死神坊ちゃんと黒メイド

2018年最も幸せになってほしいカップル

死神坊ちゃんと黒メイド 井上小春 イノウエ
天沢聖司
天沢聖司

 ヒロイン以上に主人公がかわいくて、主人公以上にヒロインが攻め攻めでたまらない。主人公の坊ちゃんは、生き物に触れると命を奪ってしまうという魔女の呪いをかけられ、家族と離れ1人で暮らしている。  坊ちゃんは気が弱いくせに、大好きなアリスに対してサラッと自分の気持ちを伝えることのできるジェントルなのが最高に素敵。  一方でアリスはおっぱいが大きくてかわいいメイドさんで、決して自分に触れることの出来ない坊ちゃんに対してかなり大胆なセクハラをしかける小悪魔系女子で、そのセクシーな振る舞いの陰に坊ちゃんへの純粋な恋心と敬意があるのがいじらしい…!  2人の心の距離が近づけば近づくほど、2人は手を繋ぐことすらできない事実が読んでいてひたすら辛い。まるでシザーハンズのよう…。けどその切なさを2人の周りにいる愉快な同僚と妹が吹き飛ばしてくれるので安心して読んでください!    画風については、頻繁に出てくる坊ちゃんのデフォルメされた顔がバチクソかわいくて、アリスはお色気たっぷりなのに決して下品ではなく、アリスの着ているゴシックなドレスも毎回かわいくて、太めのアウトラインと少年漫画らしいコマ割りが大変読みやすい。  いずれ本誌に移籍しても全く不思議じゃないし、むしろなんで移籍しないんだというレベルのウェブ連載作品。ぜひコミックを買ってキュンキュンしてください…! (画像は1巻2話より。絶対に触ってはいけない美人メイド24時。心臓ちぎれそうなぼっちゃんかわいい)

奴隷姫

読んで字のごとしの背徳的バトルファンタジー

奴隷姫 やつき
mampuku
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 エロかわな表紙ですが存外読み応えがあって好きな作品です。  ヒロインの姫さまがとにかく途方もなく高潔で慈愛と正義に満ちていて、そんな彼女と主人公の絆の物語を、あろうことか暴力的エロスの皮で包み込んでしまったという非常に挑戦的な作品です。読んだ瞬間ノーガードの頭を殴られ胸を撃たれましたね。半端な覚悟じゃ描けないストーリーなんじゃないかなと思いました。  私がこれを読んで好きだなぁ凄いなあと思った点は、本当の意味での「プライド」の高さというの描いているところですね。民を守り、友を救う。それが彼女のプライドであり、そのために鞭打たれ踏みつけられ傷つくことを受け入れるのに微塵の躊躇もありません。そんな人間離れした精神を、100%理解し寄り添うことのできる主人公もまた常軌を逸した存在でしょう。彼は読者一般人が持つモラルや常識、正義感と呼ばれる嫌悪感など、そういった概念に一切囚われることなく、姫さまだけを信じ抜くことができるのです。信頼関係や以心伝心、パートナーシップといった類のものの究極系とも言えそうです。  漫画やラノベに限らず映画なんかでも、「舞台は中世欧州風なのに社会通念やモラルなどは現代のそれなのが違和感」ってツッコミはよく目にしますが、この「奴隷姫」は狙ってか意図せずか結果的に読者の現代っぽい感覚を上手にくすぐってくるなって印象ですね

俺様ソルシエール

グリッドマンにも負けていない「脚フェチ」コミック

俺様ソルシエール 赤尾でこ ウラミユキ
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表紙から内容が予想しにくいですが、美女装男子と少女たちによる異能力バトルです。文句なしで絵が上手く、いい意味でマガジンっぽい。言い換えれば「メジャー感」があります。「メイクをすることで魔女としての能力が発動する」設定はかなり大雑把というか活かしきれるか最初不安でしたが杞憂でした。「涙で魔法が解ける」というのもクライマックスでしっかり回収されていました。 味方の最強格である生徒会長の和音さんが何かにつけピンチに陥ってるところがガールズバトルファンとしては最高に推しポイントですね。この作者、わかってやがる!!って感じです。(最後のほうはさすがに気の毒でしたけど…… 巨大な敵の全貌が垣間見えたところで駆け足のビターエンド、という典型的な打ち切り的終わり方をしてしまいましたが、色々伏線を回収してキャラ立ちも大切にしてて誠実な全2巻だったなと感じました。ただ全7話はあまりにも短い…!終盤の展開は「悪食王」に似ています、巻数も同じ2冊。ただ俺様ソルシエールのほうが格段にストーリーの作り込みが良く、続きを読みたくさせるものでした。

月華美刃

ジャンプ式 平安風コズミックバトルファンタジー

月華美刃 遠藤達哉
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 竹取物語をモチーフとし平安時代の日本のような舞台設定のファンタジーでありながら地球~月間を移動するハイテクノロジーを持つ近未来SFでもある。  月の世界の皇女であった主人公・カグヤは敵対勢力によるクーデターに巻き込まれ、皇女の証である宝剣を携え地球へと落ち延びる。その星は「穢星」と呼ばれ、月の重罪人が流される"流刑地"だった。というあらすじ。  精神的にも未熟だった主人公が幾たびの試練を乗り越えていくうちに使命に目覚めめきめきと頭角を現していくという、少年漫画としては割と王道な主人公像じゃないでしょうか(マキバオー、ナルト、東卍のタケミチなど)絵に関してはすごくジャンプの血が濃いなと感じました。デフォルメの仕方がバクマンによく似てます。  画力、世界観、キャラクター、どれを取ってもハイレベルですが、元ネタが中学古文で習う竹取物語だったり地球の重力に苦しんだりするのに一切の注釈や解説がないハイコンテクストぶり、衣服や装飾品の細やかな描き込みも含めて、週刊でなくウェブでもなくSQという雑誌に合っていたなと思います。「いとウザし」「マジあはれ」などのフレーズは中学生が喜びそうです。  絵やセンスがすごく好きな作家さんなので長編の新作が読みたいと思いながら6年が経ってしまった…