鳴かせてくれない上家さん

麻雀文化の広がりを確かに感じる麻雀ラブコメ

鳴かせてくれない上家さん 古日向いろは 更伊俊介 内川幸太郎
兎来栄寿
兎来栄寿

2018年にMリーグが発足してから早2年経ちますが、そのお陰もあってか今世間で再び麻雀が盛り上がっています。3シーズン目を迎えた今年は視聴者数も100万人を突破。とある大手企業では全自動卓の売り上げが4倍にもなったとか。 『咲-Saki-』のように世界の競技人口が億単位になるにはまだ暫くかかりそうですが、それでもノーレートの健康麻雀が老若男女問わず広がりを見せ続けているのは確かです。 となれば、当然マンガ業界にもそこ人気は波及して新しい麻雀マンガが生まれます。『鳴かせてくれない上家さん』は、『一色さんはうまぶりたいっ!』と並んで今注目の麻雀ラブコメです。 作画を担当するのは『バガタウェイ』や『サクラクエスト』の古日向いろはさんということで、女の子のかわいさはお墨付き。メインヒロインの後輩キャラ・上家さんはもちろんのこと、同級生で黒髪ポニーのお嬢様系ヒロイン筒井さんが個人的に推せます。 上家さんの奔放な行動や笑顔に翻弄されつつ、相手が自分のことをどう思っているのか、これから先どうなるのかドキドキするラブコメ分と、「鳴かせてくれない」にフィーチャーした麻雀分、どちらも詰まっていて一粒で二度美味しいです。 監修にはしっかりMリーグ所属の内川幸太郎選手が入っているのもポイント。巻末のおまけマンガでは、古日向さんが元々麻雀を解らなかったもののMリーグを観るようになってハマったというエピソードもあり、麻雀好きとしてはこうして麻雀文化が根付き広がっていくのは嬉しいなぁとしみじみ読みました。

鳴かせてくれない上家さん

既存の麻雀のイメージを覆す"麻雀ラブコメ" #1巻応援

鳴かせてくれない上家さん 古日向いろは 更伊俊介 内川幸太郎
sogor25
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高校の片隅で1人スマホでネット麻雀を打っていた麻野イサムは、ある日突然、見知らぬ女の子に「一緒に麻雀を打ってください」と声を掛けられます。彼女は麻雀部に所属する後輩・上家(かみや)サクラ。先月麻雀を始めたばかりだという彼女に対し、ネット麻雀をやり込んでいて実力に自信のあった麻野だったのですが、実は彼はリアルでの麻雀は打ったことがなく、いざ打ち始めると上家さんとの会話に惑わされて自分の戦略が全く通用しません。なんとか彼女に勝とうと一生懸命考えを巡らせるうち、いつしか麻野は上家さんのことを意識し始めるようになり…という、「麻雀ラブコメ」という新たなジャンルを開拓しているのがこの作品です。 麻雀マンガといえば、これまでは競技としての戦略性やギャンブル的な表現が中心の作品が多かったのですが、この作品は"コミュニケーションツール"としての麻雀に注目しています。 麻野が得意とするネット麻雀は対戦相手とのコミュニケーションが基本的には一切なく、リアルで麻雀を打つ時の相手との会話や表情、仕草など、相手とのコミュニケーションという要素に惑わされる麻野の様子がコミカルに描かれています。 このネットとリアルの違いという面は麻雀を知らなくても、例えばオンラインでボードゲームや人狼ゲームをやったことがある人には理解しやすいかもしれません。 そして、そんな麻野が勝つために一生懸命に麻雀を打とうとするうちに上家さんや他の麻雀部員との会話が盛り上がっていき、自然とラブコメへと発展していきます。 「バガタウェイ」などで知られる古日向さんの絵柄は可愛くて読みやすく、また、各話の最後にはその話に登場する専門用語を監修の内川さんが丁寧に解説してくれています。連載誌も麻雀とは関係ないフラッパーということもあり、麻雀を知らない人にこそ読んでみてほしい作品です。 また、ネット麻雀のあるあるネタも多く、麻雀の描写自体もすごく丁寧で、麻雀を知ってる人ならさらに面白い要素を見つけられる作品になっています。 ちなみに、監修の内川さん、作中でも「コータロー」というネコとして登場していますが、麻雀界で一二を争うイケメン麻雀プロなので興味があればそちらも調べてみてください。 1巻まで読了

寄道銭湯

人と時を味わう読切

寄道銭湯 古日向いろは
吉川きっちょむ(芸人)
吉川きっちょむ(芸人)

漫画アクション2020年4号の読切『自販機』ではたった8pで、自販機を軸に少女の半生とかけがえのない友人を描いた一方で、2020年5号では、アラサーらしきOLが引っ越してきた知らない街で吸い込まれるように銭湯に入ってじっくり味わうという振り幅のある読切『寄道銭湯』を描いている。 どちらの読切でも、人や建築物の歴史、時間の流れ、背景を感じとれてとてもいい。 アラサーっぽく見える落ち着いた女性。遅くまで仕事だったのか23時過ぎに銭湯に来た。 銭湯に入ったのは惹かれたのもあるだろうが、引っ越したてだしもう遅い時間だし帰ってから荷解きしてお風呂グッズを出す煩雑さも手伝ってのことだろう。 銭湯とともに時を止めてしまったかのような番台のお婆さん。 ロッカーには、着ていた服をきちんと畳んで入れる几帳面なタイプだと分かる。 急な引っ越しだったっぽいのは、仕事の都合なのか、同棲相手との別れなのか、どこか晴れやかな顔にも見える。 髪が半乾きで帰れるってことは家も近いんだろうな。 最後のコマにはスカイツリーが背景にあるってことは、マップに銭湯も多いしきっと下町なんだろうな。 と、いろんな背景が見えてくる。 それだけでいい漫画だなー。