「今もこんな漫画があることに幸福を覚える」阿部共実、称賛。平方イコルスンが初めて長編で紡ぎだした世界。そこに生み落とされた青い瑞々しさの正体は、短編で発揮されていた言葉、空気、描写などの鋭い表現能力の更にその奥にある平方イコルスンという人間そのものが濃く現れたのではないかと勝手に感じ、この愛おしい世界に感動している。地方の田舎の高校生たちの日常。転校生・葉野さよは少し歪な世界と少し歪な同級生たちに囲まれ、この小さな世界に少し近づいては離れ、少し離れては近づくを繰り返し淡々と日々を重ねていく。こうして静かに描かれるこの生活には、誰もが送ったあの頃の青春が確かにひそんでいる。知りたい良くしたい、でも聞けない話せない上手くいかない、派手ではないドラマティックではない、誰も知らない小さな痛みと小さな喜びの日々の、自分たちだけの青春が。スペシャルとは何か。そう問いかけられる日常がここにある。―――阿部共実(『潮が舞い子が舞い』『月曜日の友達』) コミュニケーションの連続が《世界》になる。そんな当たり前なことに気づかされるスクールライフ・コメディ。
田舎町の学校でちょっと変わったクラスメイトと送る奇妙な日常漫画、だと思っていたけどもしかしたら違うのかもしれない。 サスペンス、恋愛、友情、触れ合えない悲しみ、家族や恋人という存在の曖昧さ、などなど。 シュールだけどほのぼのした日常にふふんと微笑みながら読んでいたのに、少しずつ不穏さを覗かせているような。 ヘルメットを被った怪力少女、教室に様々なものを所有する謎の金持ち、つねる人、執着する人。奇妙なクラスメイトに囲まれ、思考を巡らしながら溶け込んでいく転入生。 おかしくても続いていけば日常になるから、やっぱりこの作品は日常漫画なのかもしれない。