あらすじ関門海峡一帯での石油販売業を成功させた国岡商店。大正3年、次なる販路を求めて、店主の国岡鐡造(くにおか・てつぞう)は海外・満州に狙いを定める。満州にはアジア最大といわれる南満州鉄道株式会社があり、ここを顧客にすれば大きな利益が得られると考えた結果だった。しかし満鉄にはすでに欧米石油メジャーが食い込んでいた。油の品質・価格の差は歴然だったが、鐡造にはある秘策があった。若き国岡を描いた青春編、遂に完結!
普通は稼いで喰うために仕事をするわけです。 喰えなかったら嘘をついたり他人の世話になったり、 他者に迷惑をかけるしかないわけで。 逆に余裕で喰えるなら善も偽善もする余地が生まれるわけで。 武士は食わねど高楊枝、という例えもありますが、 高楊枝を咥えるのにも最低限の金はいるわけで。 その一方で、武士の商法という言葉もあったりして、 志だけ高くてもビジネスで成功は出来ないわけで。 ビジネスがシビアなものであるのは世間の常識では あるわけですが、かといって実利第一で マナーやルールや人情をないがしろにしたら やはりいずれどこかで恨みを買ったりして潰されるわけで。 盛者必衰の理、とでもいいましょうか。 それに加えて、普通は人間は情にもろい。 「情け」「縁」「家族」「日本人」「大和魂」 「友情」「仲間」「仁義」「筋」とかの キーワードには弱いわけです。 さすがに「非国民」なんて言葉は最近はあまり聞きませんが。 「海賊とよばれた男」は面白いし感動します。 けれども危ないキーワードが満載なんです。 下手したら冷静な判断を失うくらいに。 「それでも日本人か!」とか「君は家族だ」 とか、ある意味で無敵ワードですよ。 それを否定したら非難の嵐。今風に言えば炎上必至。 ですからこそそこで、今一度「日本人」とか「家族」とかの 言葉の意味を、少し距離を置いて見据えながら読むべき だと思います。 「日本人であるとはどういうことか」 「家族とはどういうものか」 それを考えながら読んでこそ、読んだ甲斐が生まれるような 気がします。 そこを外しちゃうと、 「令和納豆」の世界になっちゃうんじゃないかな、と。