内容についてはもういろんな人が評しているのでここでは純粋な【書誌】的な部分について書いていきたい。 良い点としては、加藤伸吉のド迫力の絵を鑑賞するにはもってこいの【B5版サイズ】での復刊でモーニング連載時の【カラーページ】もそのまま再現されている。一コマ一コマ、この凄まじい描き込みぶりを見ているだけでも目が楽しい。 ただ、なにぶんデカいので紙媒体での読みやすさは新装版(2001)に軍配がくだるだろうか❓ 豪華版は紙のみならず、今回やや安価なkindle版も出ているので、そちらで堪能するのもアリかなと。 残念だった点としては2001年に復刊した際の作画の加藤伸吉の巻末オマケ漫画は今回【未収録】だという事。 豪華版とあって【新規描きおろし】等もちょっと期待していたところだがそれもない。かなり昔の作品で、近年の加藤先生の絵柄とは浮いてしまう面も生じるだろうし、これは致し方ないかもしれない。 良い点2としては、原作者の杉元伶一の【新規あとがき】だろうか。 本編で没になったCM案など、当時の裏話を色々と書いていて結構面白い。 小説化する構想もあったのは今回初めて知ったーー加藤先生の絵が強烈すぎて文章にしても微妙かな?との判断らしい。そこは挿絵付きでやってほしかった! 今回の復刊を奇縁に、また何か二人で新作を描いたりせえへんかな・・とちょっと期待しています.....👍
「民主主義はもういらないあなたのための全体主義」日本政府国民クイズ省がお送りするテレビ番組、国民クイズ。決勝クイズに正解すればどんな野蛮な願いでも政府によって叶えられ、それ以外の失格者はA〜Dランクの戦犯扱いされる。そんな狂ったクイズ番組に熱狂する人々が異常すぎて面白いのですが、司会者のK井K一の暗殺未遂をきっかけに、後半では反体制派が革命を起こそうとする話になります。実はK一も過去に国民クイズに出場していてB級不合格者の身なのです。反体制派の協力者になったK一の革命家としての変貌ぶりも見所ですが、熱狂にあおられた人々が選んだ結末が容赦無くて好きです。現実の日本で何か運動を起こしたとしても同じ選択をしてしまいそうでヒヤリとしました。「バカとゴッホ」でも思いましたが加藤伸吉の絵って読んでてすっごく楽しいですね。
絶対おもしろいやつだと思って読んだらやっぱりおもしろかった。 子供の頃からの幼馴染みで今も同じ高校に通っている堺と正二はバンドを組んでて、才能はあるんだけどなんだか上手くいっていない。二人はひょんなことからクラスメイトで服作りのセンスが抜群で「ゴッホ」というアダ名の女の子と仲良くなる。ゴッホが高校を辞めて服作り一本でやっていく決心をして、堺と正二もそれを応援するんだけど、高校卒業して働きながらバンドを続けるのも難しいし、ゴッホも親からの援助も打ち切られてお金がなくて、社会に揉まれてみんながどんどんダメになっていく。これが1巻。名付けるなら「3人の青春編」って感じ。 2巻はバラバラになった3人がまた再会していく話で、あらすじにすると漫画らしい展開の連続なんだけど、まったく安っぽくない。私は2巻からが好きだった。特にゴッホが衣装係として働き始めたショークラブで出会うエルムとの恋の場面。エルムも変わり者なのがまたいいんです。最初は堺とゴッホが中心の話なんだけど、タイトルの「バカとゴッホ」の意味が堺と正二の二人のことに変わっていく、これが見所ですね!でも3人の出会いがとてもいい結末を迎えたラストも素敵でした。
「マンガはどこまで表現できるのだろう」と考える事があります。“音”は聞こえなくても、音楽漫画の名作は数多くありますし、“味”がわからなくてもグルメマンガは星の数ほどあります。名作は時に、現実に存在する以上の“音”や“味”を表現することがあるように思います。『国民クイズ』が描き出したのは、現実以上の“熱狂”でした。 『国民クイズ』が描くのは、“国民クイズ”が全てを支配する日本です。“国民クイズ”とはテレビでよく見るクイズ番組そのものです。ただ、賞品のレベルがケタ違い。そこで合格者となれればどのような望みも叶えられます。ある者は、いなくなった飼い犬を探してもらい、またある者は3億円の借金の肩代わりを願います。故郷の温泉街を復興させるためにエッフェル塔を移動させた合格者もいます。合格者の希望は絶対・無制限に優先されると憲法にも規定されているのです。民主主義が達成できなかった、一国民の願いをダイレクトに迅速に達成されるのが、「国民クイズ体制国家」となった日本なのです。 