あらすじ

海外にいる両親と離れて暮らす中学生の玄米は、父の友人である大学教授の茶川に連れられ、山形県米沢市のとある農家に来ていた。猛烈な吹雪の中、雪菜掘りを手伝い、生の雪菜を食べた玄米はその甘さに驚くが、夕食で出された茹でた雪菜の塩漬け「ふすべ漬け」の辛さに再度驚かされる。そして、頑なだった玄米の心に変化が生じて…!?
玄米せんせいの弁当箱 1巻

国木田大学農学部の「食文化論」の講師として新しく赴任してきたのは、大きな桶いっぱいに詰まった糠を背負ってきた変わり者・結城玄米。「食べることは生きること」「食文化を学ぶことは、生きる術を学ぶということ」との信念のもと、講義を開始した玄米は、いきなり学生たちに糠床を作らせて…!?日本の「食」を考える食育コミック!!

玄米せんせいの弁当箱 2巻

大学の食堂でメニューの写真を撮ったり、食事している学生たちの様子を見て説教を始めるひとりの女性。彼女の名前は、マリア・一本松・アラゴン。スペインの大学で玄米の師・茶花教授に師事しており、玄米とも旧知の仲である。玄米の講義に興味を持って来日してきた彼女は、日本の食糧事情を危惧しているようで…!?

玄米せんせいの弁当箱 3巻

知人の道田さんの畑で、農作業に精を出す玄米たち。無農薬栽培のため、畑にはモンシロチョウが飛び交っている。そんな中、農家を生業にしている男性・狭山さんがやってきた。農薬を使って野菜を栽培しているという狭山さんに、マリアは理由を問うが、その答えには日本の農家の厳しい現実があり…!?

玄米せんせいの弁当箱(4)

コンビニのゴミ箱へお弁当の中身を捨てようとしている女子中学生・珠美と出会った玄米と千夏。珠美に理由を問うと、1か月前に母親が急逝し、父娘ふたりきりに。そんな中、父が早起きして体育祭のお弁当を作ってくれたが、不恰好なお弁当が恥ずかしくて食べられなかったという。そんな珠美に玄米は「君はお弁当を作ったことがある?」と尋ねて…!?

玄米せんせいの弁当箱(5)

海外にいる両親と離れて暮らす中学生の玄米は、父の友人である大学教授の茶川に連れられ、山形県米沢市のとある農家に来ていた。猛烈な吹雪の中、雪菜掘りを手伝い、生の雪菜を食べた玄米はその甘さに驚くが、夕食で出された茹でた雪菜の塩漬け「ふすべ漬け」の辛さに再度驚かされる。そして、頑なだった玄米の心に変化が生じて…!?

玄米せんせいの弁当箱(6)

夏休み、国木田大学農学部の教授・多摩は幼い子どもふたりを連れてキャンプに来ていた。子どもたちの喜ぶ顔が見たくて、慣れない魚釣りや虫捕りに奮闘するが失敗ばかり…。そんな父に愛想を尽かした子どもたちが、頑張る多摩をよそに散策へ出ると、野イチゴを摘みに来ていた玄米と偶然出会い…!?

玄米せんせいの弁当箱(7)

北海道で農家をしている千夏の父親が、国木田大学にやってきた。父親は卒業したら地元に戻って農家を継いでもらいたいと思っているのだが、どうやら千夏にはその気がないようだ。東京で新しい夢を見つけた千夏の心の葛藤と、父親の思い…。玄米に出会って「食」の奥深さを学んだという千夏が見つけた新しい夢とは…!?

玄米せんせいの弁当箱(8)

玄米が恩師・茶花先生のために、一人一品料理をつくって持ち寄り、参加したみんなでそれをいただく「弁当の日」を計画した。今回のテーマは「茶花先生に贈るお弁当」。マリアのスペイン風サンドイッチ、音戸の特製お好み焼き、聡美の玄米からもらったダッチオーブンでつくったカボチャ料理…。弁当づくりにはいろいろな物語があって…!?

玄米せんせいの弁当箱(9)

トイレから空のコンビニ弁当箱を持って出てきた学生を見かけた玄米は、不思議に思い、新平に「どうしてトイレに弁当なんか…?」とたずねる。新平から、トイレの個室で人目を避けてこっそりひとりで昼食をとる「便所飯」のことをきいた玄米は、新平と茶花先生を誘い早速「便所飯」を試してみることに…!?

玄米せんせいの弁当箱(10)

国木田大学付属国木田小学校に就職した千夏は、子どもが親の手を借りずにお弁当の発案・買い物・料理・後片づけをして学校に持ってきて食べるという取り組み「弁当の日」を提案する。難色を示す先生方に、玄米はまずは先生たちだけで一人一品だけ持ち寄って食べてみる予行練習をしてみようと提案して…!?

玄米せんせいの弁当箱

食文化のありがたさを身をもって教えてくれる

玄米せんせいの弁当箱 魚戸おさむ 北原雅紀
マウナケア
マウナケア

このタイトルにこの表紙だと、弁当を扱う食マンガと思われがち。確かに食マンガであり弁当ネタも多く出てはきます。ただ、私はむしろ教育的な部分が大きい作品だと思うんです。主役は國木田大学農学部のちょっとかわった講師・結城玄米。この人、授業にぬか床を持ちこむは、大学に勝手に畑は作るは、やることなすことマイペース。ですがその正体は食文化史のエキスパート。「食べることは生きること」という信念に基づいて、一家で囲む食卓の大切さや、食べ物に対する感謝の気持ち、食文化のありがたさを身をもって教えてくれる、言動一致の人。そして彼の想いは関わる人たちにしっかりと受け継がれていきます。それは母親への気持ちの変化であったり、郷土料理の本質を深く知ることであったり。それを通して教え子たちが成長していく過程が感動的で、うらやましくもあります。押しつけがましくないのに、すっと人の心の中に入ってくる玄米先生の授業だったら、何度でも受けてみたいですね。私も農学部出身なので、もしこんな先生がいたら今ここでこの原稿を書いてはいなかったかも。