少女マンガの感想・レビュー3719件<<9091929394>>男女の"受け攻め逆転"ラブコメ!? #1巻応援女の子が抱いちゃダメですか? ねじがなめたsogor25主人公の24歳のOL、梶谷美月は有名商社勤めのエリートサラリーマン篠宮孝之さんと付き合っている。清楚な雰囲気の美月と爽やかで優しい孝之は傍からみると理想的なカップルに見えるが、美月には孝之に対して隠していることがありました。それは"男の人から積極的なアプローチを受けることが苦手だ"ということ。 例えば彼氏に頭をポンポンされたりだとか肩をぐっと抱き寄せられたりとか、そういう行為に対してすごくむず痒い思いをしてしまって気持ちが引いてしまう。そしてそのせいで今までの彼氏とは長続きせずにすぐに振られてしまう。そのことずっと悩んでいた。 孝之のことは本当に素敵だと思っていて、できれば長く付き合っていきたいと思っていた美月だったが、彼に愛想を尽かされないために隠そうとしていた彼女のこの性質が、本人も想像だにしなかった、彼からのアプローチではなく逆に自分から迫っていってしまう、という形で発露する。しかもそれが孝之さんと初めて一夜を共にするというタイミングで…という物語。 この作品、単行本の帯にも「男女逆転セックスラブコメディー」と書いてあるんですが、実は男女の”受けと攻め” が逆転したカップルというのを描いた作品です。 こう聞くとかなり特殊な設定の作品のように見えるんですけども、実はマンガ好きの方々には意外と受け入れられやすい設定なんじゃないかなと思います。 というのも、例えばBLマンガや百合マンガだと同性どうしで"攻めと受け"が描かれていて、つまりそこには "女性の攻め" 男性の受け" が存在しているわけです。そしてそれを読者はごく自然に受け入れているはずです。 ということは、男女カップルの中でも “女性の攻め"×"男性の受け” という組み合わせがあっても不思議ではなく、そう考えれば今作の設定もすんなり受け入れられるのではないでしょうか。 この作品は、美月と孝之、それぞれが相手との恋愛に悩む様子を描くことで、"女性の攻め" 男性の受け" という関係性をすごく自然に描いている作品です。1巻の段階では2人が思い描いていたいわゆる “普通の恋愛” とのギャップに悩む姿も描かれるんですが、2人が悩みながら試行錯誤した結果どのような関係を育んでいくのか、今後の展開が非常に楽しみな作品です。 また、漫画を楽しむという上でも、そして現実世界に当てはめたとしても、新しい価値観を得られる作品になってると思うので、恋愛漫画をよく読まれるという方はもちろん、BL や百合漫画が好きだとという方にも是非読んでみて欲しい作品です。 1巻まで読了清く正しく美しく、それ以上に強くあれかげきしょうじょ!! 斉木久美子野愛現実もこうであってほしい。読み返すたびに強く思います。 ライバルを蹴落とすためにトゥシューズに画鋲を入れるような世界ではなく、仲間達と切磋琢磨して高め合う世界が真実であってほしい。 ちょっと意地悪だったり厳しい先輩は出てくるけれど、かげきしょうじょ!!の世界はみんなキラキラしていて清く正しく美しくあろうとする姿がとにかく眩しい。 蹴落とすとか出し抜くのではなく、誰よりも強く輝けばよいのだという「強者の理論」が気持ちいい。 歌もダンスもビジュアルも秀でた完璧な人間が、同じようにもしくはそれ以上に完璧な人間の中に放り込まれて、容姿や技術さらに心の中までも美しくなっていく という現象が本当に好きなので(宝塚はわからないけど老舗王道アイドルを見ていて思う)そこを描いているかげきしょうじょ!!は本当に素晴らしい!! これがショービジネスを志す若者の真実だと信じて、さらさと愛ちゃんがスターになる日を信じて追いかけたいと思います。男性恐怖症の漫画家の恋触れたい、できない【描き下ろしおまけ付き特装版】 ままかりさいろくタッチが少し古くて(褒めてる)すんなり読めて、主人公の浮き沈みもしっかり極端に描いてあって感情移入もしやすく面白かった。 ただ、実際に男性恐怖症というものがどういうものなのかは全然わからないのでそこはあんまりリアルには描かれていないと思ったほうが良い。 