死んだ息子の遺品に息子の嫁が入っていた話

俺の嫁と書かれたら処分しにくい

死んだ息子の遺品に息子の嫁が入っていた話 秀
ゆゆゆ
ゆゆゆ

失踪し、遠い地で病死して帰ってきた息子・明宏。 両親のもとに届いた遺品には「俺の嫁」と書かれた手紙を持つ、スリープ状態のアンドロイド・ケイコが入っていた。 訂正。 ただのアンドロイドでなく、アンドロイド型ラブドールです。 とはいえ、健全なコメディなので、ラブドール要素はオマケです。 ケイコさんは普段からアンドロイドらしからぬ振る舞いをしているため、読者が普通の人と勘違いしかけるタイミングでロボット感あふれる性能を発揮します。 それに対して登場キャラクターたちがボケたりツッこんだり。 ケイコさんにそんな改造をした明宏くんの話になって、ふと故人を偲んだり。 笑いだけでなく感動もできる漫画です。 主に登場する人物は明宏くんの妻かつアンドロイドのケイコさん、明宏くんのご両親、明宏くんの幼馴染の田中くん、田中くんの子供。 個性的な面々が揃っています。 全2巻なので、サクッと読めます。 コメディなので1巻の流れがずっと続くかと思いきや、物語は予想外の方向に向かいます。 気持ちがあふれすぎて、とっ散らかった感想になってしまったため、どんなお話か気になった方は第一話を読んでみてください。 https://twitter.com/hide_pau/status/1167429975122690048?t=5qfYS07UzGTYGuvAP4teMA&s=19

人生最大の嘘ついた

嘘から人生一発逆転!で死んだ心と向き合うラブストーリー?

人生最大の嘘ついた 梅サト
吉川きっちょむ(芸人)
吉川きっちょむ(芸人)

真面目が取り柄でパッとしなかった芸術家人生の逆転劇であり、偶然の出会いから始まる同居ものラブストーリー!? 30半ばにして画家として花開かず焦ってニューヨークへ行くも「いいひと」として便利に扱われ、いよいよ追い詰められたときにとった行動がなぜか著名クリエイターに評価され、あれよあれよと天才芸術家になってしまった主人公。 しかし、良くも悪くもその一つの嘘から全てが変わっていき…。 https://bigcomics.jp/series/17bc2f08d091b 一発逆転できるビッグウェーブが目の前に来ていたら、評価される対象・行為が真実だろうが偽物だろうが乗っかるしかないのかもしれない。 ただそれが偽物だった場合、真面目な人ほど心が死んでいくが…。 という、まさかの人生逆転の一手を手にした真面目な男の話。 しかしそこには魂はなく、表面的に評価され祭り上げられたことで罪悪感、空虚さが込み上げてくる。人生最大の嘘をついたことで犠牲にしたのは芸術への情熱だった。 ただただ日々を過ごすなかで、非常勤講師を務める大学の食堂の女性と妙な接点を持っていく。 「嘘は嫌い」「嘘はひとの心を殺すから」と語るこの女性との出会いが、果たして主人公の人生にどういった影響を与えるのか、今後が楽しみで仕方がない! 1話ラストでこれは!と思いましたが、恋愛に発展するのかどうかもまだいまの段階では分からないです。 が!楽しみにしてます!!

ルサンチマン

月子ちゃんはかわいい

ルサンチマン 花沢健吾
ゆゆゆ
ゆゆゆ

おもしろいから読んでみなよと言われたのが、2016年くらい。借りて読んだら、たしかにおもしろかった。設定に目新しさはないけれど。 そう、VRとかMRとか、身近にたくさん出始めた2016年頃だと、設定に目新しさはなかった。 しかし、他の方も書いているように、「ルサンチマン」は2004年にコミックス化した漫画。 2000年代半ばはまだ、VRゴーグルやヘッドギアなんて、普通に生活していたら出会わない。 発行年を知ったあと、「目新しさはない」だなんて大きな勘違いだったと知った。 それこそ映画「バーバレラ」をありきたりの設定詰め合わせのB級映画と思ってしまうくらい、わかっていなかった。 2004年当時に読んだ人たちは、もっと強い衝撃を受けたと思う。 いったいどうして、ヘッドギアをつけて部屋の中を動き回って遊べて、さらに専用グローブで仮想空間の女の子に触れるギャルゲーだなんて、あの頃描けたんだろう。 そして主人公は、団塊ジュニア世代の悲哀を感じるおじさん(でもまだ30歳になっていない)。 なんだか清潔感を感じない見た目。 人を馬鹿にしていても自分も同類。 生活が生活故に、漏れ出てしまう感情。 誰とでもないけど、既視感を覚えてしまうおじさん。 でも、このおじさん(今考えるとまだ若手)がかっこよく見えるときがあるのだから、花沢健吾先生の漫画は不思議だ。 「おもしろいよ」と勧めてもらったとおり、おもしろくて楽しめる漫画。 もし読まれる際は、これが2004年当時の漫画だと念頭に入れて読んでいただけたら、いろいろなシーンで、よりくすっとできると思う。

