あらすじ水木先生は「墓場の鬼太郎」や「河童の三平」を描くが、紙芝居業界全体がジリ貧だった。このままだと餓死は時間の問題だった。筆五本と染料を持って東京行の汽車に乗り、貸本漫画家へ転向しても、食うや食わずの生活が続く。しかし、ある時「金霊」が空を飛んでいるのを見た!それからというもの千客万来、「鬼太郎」が大ヒットし、寝る時間も無く、多忙も苦しいものだとかみしめる。
漫画界の巨匠・水木しげるの自伝漫画。大阪で生まれ鳥取・境港でのんのんばあと過ごした少年時代、南方の第一線に出兵した戦時中、復員後の漫画家生活と大きく3つの構成で綴られる、約80年に亘る波乱万丈の歴史です。説教くさく押しつけがましいところもなく、しかしながら要所では凄まじい妖怪画や泣かせるエピソード、艶笑譚もあって、淡々と読めるのに妙にお腹いっぱいになる。著者独特の引き気味の目線や、リアルかつ幻想的な背景が、ザ・日本(人)という感じで印象に残ります。またこの作品を読むといつも、悲惨な話もありますけど、ちょっとうらやましい人生だよなあ、自分は年とったらこんなに話すことあるかなあ、なんてしみじみ思ってしまいますね。実は意外に漫画家の自伝漫画は少なくて、あっても漫画ではなかったり、立身出世時代だけだったり。なのでこれはありそうでないジャンルの漫画で、著者はそれが作品にできる唯一無二の存在。まさに人生が漫画みたいなものなんですから、水木サンにはいつまでもオモチロク人生を過ごしてもらいたいものです。