描き下ろしを読んですごく女性目線で描かれてたんだなぁと感じたけど、そこもまたよいのかも。レッツポジティブシンキング(ミサトさん風)デブとラブと過ちと!【描き下ろしおまけ付き特装版】 ままかりさいろくこのデブ、素晴らしくポジティブで気持ちがいい。 自由広場でスレッド立てて教えてもらった作品なんですが (スレッドはコレ https://manba.co.jp/free_spaces/25217?page=1 ) 気持ちの良い主人公っていう意味ではとても良い。少女漫画らしさも強いけど、それ以上に毒気とか闇とかが(ストーリー上は思い切りあるんだけど)あんまり色濃く見えなくて作品全体が明るいオフィス生活!みたいなとこもある。 企画楽しそうだなぁこの会社。 ギャル株、絶賛高騰中ギャルとぼっち 朝日夜六文銭最近、ギャル漫画多くなってきて、個人的にはホクホクしてます。 そんな中で本作は、クラスにいる陽キャの「ギャル」と陰キャの「ボッチ」の組み合わせ。クラス内で真逆に目立つ2人が、お互いのないものをみつめて友情を重ねていく話。 同性で、この組み合わせをテーマにした作品はあるようでなかったし、 展開的には予想通りなんだけど、それでも期待値を軽く超えてくる。 ギャルがもつ、コミュ力の高さと、周りの同調圧力にも屈しないブレなさが格好いいとさえ思う。 自分の思ったこと、感じたことは率直に言うし、また間違っていること、自分の考えと違うことかははっきりと「違う」と言える強さ。 こんなん誰だって友達になりたくなるなぁと思う。 メインのギャルとボッチ2人だけでなく、彼女らの周辺にいる人物にもフォーカスされる話があって、より2人の価値観が明確になって話の幅を広げてくれます。 元々低かった(?)ギャル株が、絶賛高騰中なのですが、 「こんな良いギャルがいるわけない」 というヘイトから、暴落しないこと祈ります。心優しい少年が生き抜く中華風ファンタジー後宮に星は宿る hagi 篠原悠希ぺそ※ネタバレを含むクチコミです。フェチ全開! 絵が素敵! 200m先の熱 桃森ミヨシ名無しタイトルなるほどなー! 設定がうまい 男子二人がすっごくカッコかわいくて、主人公も面白くて好感持ちました。 絵が上手い人のラブシーンはいいですね。 あとすごく描写がリアルリアル。街の感じとかタワマンの中とかモデルがありそう。 それぞれのお仕事についても面白くて興味があります。 スパルタ料理指南から恋は生まれるかトナリはなにを食う人ぞ ふじつか雪あうしぃ@カワイイマンガ晴れて都会の大学デビューの稲葉すずな。一人暮らしを始めるも、彼女は全く料理が出来ない!テキトーな生活で大変な事になりそうな所を、隣の部屋の瀬戸晴海に救われる。飯ウマ男子の瀬戸君に、稲葉さんは料理を教わり始めるが、彼はめっちゃスパルタで……。 ○○○○○ この作品、私はマンガParkのアプリで知りましたが、掲載誌は白泉社の『AneLaLa』。『LaLa』の増刊とのことで、大学生や社会人、そこを見据える高校生が対象なのかな? 家を出て一人暮らしって、切実ですよねぇ。高校出るまで料理なんてした事ないっていう、稲葉さんみたいな人いっぱいいると思う。そういう人にはこの作品、切実に刺さるはず。その上、私のようにいい歳まで自活を回避してきた人にも、恐々読ませてしまうものがある。 「この漫画読んで、わたし最近、料理始めました!」(あうしぃさん・40代男性) 瀬戸君はスパルタなのですが、真剣で生活を大切にする人。稲葉さんは彼を尊敬し、厳しい教えについて行くうち、少しずつ、料理は上達していきます。 稲葉さんも真剣で、今まで切り捨ててきた「生活」を、丁寧にしようという努力には好感が持てます。さらに結構食いしん坊の稲葉さん。意外と料理、上手くなるかも……?彼女の着実な成長に、ちょくちょく感動させられます。果たして瀬戸君が、彼女を認める時は来るのか? そして実は最初に「タイプじゃないから」と瀬戸君に言い渡されてしまった稲葉さん。このまま何もない、ただの隣人として……?さあ、どうでしょう?愛が重い青年と不死の少女の純愛ラブストーリー!愛しの故・シャーロット 奈川トモ天沢聖司※ネタバレを含むクチコミです。