性別「モナリザ」の君へ。

男と、女と、オマァさん

性別「モナリザ」の君へ。 吉村旋
ゆゆゆ
ゆゆゆ

主人公のひなせは、性別が決まっていない「準モナリザ症候群」の高校3年生。 性別を持たない子どもは、通常12歳から14歳で肉体的に男か女に変わっていくはずなのに、変わらないままでいる。 変わらない理由はわからない。 気にならなくなっていた無性別の状態。 でも幼馴染二人の思いを受け、18度目の春は激動のものへと変わり始める――。 読みながら、こういう存在がオマァさんなのかと思った。 オマァさんというのは、昔々、予備校の先生が授業で「ここに、男と女とそれ以外の性別。仮にオマァさんというのがあるとしよう」と言っていたのをきっかけに覚えている単語だ。 なんのくだりで、そんな話をしたかはわからない。 謎の音を発していたので「オマァさん」は私が聞き取れた音で、先生が本当は何と言っていたのかもわからない。 とにかく、男と女以外の、肉体的に存在している性別。 半陰陽でもなく、精神的にでもなく、難しいことは置いておいて、第3の性別であるオマァさんがあるのが当たり前の世界を考えてみようと、先生はいった。 この漫画におけるオマァさんは、無性別という性別になるんだろう。 ふんふんと読み進めていくと、無性別のひなせという存在があるからこそ、男らしさや女らしさ、恋愛について考えさせられると思った。 ひなせは男らしくも見えるし、女らしくも見える。 本人はどちらでもないのに、周囲の反応で性別が見えるような気がしてくる。 今、4巻ほど読めたところなのだけど、私には「ひなせ」の性別が今後どうなるのか、想像がつかない。 ひなせの恋愛感情に対する葛藤、幼馴染ふたりの恋の行方。 残り6巻、どのような展開になるんだろう。

やがて明日に至る蝉

センシティブなシリアスからグルメコメディまで #1巻応援

やがて明日に至る蝉 ひの宙子
兎来栄寿
兎来栄寿

先日、『最果てのセレナード』の記事で触れたひの宙子さんの短編集です。2021年から2023年にかけて『フィール・ヤング』に掲載された5つの作品が収録されています。 ただ、それらの作品の温度差たるや最近の三寒四温な気候に匹敵するほどです。作者自身があとがきで言及しているように「振り幅すごい」。でも、そんなところもまた短編集の味わいの良さの内であろうと思います。 14歳になった主人公が「はる」に手紙を送るシーンから始まる表題作である「やがて明日に至る蝉」は、一見青春群像劇のように見えます。が、読み進めていくとただのそういったお話ではなく、あるテーマに取り組んだ作品であることが解ります。苦心しながら描き切ったであろうことが伝わってくる内容ですが、相変わらず構成力が高いなあと唸らずにはいられませんでした。 続く「折って切らない」も、『フィール・ヤング』らしさを感じる1篇です。マイノリティの生き難さ、とりわけ一番身近な存在である家族から理解を得られない辛さは特別大きいものですよね。最終ページのメールの文面にとても共感してしまいました。同じような共感をするであろう、かつての友人たちが元気に平穏に暮らせていることを祈ります。 「ホタテガイの女」と、「タラバガニの男」はひの宙子さんがギャグやグルメに振り切っても素晴らしい作家であることを示すお話です。1コマ目のセリフが "あなた七輪持ってるでしょう" から始まる男女の物語、端的に大好きです。ここで描かれる、最高のホタテガイやタラバガニのシズル感たるや、並のグルメ番組が裸足で逃げ出しそうなレベルです。色も、音も、匂いも、存在しないはずのモノクロの画面からすべてが伝わってきます。最高のホタテガイを最高に美味しく食べるために、ジョルノ・ジョバーナのように敬語でまくし立てるところの愛しさよ。読んだら貝焼き味噌という犯罪行為を犯したくなること請け合いです。 総じて、お薦めの短編集です。連載の『最果てのセレナード』や、4年前に発売された『グッド・バイ・プロミネンス』とあわせてぜひ。