あらすじ北海道で農家をしている千夏の父親が、国木田大学にやってきた。父親は卒業したら地元に戻って農家を継いでもらいたいと思っているのだが、どうやら千夏にはその気がないようだ。東京で新しい夢を見つけた千夏の心の葛藤と、父親の思い…。玄米に出会って「食」の奥深さを学んだという千夏が見つけた新しい夢とは…!?
このタイトルにこの表紙だと、弁当を扱う食マンガと思われがち。確かに食マンガであり弁当ネタも多く出てはきます。ただ、私はむしろ教育的な部分が大きい作品だと思うんです。主役は國木田大学農学部のちょっとかわった講師・結城玄米。この人、授業にぬか床を持ちこむは、大学に勝手に畑は作るは、やることなすことマイペース。ですがその正体は食文化史のエキスパート。「食べることは生きること」という信念に基づいて、一家で囲む食卓の大切さや、食べ物に対する感謝の気持ち、食文化のありがたさを身をもって教えてくれる、言動一致の人。そして彼の想いは関わる人たちにしっかりと受け継がれていきます。それは母親への気持ちの変化であったり、郷土料理の本質を深く知ることであったり。それを通して教え子たちが成長していく過程が感動的で、うらやましくもあります。押しつけがましくないのに、すっと人の心の中に入ってくる玄米先生の授業だったら、何度でも受けてみたいですね。私も農学部出身なので、もしこんな先生がいたら今ここでこの原稿を書いてはいなかったかも。