年上美術予備校生×真面目な男子高校生の歳の差ラブ!Wash me Hug me! ろびこ天沢聖司※ネタバレを含むクチコミです。 SFってことにすれば何やっても許されるいきなりSF 桐島いつみ野愛天才の所業。読んでると目が点になる。近藤くんのおめめ以上に点になっちゃう。 一応タイトルにあるようにSFちっくな不思議なお話ばかりなんですが、SF的な不思議よりも不条理でナンセンスで「何の話してんの…?」的な不思議のほうが強いです。 目が点しかない近藤くんの目にまつわる秘密を知っててんやわんやする話とか、給食早食いしたりテニス部の元エースを救う話とか、なんか真面目に説明したらわけわかんなくてニヤニヤしちゃう話ばかりです。 ストーリー性とかオチとか教訓はまったくなく、ひたすらバカバカしくて面白いです。 時代を感じる少女漫画の絵柄がバカバカしさを更に引き立てて最高です。 作者の都合だの漫画の展開だのを匂わせるメタ的ボケが多いのも味わい深いです。 やっぱり桐島いつみ先生は天才。さすがおもしろの悪魔に魂を売っただけある。 今は何をしておられるのでしょう…ちゃんとお風呂入ってるかな…不登校と強すぎる個性への応援歌 #完結応援キセキのローレライ 能登山けいこあうしぃ@カワイイマンガ自分の歌声で人を失神させた事を気に病み、不登校になった中学生女子。優しい転校生に歌を認められた事をきっかけに、彼女は少しずつ元気になる。しかし、彼女の歌声には秘密があり、転校生の男子にも秘密があった……。 ♫♫♫♫♫ 歌をきっかけに広がる世界、イケメン男子二人から迫られるドキドキ、歌声の秘密を巡る謎の勢力etc...少女漫画としての楽しさ一杯に進行しながらも、核となるテーマは重く、真剣に没入して読んでしまう。 メインテーマの一つに「不登校」がある。当事者の内面描写が切なくて、同じような苦しみを抱える人……精神的なしんどさを抱える人ほど、思い入れてしまうだろう。 精神的に苦しむ人が、優しい人達によってどの様に救われていくかを描き、寄り添い方について、我が事のように考えさせられる。(精神状態が身体症状に現れることなど、広く知られて欲しい) 「強すぎる個性」とどう折り合いをつけるか、というのも大きなテーマだ。主人公・キセは特殊な歌声で、人を感動させる一方で、思いがけず人を傷つけてしまう……その苦しみを理解する人は、実はあらゆる所にいるだろう。 そして裏テーマとして「学校教育の肯定」もあるだろうか。 作中でキセが歌う歌は、唱歌、クラシック、ポップスまで、学校の音楽や英語の授業に登場するものが多い。これらの曲を「ガッコーでやってた、ダサいやつ」と斜に構えて見る人も多いかもしれないが、本当は心の奥底で、胸を掴まれていないだろうか? 作中では、これらの曲をキセが楽しそうに・心を込めて歌い、多くの人が心動かされる。そんな様子を見ていると、これらの曲を、もう一度素直に聴いてみたくなる。 心の奥では肯定したい美しさ・楽しさを、中2の感性のまま拒絶する心。キセの歌う姿には、そんな私達の頑なさを解きほぐす力がある……そんな気がする。 大きな苦しみを抱える人から、小さな引っ掛かりを残したまま暮らす人まで、苦しみを知る人々の心を癒し、支えてくれる作品だ……そしてそれは結局、今を生きる全ての人への応援歌として、優しく響く。無理矢理結婚しているようで実は運命の出会い!マリーミー! 夕希実久むニートと被験的に社会人が結婚するという漫画! それならニート側に立候補したい気持ち満々ですが…。 なんとなく仕事で結婚しろと言われ義務感からする結婚。 でも互いに相手のことを知り、思いやり夫婦になっていく! もはや運命的なカップルと思いますね、これは。 どうせ美男美女! でも絵柄的にも話的にもほっこりするのでふたりを見守るジジババの気持ちになっている気がします…。 魂の逃げ場所はどこですか??光の箱 衿沢世衣子まさおわけわからん!キッツイわーが一話目を読んだ後の感想で、読み進めて行くと気がついたら光の箱の虜になってる。明るいはずなのに仄暗く、不思議な魅力に溢れた光の箱は何だか不思議な中毒性がある笑。 