シャンペン・シャワー

友情努力勝利プラスαすぎる昭和の名作

シャンペン・シャワー かわみなみ
野愛
野愛

少女漫画もスポーツ漫画も滅多に読まないけど、この2つが合わさって更にギャグ漫画要素も入るとこんなに面白いのかとびっくり! 少女漫画でサッカーを取り扱った作品て現在に至るまでどれくらいあるのでしょう。好きな男の子がサッカー部とかそういうのは多いかもしれないけど珍しいのでは? しかもわたしが生まれる前に連載されていた作品で、Jリーグ発足前らしいのでまたもやびっくり。ガチのサッカー好きだから描けた漫画なんだなあ…。 だからこそ、サッカー好き以外の人も楽しく読める漫画だと思います! ジャングルで育ったバナナばっかり食べてる野生児アドルと、彼を取り巻く変人だらけの仲間たちがてんやわんやサッカーしたりサッカー以外のことをしたりとにかく楽しい! 変人だらけだけど絵は昭和のキラキラこってり少女漫画なので、アクが強いのに美しくて絶妙なんですね。アドルめっちゃ可愛いし。 サッカー漫画とかアニメって試合の描写が超次元なものが多いけど、こちらの作品はだいぶまともと言うかしっかり描かれているのではないかなと思います。 後半になると結構超次元サッカーだし、男塾みたいな修行もしてるけども…それもまた一興。 友情努力勝利にプラスしてギャグと美が加わってるんだから最強です。2chコピペのトッティもこのチームなら常識人かもしれない…という世界観をぜひ味わって!!

窓辺の春

小さな物語で描くもの

窓辺の春 鯖ななこ
pennzou
pennzou

「窓辺の春」は月刊フラワーズ2019年4月号に掲載された鯖ななこ先生による短編読切作品だ。 鯖先生は現状自著の発行がなく、また作品も月刊ないしは増刊フラワーズにしか掲載されていない。そのため、鯖先生を存じない方が多いと判断し、まず鯖先生の経歴を記す。(間違いがあればご指摘頂けると嬉しいです!) 鯖ななこ先生は月刊フラワーズ2017年8月号にて発表された第90回フラワーズコミックオーディションにて金の花賞(賞の位としては第2位にあたるが、金の花賞以上が出ることはそうそうない)を受賞、受賞作「最適な異性となる要因の主観的考察」が増刊フラワーズの同月号に掲載されデビューした。以降より増刊フラワーズでは短編読切を、月刊フラワーズでは定期購読の販促4コマを執筆されていた。初の連載作品は月刊フラワーズ2018年5月号より開始された「きょうのヤギさん」で、現在も続いている。「きょうのヤギさん」は先述の販促4コマの設定を汲んだ4コマショートで、物語形式の作品が月刊フラワーズ本誌に掲載されたのは2018年10月号の短編読切「おとぎの杜」が初めて。以降、いくつかの短編読切と短期連載作品「Hide&Seek」が発表されている。 この経歴は、例えばデビュー当時の岩本ナオ先生も同様に販促4コマ(「町でうわさの天狗の子」の巻末に収録)や短編読切・短期連載(「スケルトン イン ザ クローゼット」に収録)を執筆しているように、フラワーズ生え抜き作家の定番ルートといえる。ただし、4コマショートとはいえかなり早い時期から連載を任されているパターンは珍しく、ここから編集部から特に期待されている(悪い言い方だと囲い込まれてる)のでは?と察することも出来る。 「窓辺の春」に話を戻す。本作は月刊フラワーズで発表された作品としては2作目となる。自分は前作の「おとぎの杜」で鯖先生の読切をはじめて読み、もしかしてこの人のマンガはすごいのでは……?と思いはじめ、本作でそれが間違いでなかったことを確信した。 鯖先生作品では「主人公が失ったものや隠れていたものに気がつき、見方を変える」ということが多く行われる。その変化がもたらす心地よさが魅力だと思う。本作ではその上で主人公の行動が他のキャラクターに伝播していく様子が描かれており、より風通しのよい作品になっている。 個人的にビビっときたのは、(ややネタバレになるが)おじさんが清潔な身なりで出掛けるシーンがあるのだが、なぜおじさんがその格好をしたのかを、後のたった1コマで表していた点だ。そのほんの小さな、しかしあざやかな手腕に惚れ惚れした。 本作は決してスケールの大きい物語ではない。小さな物語だ。しかしながら、岩本先生などフラワーズの先達が描いてきたように、小さな物語によって表せるものはあり、それがフラワーズらしさを形作る要素のひとつだと考えている。その潮流に鯖先生は乗っていると思う。 絵柄については丸みを帯びた親しみやすい画風であるが、大胆なトーンワークなどグラフィカルな要素も多く含まれており、それが鯖先生らしい画面にしている。 先述の通り、鯖先生単独名義の自著は未だに発行されていない状況である。しかし現在も断続的に短編は掲載されており、直近だと月刊フラワーズ2020年7月号に短編「おしゃべりな人魚」を掲載予定だ。これを除いても、単行本一冊分のストックは十分にある。 ただし、フラワーズ新人の初単行本は、めちゃくちゃハードルが高いのか、それはもう全然出ないのだ。最後に出たのは2017年12月の笠原千鶴先生「ボクんちの幽霊」が最後だったはずで、つまりここ2年以上出ていません。 それでも、初の自著が出版されるのを自分は心より待っています……

あなたと私の周波数

複雑な「人の心」にシンクロする百合 #1巻応援

あなたと私の周波数 くわばらたもつ
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ

ある時、目の前の人が隠し持つ「何か」に触れる。 思いがけない秘密に触れて、その『昏さ』に混乱し、時に何かに気付かされ、時に受け入れ……様々な感情の在り方が、この『あなたと私の周波数』という短編集には描かれている。 その感情はかなり複雑だ。喜びの中に苦しみがあったり、プライドと憧れが混乱していたり、割り切れないまま前に進んだり……それは複雑なのだが、同調できるリアルさがある。 一言では言い尽くせない感情の機微を描いた、読み応えのある物語達。人の心の複雑さを忘れない為に、一つひとつの物語に心をシンクロさせつつ、読んでいきたい。 ●あなたと私の周波数 貴方は私の想いを知らない……そう思っていたOL。ふと見つけたトランシーバーから……貴方の声? ●お前に聴かせたい歌がある バンドのメンバーに「私の死体を埋めるのを手伝って」と頼まれる。……生きてるよね? ●あんたが背中を見せたから 陸上部のエースは転校生に負けてしまう。エースのプライドに対して、転校生は……。 ●君のすべて 弁当屋のバイトJKと、彼女に懐くJC。自分の父親が亡くなった〈らしい〉と聞いたJKは、JCの父が亡くなったと聞く。 ●私たちの長すぎる夜 好きな人に振られた事を引き摺り、泣きながら酒を飲み、女子をナンパしようとする女。