鬼虫
孤島に住む民族の崩壊までを描いた物語
鬼虫 柏木ハルコ
六文銭
六文銭
本作の孤島もそうなのでですが、限界集落など外部から孤立した場所で、独自に築き上げてきた風習や文化を扱う作品って地味に好きなんですよね。 テクノロジーが発展していない時代に、災害や病など、原因不明なことに対する「不安」とどう立ち向かっていったかとか、知的好奇心とは違う人間の根源的な部分を刺激してロマンをかきたてます。 加持祈祷や人身御供などに頼らざるをえない感じも、今となっては哀愁漂いますし。 そして、孤立した環境下で発展した独自の文化を壊すのは、いつだって外部からの異分子だったりします。 本作も、平安時代の孤島「鬼島」を舞台に、そこで暮らす人と漂流してきた女「マナメ」を中心に描かれます。 そのマナメは、主人公トラゴが幼少期、自身の過失で海の向こうへ行方不明になってしまった実の姉タナと瓜二つ。 実際は赤の他人なのだが、過去の負い目からなのかこの外部からの異分子でもトラゴは保護し、これが島にとって問題となる。 この島にある火山の噴火や自然災害など良くないこと連続すると、この手の孤立した環境下ではよくあるように、外部からの存在が原因とされ、島全体でマナメを殺そうとする。 逃げるマナメとかくまうトラゴ。 また、マナメという外部の存在によって、外の世界を知った島の住民たち。 こうして統制が保たれていた島全体にも、少しづつ亀裂が起き、火山の本格的な噴火も助けて、やがて島から脱出という崩壊へと繋がっていくという流れ。 5巻と比較的短いながらも、歴史・文化・風習などを扱った民俗的な濃厚ストーリーでした。 そして何より、それらを形作る「人間」を描いた作品だと思います。 随所にリアリティや神話のモチーフもあるようで、舞台青ヶ島かな?とか最期はノアの方舟をイメージしているのかな?とか考えると、それもまた楽しいです。 著者は、似たようなテーマで村の風習を扱った「花園メリーゴーランド」という作品もあり、こちらもオススメです。