みんなそれぞれの「光の箱」を持って生きてるんだろなって。自分は何だろ?マン喫かな?笑安永知澄先生の漫画を初めて読みましたあけぼのソックス 安永知澄名無し短編集だから読みやすいだろうと思ってこちらを選んだのですが、最初に収録されてる長〜〜〜〜い脇毛が一本だけ生えてくる男の子の話でもう面食らいました。なんだこれは…!後半からは雑誌「本人」に掲載された自伝的な作品が収録されています。自分の身の回りで起きた出来事を描いているのでジャンル分けするとしたらエッセイ漫画になると思うのですが、なぜかストーリー漫画を読んでいるような気持ちになる話ばかりでした。とても面白いのですが初めましての作品としては適さないかもしれません。他の作品を読んでからの方がより楽しめそうだなと思いました。コンビニで救われる?!光の箱 衿沢世衣子starstarstarstarstar干し芋不思議な世界観にスッと連れて行ってもらえます。 暗闇のコンビニで人間模様、そして、闇・・・。 生きて行くことの楽しさを死んでしまってから感じるなんて悲しいし、虚しい。 でも、死んでしまうことによって冷静に客観視できるのかなぁ? 生と死の間に生きているってどんな気持ちなんだろう。 『最後の3秒』決断の時!! 人として大切なことを教えてくれる漫画まっすぐにいこう。 きらnyae※ネタバレを含むクチコミです。ヤマシタトモコの新境地さんかく窓の外側は夜 ヤマシタトモコさいろく陽気なようでシリアスなノリが面白い、ガチ除霊モノ×BLな傑作。 これは面白い。あとやっぱり和ホラー(呪いなどの理不尽さが特に)が苦手なのだけど思いっきりソレなのでしっかり怖い。 でもこのコンビは魅力的ですね。一癖も二癖もある家族と流れの家政婦さんの話さすらいの家政婦 竜! 布浦翼名無し※ネタバレを含むクチコミです。 日常に不思議が起こる短編集優しく雨ぞ降りしきる 北原文野名無し※ネタバレを含むクチコミです。食べ物じゃない君を愛してる恋するシロクマ ころも野愛壊れるほど愛しても3分の1も伝わらないシロクマの愛に切なくなったり、優しくされて愛されてもなお恐怖が拭えないアザラシにもどかしくなったり。 かわいいかわいい絵柄でほのぼの癒し系コメディの形をしているけれど、なかなかどうして壮絶なラブストーリーです。 食い物であるはずのアザラシに恋したシロクマ。天敵であるはずのシロクマから熱烈な求愛を受けるアザラシ。どちらも必死なんです。だからこそ笑えるし、だからこそ応援したくなるんです。 でも、どちらか一方に歩み寄れというのも無理な話なのでやっぱり切なくてもどかしくなります。 人間同士のラブコメディだったら、いやいやいい加減信じてやれよってアザラシに言いたくなるし、シロクマ怖がられてるんだよちょっと考えろよって言いたくなっちゃう気がします。動物だからこそどちらの気持ちもわかって狂おしくなっちゃう!! 人間同士なら食うか食われるかなんてわかりやすい生と死はなかなか起こらないけれど、信じる裏切られるの怖さは常に付き纏います。 信じてもらうための手っ取り早い魔法なんて結局なくて、怖がられてもシロクマみたいに「君が好きだ、大切だ」と言葉を尽くすのが一番の近道なのかもしれません。 同じ動物でも、同じ人間でも、わたしとあなたは違うから。信じてもらうことを諦めちゃいけないし、受け入れてもらえるのが当たり前だと思っちゃいけない。 シロクマみたいに真摯に愛を伝えないといけないですね。「つまみがなければケーキを食べればいいじゃない」から始まる転生劇悪役令嬢に転生したはずがマリー・アントワネットでした 小出よしと名無し※ネタバレを含むクチコミです。 ファンタジーの名手が描く新・平家物語神域のシャラソウジュ~少年平家物語~【電子特別版】 奈々巻かなこ兎来栄寿『イーフィの植物図鑑』の奈々巻かなこさんの最新作。平安時代末期を舞台に、ファンタジー要素を盛り込んで描かれる作品です。 NHK大河ドラマの『平清盛』では当時女子高生だった二階堂ふみさんが演じた平徳子、そして本作のオリジナル要素である平家に仕える神人(シンジン)の千珠丸を主人公に据えて、物語は展開されていきます。 