アイドルのセンターを務めていた女の子がある事件をきっかけにアイドルはおろか女の子であることをやめてしまい、男子の制服で学校に通い始める…現実に起きた事件も想起させるようなインパクトのある導入から始まる今作ですが、それ以上に話題になったのは、この作品が小中学生の女子を読者層として持つ『りぼん』で連載開始されたこと、およびその『りぼん』の編集長が連載開始にあたり異例の声明文を出したことだったように思います。 この物語はそれぞれが遭遇した事件を通して自分が「持って生まれたもの」「持たなかったもの」を自覚してしまった少年少女が、そのなかでどう生きて行くかをもがきながら探していく物語だと私は受け取りました。 もちろんそれはジェンダー的なものもあるし、もっと普遍的な自身のアイデンティティに関わることも含まれます。それら多くのものを内包したうえで物語が編み出されていることに素直に感動するとともに、私自身も自分が持って生まれたもの、自分に配られたカードで人生を生きていかなければならないということを意識せずにはいられませんでした。もしかしたら、生徒同士の自意識にグラデーションのある高校の一教室を舞台に描かれていることが、逆に主人公たちの自意識というものを強く感じさせる構造となっているのかもしれません。 ここからは個人的な考えになってしまいますが、2巻までで唯一作品に入り込めなかった場面がありました。それは2巻中盤、仁那が長栖にアイドルだった時の気持ちを聞かれた場面。そこで吐露される感情は私の中にはないもので、この場面については共感することができませんでした。 恐らくこれは、私自身が幼少期も含めてアイドルというものに傾倒した経験がなくて、アイドルに元気を貰うということに対して実感をもって理解できないためではないかと推測しています。そして、純粋にアイドルという存在に憧れることができる10代までの女性が、同じようにアイドルという存在にレゾンデートルを重ねる仁那の様子から最も多くのものを感じ取れるように思うし、そういう点がこの作品を「りぼん」で連載する意味なのではないか思い至りました。 2巻まで読了
sogor25
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