「国民クイズ」にはもちろんリスクもあります。予選をくぐり抜け、本選の6名に選ばれたにもかかわらず不合格となってしまうと、「戦犯」として強制収容所で働くことになってしまうのです。視聴者は、参加者の天国と地獄を楽しみに眺め、やがて狂乱の舞台に参加しようと変わっていくのです。 これら餓鬼のような参加者をコントロールし、テレビの向こう側にいる人々の欲望に火をつけるのが、司会者・K井K一。彼自身、かつて「国民クイズ」に参加しながらも本選で不合格になってしまった「戦犯」です。奉仕労働として「国民クイズ」の司会を行います。このK井の司会がとてつもないのです。時に静かに、時に荒々しく、回答者を慰め、挑発し、弄ることで、番組を盛り上げていきます。 彼は国民にとってはトリックスターとして、「国民クイズ」の象徴として機能しているのです。 しかしK井にとって「国民クイズ」に対する思いは複雑です。強制収容所に暮らし、妻子と離れて暮らすことになった現状に怒りもあります。双子の処女と3pしたいという欲望と恵まれない子のために養護施設を作りたいという願いを同列に扱う「国民クイズ」に疑問もあります。しかし、なにより司会はK井にとっての天職でもあるのです。 最終局面、K井は完全に「司会」となり、政府やテロリストといった様々な人間思惑を超えたところまで到達します。国民の欲望は限界以上に引き出され、大衆はかつてない「熱狂」に包まれるのです。 その行き着く先はK井自身にもわからないのです。己の欲望だけを求める国民が、熱狂のもとで一丸となって暴走する…このライブ感は『国民クイズ』でしか味わえないのです。
加藤伸吉といえば「国民クイズ」がやっぱり有名だけど「バカとゴッホ」もとても良い。 ムーズムズっていうバンドを組んでいた高校生堺と正二(最初は4人だったけど2人が1話目で離脱)とゴッホっていう服を作るのが好きな女の子の話。 堺と正二は高校を卒業してからバイトをしながら音楽活動を続け、ゴッホは高校を中退して自分で作った服を公園のフリマ的なところに露店を出して売っていた。 堺と正二もゴッホも夢を叶えたいしお互いの夢の助けになりたいって思っているんだが、どちらかがうまくいったりすると「追いつかないと」っていう焦燥感があったりするし、逆に助けてあげているつもりが異性として気に入られたいだけだった(かも)みたいな夢追いと恋とがいい塩梅で混ざったとても泥臭い青春マンガ。 2巻で完結するんだけど、1巻に「イサムダイアリー」「MY MHZ」が2巻には「L&P」「夜ゲラ」の短編が巻末に収録されている。こっちも面白い。 全部に共通しているけど、独特なタッチがやはり魅力的で引き込まれる絵を持っている。
※ネタバレを含むクチコミです。
> 「国民クイズ」「バカとゴッホ」で知られる加藤伸吉「惑星スタコラ」4巻と最終5巻が、本日12月22日に同時刊行された。 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20151222-00000116-nataliec-ent 国民クイズすげー好きだった
内容についてはもういろんな人が評しているのでここでは純粋な【書誌】的な部分について書いていきたい。 良い点としては、加藤伸吉のド迫力の絵を鑑賞するにはもってこいの【B5版サイズ】での復刊でモーニング連載時の【カラーページ】もそのまま再現されている。一コマ一コマ、この凄まじい描き込みぶりを見ているだけでも目が楽しい。 ただ、なにぶんデカいので紙媒体での読みやすさは新装版(2001)に軍配がくだるだろうか❓ 豪華版は紙のみならず、今回やや安価なkindle版も出ているので、そちらで堪能するのもアリかなと。 残念だった点としては2001年に復刊した際の作画の加藤伸吉の巻末オマケ漫画は今回【未収録】だという事。 豪華版とあって【新規描きおろし】等もちょっと期待していたところだがそれもない。かなり昔の作品で、近年の加藤先生の絵柄とは浮いてしまう面も生じるだろうし、これは致し方ないかもしれない。 良い点2としては、原作者の杉元伶一の【新規あとがき】だろうか。 本編で没になったCM案など、当時の裏話を色々と書いていて結構面白い。 小説化する構想もあったのは今回初めて知ったーー加藤先生の絵が強烈すぎて文章にしても微妙かな?との判断らしい。そこは挿絵付きでやってほしかった! 今回の復刊を奇縁に、また何か二人で新作を描いたりせえへんかな・・とちょっと期待しています.....👍