佐々木つぐみの想い人が写真部OBの添田要であることを知り、失恋を経験した河島まもる。翌日、偶然にも要と話をしたまもるは、つぐみも自分と同じように失恋していたことを知る。自分も失恋したからこそわかる、つぐみの抱える苦しい気持ち。まもるは、つぐみのために意味のない片思いなんてないことを証明しようと決めるのだった。そんな折に勘違いから、笑みを浮かべる“なかみ先輩”の写真が賞に応募されてしまう。そして、その写真が金賞を獲った授賞式の壇上で、まもるはつぐみに勢いのまま好きだと告白することに――物語はふりだしに戻り、そして恋は動き出す。たなかのかが描く、恋する者たちのポートレート完結巻!
カメラ漫画で、絞りを開放にした柔らかい光の描写が出てくると、もうそれだけでその作品は「勝ち」という気がします(例えば『ルミナス=ブルー』『彼女とカメラと彼女の季節』など)。そういう点ではこの『恋の撮り方』も、サイコーに「勝ち」の部類です。 写真部に入った男子は、笑わない三年の先輩に恋をする。そんな彼の秘密は、彼のカメラの中には先輩がいて、ファインダーの彼女はいつも笑顔という事。 明るい笑顔の先輩が見たくて、撮影に熱が入る男子。しかしその像は、現実の先輩ではない。更に同じ先輩に恋する二年の女子、そして先輩自身の、それぞれの不器用な恋心が綴られます。各人の撮影スタイルが、それぞれの恋の形と対応している、というのが興味深いです。そういう意味では、写真に心は映るのですね。 気難しい先輩に対して、屈託のないカメラの中の先輩は愛らしいけれども、彼女も一筋縄でいかない様子。虚実二人の先輩の複雑さを解いて、笑顔のポートレートを撮る為に奮闘する半年の物語は〈非現実的〉撮影ドキュメンタリー、という感じでしょうか。