく。あまりの超展開に思考が停止しそうになってもおかまいなしである。 しかも「ようやく飲み込めてきた。一息つけそうだな」と思ったあたりで読者を強烈に振り回してくる。つまりこの漫画で読者に心休まる時はない。恐らく作者はこの点に関してだけ注意を払っている。 そのうえで漫画から拒絶されるような置いてけぼりは喰らわないのがこの漫画の妙味である。 むしろこの漫画は、その無駄に迫力ある絵と直球165km/hどストレート頭部死球的人物描写の魅力で読者をガッチリとホールドし、落伍者を生み出さない心地よくも恐るべき魅力で満ち溢れている。(脱落する人は、この漫画に愛想を尽かして自発的に逃げ出すか、読んでて体力が持たないかのどちらかだろう) こんな漫画と出会った時、人はどうなるのか。笑うしかない。 細かいことはどうでもいいから、ただ読んで感じた面白さをストレートに笑いに変換するしかなくなる。 絶叫マシンに乗り込んでその速度とGから強制的に脳内麻薬を分泌され、展開に身を任せつつも冷静になるのを惜しむように自ずから楽しむような感覚が近い。読後感もジェットコースターと同じだ。 こんな感覚、他の漫画では到底味わえない。少しでも興味をお持ちなら是非読んで欲しい漫画だ。

カノジョも彼女

どっちか選ぶんじゃない!二人同時に大事にするラブコメ

カノジョも彼女 ヒロユキ
六文銭
六文銭

沸点が低いもので、アホガールを筆頭にヒロユキ氏のハイテンションギャグが大好きなんです。 新作が出ていることを見落としていたので、慌てて読みましたが、その面白さに一瞬で溶けました。 やっぱりいいです。 彼女がいる主人公が、美少女に告白されて、「正々堂々」二股するという話。 この「正々堂々」というのがポイント。 主人公は、嘘をつけないというか、変にクソ真面目なところがあるので、二股も隠れてすることができず、彼女にしっかりと懇願し、このような展開に。 そして、元々の彼女・咲(さき)と、告白した渚(なぎさ)と主人公の3人で同居生活をすることになる。 この時点で、もう十分面白い。 隠れて二股したり、つかず離れずの女性関係が多いハーレムものとも異なり「彼女」として2人と同時に付き合うとか斬新すぎるでしょ。 そして、それを許す「彼女」二人もまたスゴイ。 普通、こういう関係だと、とったとられただののドロドロの地獄絵図を想像しますが、そんなことにはならず、お互いの良いところ認め、むしろ主人公との関係を鼓舞するようなサポートもしていきます。 なんて良い子達なの…。このヒロインたちも本作の魅力なんです。 咲は思い切った性格で元気いっぱいで可愛い。 渚は甲斐甲斐しく健気で可愛い。(勉強できないというおバカ設定あり。) 2巻以降は巨乳の第3のヒロイン・理香(主人公に告白したが、玉砕)も出てきて、飽きさせません。 また、そんな魅力的なヒロインたちと織りなすラブコメもよいのですが、 何より主人公がこのヒロインたちを精一杯大事にする姿もまた魅力的です。 どんな時もどっちか一方だけに肩入れとかせず両方大事にする姿勢を貫きます。全くブレない。 二股 とやっていることは下衆っぽいですが、ここまで一生懸命だと、逆にカッコよくなるから不思議です。 どちらかを選ぶのではなく、どっちも選ぶ。 なかなかよいラブコメではないでしょうか。