近藤ようこ先生の坂口安吾原作シリーズの第2弾。後書きによると原作は坂口安吾ファンに人気があるそうです。前作「夜長姫と耳男」と同じく残忍な美女に振り回される男の話なんですが、こっちの方がもっとグロテスクかも…。不気味だけどなぜか見惚れてしまうシーンの連続で、これは原作でどう表現されてるのか読み比べてみたくなりました。これから桜を見たらこの話を思い出しそうです。
近藤ようこ先生の坂口安吾原作シリーズの第1弾。人の2倍は大きい耳をした仏師の男がライバル達と競い合いながらお姫様の為に弥勒菩薩を彫ることなるのですが、そのお姫様というのが虫も殺さないような可愛い顔をしてるのに実はとても残忍な心を持っていて、危害を加えられた仏師の男はこっそりと復讐を企てることにしたのです…。史実にもブラッディメアリーみたいな怖いお姫様が存在しますが、近藤ようこ先生が描かれた夜長姫は神々しさまで感じられました。
原作を読んだことはないけれどかなり忠実に描かれているということは私にも分かりました。書いている途中で澁澤龍彦が喉の癌になったことがストーリーに影響しているようですね。前半の奇想天外さに比べるとラストはまさに夢のように儚い終わり方です。漫画で読んでも難解な話ではありますが近藤ようこ先生の美しい絵を堪能するだけでも大満足でした。いつか原作にも挑戦したいです。
「こんな夢を見た」で、有名な夏目漱石の『夢十夜』を漫画化した一冊。怖ろしくも幻想的な10編の夢の物語には、怪談のような少し怖いものもあれば、現実世界と歴史が入り混ざったような話、宗教性の強い話などバラエティに富んでいる。どの話にも近藤ようこ先生の筆致がドンピシャで合っていて素晴らしい。まるで白昼夢のような表現がずっと続くが、あまり意味は深く考えず感じるままに読むのが良いと思う。
※ネタバレを含むクチコミです。
歴史上の人物が出てくると「あ、里中満智子のアレに出てた…」とおさらい出来て、頭の整理になる。 前半のホラーは苦手なら読み飛ばして、一気に蓮糸織まで駆け込むのも一つの手。俤ひとのくだりも深く考えず、「そーいうもんか」で進めましょう。 この本の面白さは幻想描写のくだりではなく、古代の歴史人物の描写(没落していく南家・横佩大臣の石城の意味するもの、仲麻呂の如才なさ、大友家持の中途半端な煩悩)二上山に沈む日で春分秋分を理解する郎女の聡さなどに光る折口信夫の知性にあります。味わいとしては、よくできた推理小説のようなハイブリッドの面白さなのです。
なんと!ずっと未完だったけど12年後に最終話が描かれて完結した作品だそうです。単行本の帯は盟友・高橋留美子先生が書かれているし読む前から私の期待値は上がりまくっていましたが、それでもすっごく面白かったです。 狼に育てられたワタルと記憶を失くしてしまった鏡子が旅をしながら物の怪や不思議な事物に出会う物語で、1話1話が珠玉なんですよ!ワタルと鏡子のキャラクターもすごく魅力的で読み終わった後も2人のことが心から離れません。これは描き終えるのに12年かかったのも大納得です。 あとがきでは近藤ようこ先生の漫画に対する想いと、先生にとっても「水鏡綺譚」は特別な作品であることが語られていました。
80年代に月刊ASUKAに描かれた4作品が収録されています。表題作の「水の蛇」は少女から女性になることの葛藤がテーマなんですが、これが少女雑誌を読んでる女の子に向けて描かれたものなんだと思うとドキッとします。自分が思春期に月刊ASUKAの読者としてたまたまこの作品に出会っていたら、頭ではまだ理解できないかもしれないけど心には深く刺さっていたはずです。後半にはビッグコミックに描かれた4部作が収録されていますが、やっぱり掲載誌によって作品の雰囲気は全然違いますね。
表紙がすごくカッコよかったので手に取りました。内容は坂口安吾の小説をコミカライズしたものになります。原作小説が発表された当時はGHQから大幅に検閲された影響もあって評価はあまり高くなかったそうですが、近藤ようこ先生は2001年に講談社文芸文庫から出版されたGHQ無削除版を元に漫画にされているのでパンチがすごいです。まず「夜の空襲はすばらしい」から始まります。 戦時中にどうせ日本は負けるんだと思いながら生きていた男女がいて、二人は夫婦同然に暮らしてるんだけど、戦争が終わったらこの関係も終わるんだろうってお互いに心の中では思っている。女は貞操観念にダラしなくて、でも不感症で、男は全部を知っていて一緒にいたけど、戦争が終わりを迎えて…という話です。 読んでいて理解はしていると思うんですが言葉にするのが難しいですね。改めて読み返してみたら、あとがきに「青林工藝社に漫画化のアイディアを承諾してもらってから完成までに6、7年かかっている」と書かれていたのに驚きました。でも、こんなにすごいものはそれ程の年月がかかって当然だと思います。
ある日突然、何も言わずに婚約者の功一が失踪。その3年後、主人公のもとに事故で死んだという連絡が来るところから物語が始まります。 なぜ・どこに・なにをしに、が主人公も功一の家族も分からないなか、わずかな遺品を頼りに、彼が失踪してから亡くなるまで何を思い生きていたかを辿る旅に出ます。 面白いのが、神奈川→和歌山→埼玉→沖縄→東京と渡り歩くのに、目的地ごとに主人公含めた家族がバトンタッチしながら行くところ。それぞれに生活があるため、その旅に没頭するわけにはいかないのです。そこがとても現実的で良いのと、その場所に赴いて功一のことを知る人と話をすることで、それぞれがそれぞれの功一に対する思いの変化を見ることができます。 この作品が何を言いたいかは、あとがきにしっかり記されてます。父親が失踪してから自分を犠牲にしてずっと我慢をしながら生きてきたように見える功一の人生が幸か不幸かは、功一にしか、決められないのです。
近藤ようこ先生の坂口安吾原作シリーズの第2弾。後書きによると原作は坂口安吾ファンに人気があるそうです。前作「夜長姫と耳男」と同じく残忍な美女に振り回される男の話なんですが、こっちの方がもっとグロテスクかも…。不気味だけどなぜか見惚れてしまうシーンの連続で、これは原作でどう表現されてるのか読み比べてみたくなりました。これから桜を見たらこの話を思い出しそうです。