あらすじ出会ったあの日も、すれちがった夜も、共にする今日も、いつだってまだ途中の私たち。――息を潜めて、からだを重ねて、それからずっとずっと恋をしてきたふたり。求め合いながら、許し合いながら、時にすれ違いながら、流れゆく季節を見つめながら、宮下雪乃(みやした・ゆきの)と岩井節子(いわい・せつこ)の恋愛風景に最終章が訪れる。ふたりぼっちの日々から、見えない道の先にある“心”を信じて――ひだまりに足をとめる。
一人の十代の「女性」の葛藤と自己確立の為の、繊細なドラマである本作。軸が無くフラつく人の苦しみに心寄せたいと思う方には是非、手にとって欲しい作品です。 ★★★★★ アイドルになりたかった主人公・雪乃。彼女が欲しかったのは「皆んなに見られる」事でした。 誰も自分を見てくれない都会で、自分を見つけてくれた節子と恋人になった雪乃。しかし「皆んなに見られたい」欲望、節子が自分以外を見るかもしれない嫉妬、男性への嫌悪と好奇心、はっきりしない性指向と外からの視線……百合好きに嫌われる例の「裏切り」のシーンは、雪乃の歪みと捉えれば、私も心を寄せられる。 全てに好かれたかった雪乃。しかしかつて信頼していた人の心は、ほんの少し時を置き・場所を隔てて全く別物の様に変化し、一瞬で雪乃を裏切る。 一方、例のシーンを含め、雪乃と節子の心も、ほんの数コマで簡単に変化する様子が何度も描かれる。では雪乃を裏切った人達と、節子との違いは何だったのか。危うげな雪乃と節子の関係はどう変わっていくのか。……そこは是非、作品を読んで確かめて下さい。 描かれる人間模様、雪乃の心模様に苦しさを覚える事も多い作品です。しかしそれ故に自己の頼りなさ、どうやって人は心を保って歩き続けるのか、という事を我が事の様に考えさせられる……やっぱり名著だと思います。