あらすじ

MSGによる拠点の襲撃で多数の戦死者を出した反政府組織は、この状況を打破すべく、標的をフォン・マイザー1人に定めた。彼女の存在さえ消せば、残ったMSGの指揮を執るものはいない。裏の世界で名の通った暗殺者“違う顔”による緻密な計画の下、その襲撃の時が迫る──。
東独にいた 1巻

ベルリンの壁で一つの国が真っ二つに裂かれた世界。東ドイツ。社会主義が支配するその国に住むアナベルは、古本屋を営む青年・ユキロウに密かな恋心を抱いていた。そして、国家の陰謀が絡む明かせない秘密を。時代が、思想が、抗争が、二人を別つ壁となる――。東ドイツに生きた人々を描く本格派歴史劇。

東独にいた(2)

「フレンダーは東洋人である」──。反政府テロ組織・フライハイトを束ねるリーダー“フレンダー”に対し浮かび上がった疑惑は、テロリスト殲滅を目指す超人部隊の隊員・アナベルの想い人であるユキロウに向けられた! “正しい世界”を望む反政府組織と“世界の正しさ”を謳う超人部隊が衝突する! 本格派歴史群像劇第2巻!

東独にいた(3)

主義主張の壁が国を裂く東ドイツ。反政府組織の首謀者・ユキロウの投獄を受け、彼の部下たちは奪還作戦に打って出た。フライハイトとMSGが死力と知力を尽くす戦場で、ユキロウとアナは出会ってしまった。二人の関係の行方は――。そして、東ドイツの闇の支配者であり、超人部隊MSGの創設者が動き出す。社会主義の真の在り方を巡り、抗争激化の時代が幕を開ける――。

東独にいた(4)

古書店を営む柔和な青年としてではなく、反政府組織・フライハイトのリーダーとしてのユキロウと対峙したアナ。二人は己の主義を貫くため決別するのだった──。そして、アナは東ドイツに属す軍人としてフライハイトの拠点と目される、ベルリン大聖堂の地下へと潜入する。襲撃を許してしまったフライハイトにとって短くも苛烈な戦闘が始まる──。

東独にいた 5巻

MSGによる拠点の襲撃で多数の戦死者を出した反政府組織は、この状況を打破すべく、標的をフォン・マイザー1人に定めた。彼女の存在さえ消せば、残ったMSGの指揮を執るものはいない。裏の世界で名の通った暗殺者“違う顔”による緻密な計画の下、その襲撃の時が迫る──。

東独にいた

斜陽の国が舞台の巧妙なストーリー、そして「動く」マンガ

東独にいた 宮下暁
いさお
いさお

「東独にいた」は、解体前夜の東ドイツで発生するテロをめぐる群像劇です。ヤンマガサードで連載しています。 主人公アナベルは軍人です。彼女は小さな本屋の店主、ユキロウに想いを寄せており、足繁く本屋に通う乙女な一面がある一方で、軍人として、テロリストを束ねる反政府組織との壮絶な戦いに身を置いています。 しかし、彼女はもちろんこのことを知りませんが、ユキロウこそ、実はその反政府組織の総指揮官なのです。 本作が描くのは、そんな2人の捻れた関係です。 アナベルは、軍人である自らの所業を肯定するために、斜陽の祖国を愛そうとする。 ユキロウは、祖国を愛するがゆえに、自らの信念に従って、斜陽の祖国を断罪する。 だから、アナベルは、愛国心を裏に秘めたユキロウたちに一種の憐憫を覚えてしまうし、ユキロウは、自らを肯定したい気持ちを裏に秘めたアナベルに、不思議な共感を抱いてしまうのです。 しかし、アナベルとユキロウは、もう引き返せないほどに、互いに相容れない立場に捉われてしまっている。 そんな先の見えない2人の行方に、いつのまにか目が離せなくなっていくのです。 また、本作の魅力は、こうした巧妙なストーリーだけではありません。 もはや「マンガであること」をやめかけていると言っていい独特な表現技法も、本作を語るに欠かせない特徴の一つです。 まず、本作のコマ割りは、非常に「動画性」を意識しているように思われます。何コマも連続して、同じカメラ視点から同じキャラの動きを描く場面が頻繁にあり、パラパラマンガのようにキャラが動いて見えるのです。 また、そのコマ毎のキャラの動きを大きくすることで、瞬間移動のような速さを表現するとか、逆にコマ毎のキャラの動きを極端に小さくして、その間に心の中でのセリフを大量に入れることで、そのキャラの思考の速さ、スローモーション動画のような感覚を覚えさせる、といった表現が多くとられています。 そうした表現に、これまた本作に特徴的な絵の簡素な雰囲気や、白黒を基調とした陰影に溢れた色遣いが重なってくる。 そんな本作を読んでいると、まるで往年の白黒映画を鑑賞しているかのような、静止画である「マンガ」ではおよそ体験しえないはずの不思議な感覚に捉われていくのです!この表現体験、一度は皆さんに味わっていただきたいです! 内容、表現、ともに一級品の作品です。 2019年末に1巻が出たばかりと、すぐに追いつけます。ぜひ、手にお取りください!!