あらすじ古屋兎丸が描く現代の黙示録、堂々完結!!結婚して幸せの絶頂だった葉蔵。しかし思わぬ事件をきっかけに彼の運命は暗黒の坂を転がり落ちるのだった―――。現代の大庭葉蔵が行き着く先は天国か、はたまた想像を絶する地獄なのか……。鬼才・古屋兎丸が太宰治へのリスペクトと綿密な取材をふまえ描いた新人間失格。迫真の心情描写と斬新な幻覚表現は必見です!
太宰治の「人間失格」が人生のバイブルと言って憚らない私ですが、行間やニュアンスなど、人によってとらえ方が異なると思うので、漫画化(ないしは映像化)は非常に難しいと思っていましたが、本作は素直にすごいと思える内容でした。 最初、作者は、葉蔵を自分に重ねているのかな?と思いましたが、そうでもないっぽいですね。 表現の仕方だけでなく、ネットで小説を発見し読み進めるという導入が、単純に原作をなぞるだけではない手法に、小説で夢中になったあの頃と同様ぐいぐい引き込まれてしまいました。(原作も手記からはじまるので、現代版のオマージュだと思いますが) 人間失格がもつ、そのもののパワーを摩擦なく表現しきっている感じです。 自分は、本作で描かれる人間の醜さ・弱さもですが、何より主人公の惨めさが際立って記憶にあるので、そこをこれでもかと描かれる感じがよかったです。 良かったというか、胸にクる感じが、懐かしかったです。 コミカライズは多々あれど、原作好きにもおすすめしたい一作です。