神人とは人間には使えない神の如き力を使える者のことで、千珠丸は厳島大神から授かった平家の守り神とされていますが、読み進めると解ってくる神人の秘密と千珠丸の真実が見所の一つとなっています。 登場キャラクターとしては徳子の父親である清盛はもちろんですが、狂気を感じさせる後白河法皇がとても印象的です。史実としてもさまざまな逸話のある人物なので、今後も色々な意味で活躍しそうです。 一方で、徳子は真っ当な価値観を持って乱世を生きています。自分を守ってくれた千珠丸のことを私も守ってあげたい、と願う彼女はただ守られているだけのヒロインではありません。平家を背負って生きていくための強さと覚悟を幼い頃から感じさせてくれます。 なお私は魂の故郷が吉野山であることもあり、平家物語でも中心人物となる義経の描かれ方が気になるところです。徳子と義経が壇ノ浦の戦いの後に通じていたという俗説もあるらしく、この物語においては千珠丸との関係性とも合わせて動向が注目されます。 奈々巻さんは地元が屋島の古戦場があるところだそうで、思い入れたっぷりに描かれていることが見て取れます。現代でも身近に歴史の痕跡が多々残されており過去を想わせられるのが日本の面白いところですね。 歴史に興味がなくても楽しめると思いますが、改めて『平家物語』や歴史の教科書・参考書などと併読することでより楽しみを深められそうです。マンガでは『遮那王 義経』辺りと一緒に読むと面白いかもしれません。 ボニータ10月号の紙版と併せて買うことで描き下ろしの「平家物語ゆかりの地イラストマップ」をもらえる応募者全員サービスも行われていますので、普段は電子書籍派という方もお見逃しなく。バカさと、クサさと、ロマンチスムとが、てんでバラバラの全方向から襲いかかる!初恋甲子園 やまさき十三 あだち充影絵が趣味いやはや、これまたとんでもない漫画に出会ってしまいました。その名も『初恋甲子園』。あだち充と、原作者のやまさき十三の最初期の漫画になります。もう、この漫画の良さをいったいどう語ればいいのか、困り果ててしまうというのが正直なところなんですけど、とにかく訳が分からなくて、とにかくもの凄いんです。 甲子園に例えるならば、まず野球があって、ブラバンの音楽があって、チアリーダーの踊りがあって、応援団の声援があって、甲子園のサイレンがあって等、とにかく色々な要素がごちゃまぜになって甲子園というひとつの魅力を形作っていますよね。一筋縄ではいかないんです。あの混沌としたカオスな空間に誰もが魅かれてやまないわけです。 そして、まあ、この『初恋甲子園』もひと言でいえば、カオス。なんですね。エドガー・G・ウルマーというアメリカの映画監督を黒沢清が評した言葉に「映像と音と俳優と物語とが、てんでバラバラに全方向から襲いかかる。ウルマーの想念が猛獣のようにのし歩く。実はこれが映画本来の姿だった」というのがあるんですけど、『初恋甲子園』を読んですぐにこの言葉を思い出しました。映画というのは元々が大人数のスタッフによる分業制ですから、てんでバラバラなのはある意味当然なんですよね。それにつき、漫画はどちらかといえば一人で描かれがちなんですけど、漫画はそもそも映画を、当時は活動写真と呼ばれていたものを発端にしている。手塚治虫はやはり無類の映画好きでしたし、特にチャップリンの映画から漫画の描き方を学んだようなことを言っています。なので、漫画のなかにも映画の呼吸というやつが息づいていても何ら不思議ではないんですね。 『初恋甲子園』は、漫画にしてはめずらしく作画と原作の分業制をとっています。で、このやまさき十三という原作者は、もとは映画監督志望の若者で、映画会社で10年近く頑張っていたんですけど、色々あって監督への道を断念している。それで、まあ、脚本とかも書いていたし、映画の原作が書けるのなら、漫画の原作も書けるだろうということで漫画界に流れてくるわけです。さすが10年も映画会社で叩き上げただけあって、やはり映画の呼吸というやつが染み付いているんだと思います。彼はのちに100巻を超える大連載になる『釣りバカ日誌』で原作者として大御所になりますけど、『釣りバカ日誌』といえば、やはり、『男はつらいよ』と並んで国民的な映画シリーズにもなっているわけですから、映画の代名詞でもあるわけです。