ナビレラ』は、私がこれまでに触れてきたWebtoonの中でも最高の作品です。

語弊を恐れずに言えば、現在のWebtoonは若者に向けたライトな作品や似通った人気のあるテーマの作品が非常に多いです。それ故に、既存のマンガのように深く重いテーマを扱っていて読んで考えさせられるような作品の割合は非常に少ないのが実情です。

従来のマンガ好きの方の中には「Webtoonはあんまり……」という方も一定数いると思います。しかし、そんな方にこそお薦めしたいのがこの『ナビレラ』です。

『ナビレラ -それでも蝶は舞う-』として日本ではドラマ版がNetflixで配信され、5月からは三浦宏規さん、川平慈英さんが主演のミュージカルも上映され、それらにあわせて紙の単行本も今月完結巻の5巻が発売されました。

この機会に再度ラストまで通読して、私は再び熱い涙を溢してしまいました。

人生の残り時間が少なくなってからの生き方。
夢やそれに伴う困難との向き合い方。
躓いてしまった時の立ち上がり方。
家族との関わり方。

人が生きていく上で大切なこと、これから先で行く道に待っているであろう物事が、たくさん盛り込まれた作品です。

「ナビレラ(나빌레라)」は「蝶のように美しく羽ばたく」という意味だそうで、まさに夢に向かって羽ばたいていく「70歳のおじいちゃんがバレエに挑戦する物語」とシンプル表せる内容ですが、その挑戦は本当に険しいもの。

一番身近な人を含めあらゆる周囲の反対を押し除けながら、満足に動けない老体に鞭を打ち、ボロボロになりながらそれでも叶えたい夢に向かって真っ直ぐ進む姿には胸を打たれます。

主人公のみならずさまざまな人物のエピソードが描かれていかますが、そこで人生の先達から送られる時に優しく時に厳しい厳しいメッセージの数々も箴言が豊富。

作中で、20代の夢破れた若者を「自分がもし20代の時からバレエをやれていたらどんなに良かったか」と諭し再び夢に立ち向かわせるシーンがあります。よく言われるように「今この瞬間が人生で一番若い」。人生においてやっておかないと後悔するであろうことをやり始めるなら、いつだって今この瞬間からが良いとエールを送ってくれます。

それは何も夢の話だけではなく、家族や友人知人との関わり方においてもそうです。人にはいつ何が起こるか分かりません。最後の瞬間に悔いを残さず幸せに生きていくためには、今日という1日1日を大事に生きていかねばならないと強く思わせられます。

また、物語の中で見舞われるある大きな困難は、私の祖父にも同様のことが起こり何年も一緒に辛い思いをしながら戦い続けた経験があるため、周囲の人間の気持ちも含めて非常に強く共感するところでした。誰にとっても起き得ることで、もしも自分がそうなったらと考えずにはいられません。

それでも挑戦して、挑戦し続けて、苦境に遭っても立ち上がって、見果てぬ夢を追い続けて、血と汗と涙に塗れたその先で彼らが辿り着く場所。そこには人間の素晴らしさ、人生の素晴らしさが溢れています。

今後、今以上に高齢化が進んでいく社会においてますます価値が高まるテーマを真摯に描ききっている作品です。

普段あまりWebtoonを読み慣れていないという方も、書籍版でぜひ5巻の最後まで読んでみてください。読む前より読んだ後の人生をより良いものにしてくれることでしょう。

