私的漫画世界|垣野内成美|午後3時の魔法
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垣野内さんの絵は軟らかい線を駆使した独特のものであり,けっこう好みなんです。しかし,マンガとして出版されているものは「吸血姫美夕」,「チャイナ・ブルーJASMINE」,「薬師寺涼子の怪奇事件簿」など超常の世界を扱った怪奇ものが多いので敬遠してきました。
これだけ華麗な絵が描けるのですら日常の世界を題材にしてもよい作品ができるのにと思っていましたら「午後三時の魔法」に巡り合えました。この作品は1993-1999年にかけて「月刊アフタヌーン」という男性誌で不定期連載されました。
垣野内さんの作品が男性誌に登場することはちょっとした驚きであり,しかもその内容が主人公の「ナイチンゲール(勝手にこう呼ばせていただきます)」が悩みや苦しみを抱えていたり,生活に疲れている人々を午後三時のお茶会に誘って癒すという物語なのでもう一度驚きました。
垣野内さんはこんな物語も作ることができたんですね。もちろん,「ナイチンゲール」の癒しの影には彼女自身の抱える悲しみや苦しみがあるのですが,そこは作品を読んで確かめてください。垣野内さんの軟らかい描画と癒しの物語がちょうどマッチしており,個人的には彼女の最高傑作としたいと考えています。
最近の作品は「薬師寺涼子の怪奇事件簿」がメインになっており,もとの怪奇物の世界に戻ってしまっていますが,「午後三時の魔法」のように日常の世界の作品を描いてくれないかなあと考えています。