あらすじ26歳の派遣社員・片浦渚にとって、“コスプレ”は人生のすべて。10年間、一緒にコスプレをしてきた友人・公子からの、突然の引退宣言。「公子はなぜ、コスプレをやめてしまうのか」戸惑う渚は、職場でミスをしてしまう。そんな彼女に、“思わぬ言葉”を投げかけた上司の長谷が、こう呟く。「後日ゆっくり、2人で話をしましょう」窮地に陥る渚――。[収録内容]「COSPLAY MODE」監修の用語解説/描き下ろしマンガ
自分は確実におたくなんですが、コスプレという分野に興味はそれほどなくて、話題になっていたから読んだのですが、本当に色々考えさせられ、心に深く突き刺さりました。 もしこの作品を読んで何も感じない人は、幸運なのか無趣味なのか想像力がないのか、そのどれかだと思います。 コスプレイヤーがいつまでコスプレを続けるのか。その問いかけを「容姿」だけに限定して読んでいるならば、無縁に考えるかもしれません。しかし、この作品が問いかけ、そして考えさせるのは、誰にとっても「年齢」というのは無縁ではいられないからです。 例えば、身体を動かす趣味、ランニングやスキー、草野球やサッカーやフットサルを一番の趣味にしている人は、それを加齢によって諦める未来を想像してしまうと思います。あるいは、スタンディングのライブに行けなくなる年齢。老眼で文字か読めなくなる未来。この作品の表象はコスプレですが、読者は恐らく、自分自身にとって大事な趣味というものを諦める瞬間を、嫌でも考えてしまうのではないかと思います。 勿論、結婚や出産で趣味と離れてしまうことはあると思います(作中でも語られています)。しかし、多分我々の生きている「今」は、それらの人生のイベントの後でも趣味を続けられる環境がある程度整えられています。 かつて、「老いは恥ではないのだよ」と語って40歳を過ぎてからチャンピオンにカムバックしたボクサーもいました。しかし、どうあっても「老い」は現実に訪れるものです。寿命が伸びている今、自分が趣味を諦めることになる可能性について考えることは、体験として貴重なものなのではないかと思います。