読みたい
室外機室 ちょめ短編集
才気煥発の短編集 #1巻応援
室外機室 ちょめ短編集
兎来栄寿
兎来栄寿
今週末はコミティア148が開催ですね。 そのコミティアでかねてから一部のマンガ読みに注目を浴び賞賛されていた、室外機室のちょめさんの初の商業本が短編集となって発売されました。 表紙だけでも一目瞭然な、緻密な描き込みによって構築される独自の世界観。 目次を兼ねた描き下ろしの「序」から何と瀟洒なことでしょうか。 本編は 「継ぎ穂」 「21gの冒険」 「混信」 「地下図書探検譚」 の4つで構成され、最後に「〆」でまとめられます。 「継ぎ穂」は、それこそ同人即売会に参加したことがある人であれば強い共感を抱きながら、その展開にワクワクしてしまうであろうお話です。試し読みでこちらは全編が公開されているので、こちらを読んで本を買うか決めても良いでしょう。 ひと匙のファンタジーが注がれた、本や物語にまつわる物語を嫌いなはずがありません。 表紙にもなっている「21gの冒険」は、夢で空を飛ぶときのような感覚を思い出させてくれます。夢の中での飛行は、随意に飛び回れるというよりは上昇と滑空を繰り返しコントロールが難しいことが多いのですが、そのときのままならないGを感じるかのようです。 論理的な部分と非論理的な部分が入り混じっているのも夢の中のような感覚を増幅させます。 終盤の表情がとても良く、もたらされる読後感が何とも言えません。 「混信」は、作業BGMとして流していたラジオから現実に存在しない固有名詞や事件を述べる放送が定期的になされる、少し不思議なお話です。 もしかしたら、同じ宇宙のどこかから届いているのかもしれないし、並行世界のどこかから届いているのかもしれない。 ラジオという本来はインタラクティブなメディアが一方通行になっているという構造はメタ的で、現実の人間も意識して届けようとしていない人にも生きているだけでさまざまな影響を与え、また与えられていることに思いを馳せます。 最後に発される切実な言葉も含めて『CROSS†CHANNEL』を思わせるものもありました。つまり、好きです。 「地下図書館探検譚」も、扉絵だけでワクワクが止まらなくなる一篇です。 これもまた夢の世界に迷い込んだようなお話ですが、こちらはホラーやサスペンスの趣が強めに出ています。 入ってはいけない場所に入ってしまった禁忌を犯した感覚と、そもそもこの場所は一体何なのかという謎への好奇心が入り混じります。 本だらけの異空間には憧れを抱きますし、この物語の起点となる部分、好きです。 どうでもいいことですが、 「えぇいままよ!」 って実生活で使う機会はまずありませんが1回言ってみたいセリフです。 「序」を受けての「〆」で、まさに締めも完璧。1冊の短編集としてとても美しく完成されています。 こちらの短編集を読んで気に入った方は、webで読める「パティスリー・ヘクセン」もぜひ。 https://tonarinoyj.jp/episode/2550689798287081413
ふらりゲストハウス
ゲストハウスを巡る編集者 #1巻応援
ふらりゲストハウス
兎来栄寿
兎来栄寿
『くーねるまるた』の高尾じんぐさんの新作『おひゃくどまいり』と同時発売となった、2017〜2020年に『バーズ』や『comicブースト』で掲載された作品です。 マンガ編集者で日々激務をこなす主人公が、癒しを得る趣味として国内各地のゲストハウスを巡っていく作品です。 面白いのは、登場するゲストハウスはすべて実在するところとなっていて、その気になれば聖地巡礼も行ける仕様です。更に、単行本化にあたっては2024年5月現在の情報も記載されています。 3話に登場する泊まれる図書館のような「Book Tea Bed」は、麻布十番店は残念ながら閉店してしまったものの、渋谷・新宿御苑・伊豆大島にも展開されているなど。 それぞれの宿ごとに、そこにいる人々や施設の特色が強くあるので実際にいろいろなところを巡っている気分にもなれて楽しいです。 また、ゲストハウスといえば一期一会。初対面の外国人とも食事やお酒を介して楽しい交流をする一幕も。旅の魅力と共通する部分でもあり、良いなと思います。これが海外だと治安の面で警戒が必要になりますが、日本国内であれば女性ひとりであっても余程のところでなければ大丈夫だろうと思えます。逆に、もし海外の人がこの作品を読んだらこの治安の良さはファンタジーかと思われるかもしれません。 毎回出てくる、癖の強い漫画家たちのキャラクターも好きです。コロナ禍も挟まってしまい難しくなってしまった部分もあったのかもしれませんが、個人的にはもっともっと続いていろいろなゲストハウスや漫画家たちの苦悩を見てみたかったです。 ただ、普通の紙の単行本で出すには少しページ数が足らない作品を、こういった形で多少値段を下げて電子限定でも出してもらえるのは嬉しいです。 高尾じんぐさんのかわいい絵柄で、画的な情報量もちょうど良く読みやすいです。 いろんな場所や宿泊施設を巡るのが好きな方、編集者のお話が好きな方にお薦めします。
生きのびるための事務
人生を変える《事務》の捉え方・やり方 #1巻応援
生きのびるための事務
兎来栄寿
兎来栄寿
