あらすじりょうは最愛の人・小雪を交通事故で失う。さらに、脊髄に残された戦場での破片のためにつねに生命の危険にさらされていることを知り、絶望のどん底に落とされる。しかし、仲間の励ましのもと、宿敵・仁との対決の日まで戦い続けることを決意する。
ドラマ性重視のスポーツ漫画って、クライマックスに向けた流れの作り方が大変だよな、と思います。現実を超えないとどこかで見た話になるし、かといってひねりすぎると現実感がぶっとんで興ざめしてしまうし。少し前ならドーハの悲劇、長野五輪ジャンプ団体。最近だと木村コーチ追悼試合で出た、同級生・谷の逆転満塁弾。これらまさに筋書きのないドラマに対して、生半可な脚色では太刀打ちできないよな、と。で、この作品は何をやったかというと、徹底的に焦らしたわけです。最初はフツーのボクシング漫画進行と思っていたら、主人公とライバルの対決が直前でお流れ。そこからが波乱の展開で地下に潜ったり、戦場に赴いたりとなかなか”宿命の対決”にたどり着かない。他作でもそうですが作者はこの寸止めの手法がうまくて、まんまと乗せられてしまう。焦らされた分の数々のドラマが、決着に向かって終盤にどんどん噛み合っていくのが心地いい。ずいぶん回り道をしたけど、ラストはやはりスポーツ漫画だなとうなずける、カタルシスがたっぷりです。