ディアボリク

神はどこにいるのか?

ディアボリク 丸尾末広
名無し
丸尾末広の今年二作目(おそらく)の読切「ディアボリク」。前回モーニングに掲載された「オランダさん」に引き続き、第二次世界大戦後とキリスト教がテーマ。 https://manba.co.jp/boards/104874 戦災孤児を収容するキリスト教養護施設に暮らす赤毛のミチオと神を巡るお話。「オランダさん」に登場した長崎の少年・マサルが素晴らしい宣教師と出会えたのに対し、こちらに登場する施設の園長・シュレック神父は神の教えを広める者として欠陥しかないまさに「diabolic(悪魔的)」な男。 シュレック曰く、日本は三等国で野蛮で神がいないらしい。 園で盗みを働きマリアを侮辱する浮浪者たちを描く中に、「最後の晩餐」を模したコマがあったのが印象的だった(その意図は自分には理解しかねるが)。 https://comicbeam.com/archives/008/201911/32d21816329fcc181a40ab534f7b33a3.jpg (『ディアボリク』丸尾末広) 救いのないシーンばかりが連続するが、最後の最後に、荒廃した町でサヨは12歳で殉教した隠れキリシタンの少年・ルドビコが死者を天国(パライゾ)に連れていく姿を見る。そしてミチオとサヨが優しそうな神父と出会ったところで話が終わる。 不幸ばかりだった2人だけど、「確かに日本にも神の国への道は開かれており、救いがあるらしい」。そんな読切だった。 【月刊コミックビーム2019年12月号】 https://comicbeam.com/magazine/magazine-10068.html
パノラマ島綺譚

相性抜群!

パノラマ島綺譚 丸尾末広 江戸川乱歩
マウナケア
マウナケア
相性抜群とはまさにこのことですね。幻想的かつ蠱惑的な江戸川乱歩の原作にいつもよりエログロを抑え気味にした丸尾末広の作画。奇跡のコミック化!という表現に偽りなしです。でも、もっといえば奇跡なのはコミック化されたことだけではなくて、この原作を漫画ならではの描写で昇華させて、空想するしかなかったパノラマ島を具現化させたことだと思うのです。原作にある「上下左右とも海底を見通すことのできるガラス張りのトンネル」や「空を打つかと見える絶壁」など、現代の技術ならば容易く映像化できますが、ここに「日夜をわかたぬ狂気と淫蕩、乱舞と陶酔」をどう織り込ませるのか。映像だとギラギラと生々しい作品になってしまうことでしょう。それが丸尾作画だとしっくりきます。大正浪漫風の作画を下地に、彫刻や滝、裸の男女の営みなどを大スケールかつ精緻に描写し、墓場で歯を抜く場面やフリークス的な表現をオリジナルで加えていく。美しくもあり醜くもある、そんな楽園世界を誕生させているのです。私、原作の初読は10代のころでした。以来、長年もやもやと想像していたものの真の姿がこの漫画にあります。