ある意味で、映画から離れて、映画に返り咲いた人といえるのかもしれません。 そんな彼の原作をもとにあだち充が描く。あだち充は、この頃から完全にあだち充として完成しています。冒頭の描写に、主人公の女子マネが「ブォーッ」という擬音とともにバスに乗っていて、その横の歩道をチームのバッテリーが走って練習に向かっている、女子マネは窓から二人に手を振っているんです。はい、もうたったこれだけのさわやかな朝の描写で、何か不吉なことが起こってしまう、くわばら、くわばら、と思わずにはいられないものが、やはり、あだち充にはある。さすがにピッチャーが死ぬことはありませんけど、やっぱり不吉なことがあれよ、あれよと起こってしまう。 ネタバレになってしまうので多くは語りませんけども、まずこういった、いかにもあだち充らしいドラマの筋立てがあるわけです。だけど、あだち充のキャラたちは基本的にはめげないというか、明るいというか、脱力しているというか、飄々としていますよね。こういった土台の上に、突如として異質なものが紛れ込んでくる。サンデーを主な活躍の場にしたあだち充の売りって淡白な雰囲気だと思うんですけど、そこに突如として過剰にバカげた演出や、クサすぎる演出や、叙情たっぷりの演出が矢継ぎ早に挿入されるんです。ときには、うわッと目を背けたくなったり、大笑いしてしまうんですけど、とにかく異様なパワーに圧倒されて、最終的には何かヤバイ漫画を読んでしまった、と、なってしまうからこの漫画は怖ろしいんです。必読!!! <<9091929394>>
主人公の24歳のOL、梶谷美月は有名商社勤めのエリートサラリーマン篠宮孝之さんと付き合っている。清楚な雰囲気の美月と爽やかで優しい孝之は傍からみると理想的なカップルに見えるが、美月には孝之に対して隠していることがありました。それは"男の人から積極的なアプローチを受けることが苦手だ"ということ。 例えば彼氏に頭をポンポンされたりだとか肩をぐっと抱き寄せられたりとか、そういう行為に対してすごくむず痒い思いをしてしまって気持ちが引いてしまう。そしてそのせいで今までの彼氏とは長続きせずにすぐに振られてしまう。そのことずっと悩んでいた。 孝之のことは本当に素敵だと思っていて、できれば長く付き合っていきたいと思っていた美月だったが、彼に愛想を尽かされないために隠そうとしていた彼女のこの性質が、本人も想像だにしなかった、彼からのアプローチではなく逆に自分から迫っていってしまう、という形で発露する。しかもそれが孝之さんと初めて一夜を共にするというタイミングで…という物語。 この作品、単行本の帯にも「男女逆転セックスラブコメディー」と書いてあるんですが、実は男女の”受けと攻め” が逆転したカップルというのを描いた作品です。 こう聞くとかなり特殊な設定の作品のように見えるんですけども、実はマンガ好きの方々には意外と受け入れられやすい設定なんじゃないかなと思います。 というのも、例えばBLマンガや百合マンガだと同性どうしで"攻めと受け"が描かれていて、つまりそこには "女性の攻め" 男性の受け" が存在しているわけです。そしてそれを読者はごく自然に受け入れているはずです。 ということは、男女カップルの中でも “女性の攻め"×"男性の受け” という組み合わせがあっても不思議ではなく、そう考えれば今作の設定もすんなり受け入れられるのではないでしょうか。 この作品は、美月と孝之、それぞれが相手との恋愛に悩む様子を描くことで、"女性の攻め" 男性の受け" という関係性をすごく自然に描いている作品です。1巻の段階では2人が思い描いていたいわゆる “普通の恋愛” とのギャップに悩む姿も描かれるんですが、2人が悩みながら試行錯誤した結果どのような関係を育んでいくのか、今後の展開が非常に楽しみな作品です。 また、漫画を楽しむという上でも、そして現実世界に当てはめたとしても、新しい価値観を得られる作品になってると思うので、恋愛漫画をよく読まれるという方はもちろん、BL や百合漫画が好きだとという方にも是非読んでみて欲しい作品です。 1巻まで読了