吸血鬼ドラキュラのモデルであり、残虐の王として知られるワラキア公・ヴラド三世。その一方で、当時最強のオスマン帝国から母国を守り抜いた英雄であり、革新的な政治力でワラキアの国力を高めた知略の王でもあった。本書では、史実とフィクションをまじえ、ヴラド三世の生涯を描き出す。【3巻のあらすじ】ワラキア国内の有力貴族を大粛清したヴラド。残るは最大の敵・アルブのみ。中央集権化を狙うヴラドにとって大きな意味をもつ戦いが始まる。そしてついに、当時の世界最強・オスマン帝国がヨーロッパ制覇に動き出す。率いるはメフメト二世。難攻不落のコンスタンティノープルを陥落させ、“征服者”と呼ばれた男が、ヴラドの前に立ちはだかる――!
ワラキアの串刺し公といえば、様々な創作物に名を残す歴史上の有名人です。とはいえ、彼がどのような行為の結果、歴史に名を残したのか知っている人間は少ないのではないでしょうか(なんて書いている自分もその一人ですが) オスマンがヨーロッパ各国の脅威である時代、ワラキアという東欧の小国を護ろうと奮闘している君主。作中でヴラド三世は権力を確立するため、政敵に対して容赦しません。それは血生臭い粛清も辞さない「強い」為政者の姿ともなりますが、外患に対峙するために必要なことでもありました。 歴史上、虐殺を行った為政者の名前は悪名として残ります。時代や地域を越えて「ドラキュラ」のモデルという不名誉なイメージばかり語られるヴラド。この作品でどのように描かれるのか、続刊を楽しみにしています(異名通りの残虐行為の描写もあるので、グロが苦手な方はお気をつけ下さい)。