あらすじ水木二等兵は、ラバウルからズンケンへ。そこはパパイヤがたくさんあって天国みたいなところらしい。しかし、そこは天国ではなく「天国に行ける場所」だった。敵の弾だけでなく、マラリアとか空腹とかワニとか超重労働とか色々と「天国へのいざない」にみちみちていた。バイエンでは、あっという間に部隊が全滅、一人生き残った水木二等兵の生か死かのドラマの幕が切って落とされた!
漫画界の巨匠・水木しげるの自伝漫画。大阪で生まれ鳥取・境港でのんのんばあと過ごした少年時代、南方の第一線に出兵した戦時中、復員後の漫画家生活と大きく3つの構成で綴られる、約80年に亘る波乱万丈の歴史です。説教くさく押しつけがましいところもなく、しかしながら要所では凄まじい妖怪画や泣かせるエピソード、艶笑譚もあって、淡々と読めるのに妙にお腹いっぱいになる。著者独特の引き気味の目線や、リアルかつ幻想的な背景が、ザ・日本(人)という感じで印象に残ります。またこの作品を読むといつも、悲惨な話もありますけど、ちょっとうらやましい人生だよなあ、自分は年とったらこんなに話すことあるかなあ、なんてしみじみ思ってしまいますね。実は意外に漫画家の自伝漫画は少なくて、あっても漫画ではなかったり、立身出世時代だけだったり。なのでこれはありそうでないジャンルの漫画で、著者はそれが作品にできる唯一無二の存在。まさに人生が漫画みたいなものなんですから、水木サンにはいつまでもオモチロク人生を過ごしてもらいたいものです。