建築家で作家でアーティストの坂口恭平さん。マンガ好きにとっては『月刊スピリッツ』での連載のイメージも強いでしょうか。 そんな坂口恭平さんが、noteで執筆していた「生きのびるための事務」を『みちくさ日記』の道草晴子さんがコミカライズしたものがこちらです。 私は元のnote版を少し読んだ程度だったのですが、改めてこのコミカライズ版で通読すると本当に素晴らしい内容だなと感じると共に大きな勇気をもらえました。 皆さんは「事務」というとどういうイメージがあるでしょうか? 「メインの仕事とは別に存在する、やらねばならない多量の雑務」 「面倒くさいもの」 「堅苦しくて地味な仕事」 そんな風に捉えている人も少なくないと思います。かくいう私も、書類作成や確定申告などやりたくもない事務に時間と労力を割かねばならないのが辛く感じる人間です。しかし、この本を読むと「事務」というものの概念ががらりと変わります。 この書は、筆者が普通の就職はできず将来何をして良いのかも定まっていなかった大学4年生のときの筆者が、イマジナリーフレンドのジムを通してどうやって生きのびていけば良いのかを体得していった実体験を描いたものです。 家賃28000円の家に住み、日雇い仕事をして月給12万円ほどだった坂口さんが一体どのようにマインドと行動を変えて1000万円以上を稼ぎながら自由にやりたいことをして生活できるようになっていったのか。 ピカソやデュシャンなど、名だたるアーティストたちも事務をやりながら生きのびていっていたことに触れながら、 「≪事務≫こそが創造的な仕事を支える原点」 「≪事務≫は継続することでどんどん伸びていく」 「冒険があるところに≪事務≫がある」 「死ぬまで好きなことをやる続ける人生において、≪事務≫は好きとは何かを考える装置」 「会社設立は≪事務≫の中でも最高のブツ」 「やりたいことを最優先に即決で実行するために≪事務≫はある」 といったことを語っていきます。普通にイメージする事務とは、大分異なるのではないでしょうか。おおまかに言えば「スケジュール」と「お金」の管理こそが事務なのですが、それを具体的にどのように行なっていけば素晴らしい未来を切り拓いていけるのかが語られ、読んでいるだけでもワクワクします。 ジムは「イメージできることはすべて現実になる」と語りますが、私も他でもよく語られるその言葉は人生の指針のひとつでした。そして、そのイメージをどう具体化して実際の行動に移していくのか。そうしたところも実体験を通して非常に解りやすく記されています。 ・自己を肯定も否定もする必要はなくて、否定すべきは己が選んだ≪事務≫のやり方だけ ・才能というのは毎日やり続けられること ・≪将来の夢≫の前に≪将来の現実≫の具体的なヴィジョンを思い描き書き出し、≪将来の現実≫に楽しくないことは1秒も入れない といった部分も、とても共鳴します。 坂口さんは自身の電話番号を公開して(作中にも登場します)、自殺者を減らすための相談窓口「いのっちの電話」という活動も行っています。この本には、少々クセの強いところもありはしますが、それでもタイトルにある「生きのびるための」という部分が大きな意味を持つところもあります。文字通り、この本を読んだことで生きのびることができる人もきっといるはずです。 自分の好きなことだけをして生きていきたい人、将来何をして生きていけば良いのかわからない人にこの本が届いて欲しいです。すべては、≪事務≫のやり方で変えていけます。
「たま」という船に乗っていた
伝説のバンド「たま」が教えてくれる大切なこと #完結応援
「たま」という船に乗っていた
兎来栄寿
兎来栄寿
先日、久松史奈さんが「さよなら人類」をカバーした音源を発表しました。原曲から比べると非常にアップテンポでパンキッシュなアレンジなっており、音としては2000年前後を感じる不思議で心地よい感覚でした。その「さよなら人類」を世に送り出し一世を風靡したアーティスト、たま。 石川浩司 知久寿明 柳原陽一郎 滝本晃司 「たま現象」とまで呼ばれた社会現象も巻き起こした、空前絶後の個性の塊のような伝説のバンド。2003年の解散後に中心人物である石川さんが書き下ろした同名のエッセイを元に、原田高夕己さんが追加取材を重ねてコミカライズしたのがこちらです。 webアクションで連載され最終話とエピローグが5月31日に公開予定ですが、それに先んじてそこまでを収録した2冊目の単行本である『らんちう編』が発売となり完結までを読了しました。 私は「さよなら人類」くらいしか知らない完全に後追いの世代ですが、この作品を読むことでたまという存在の面白さや偉大さを知ることができました。これを書いている最中に「さよなら人類」や「らんちう」を聴いていたら、同じく世代ではない家族も歌を覚えて口ずさんでいました。時代も国境も人種もすべて超える音楽のパワーの片鱗を感じました。 音楽でお客さんを楽しませようとするエンターテイナー精神はもちろんのこと、音楽以外の部分でも空き缶を30000本集めたり、レンタルボックスの先駆け的なお店を始めたり、とにかくやりたいことや楽しいことを追求している石川さんの姿勢は多くの人に感銘を与えるであろうものです。たまのファンはもちろんですが、そうでない人が読んでも楽しめるであろう部分が多々あります。 バンド全体としても、たとえ舞台が武道館であってもまったく気負うことなく、紅白に出ていたときでさえ合間の時間に抜けて劇を観に行くなど、肩の力を抜いて自然体であり続ける姿勢は、何かすごく大切なことを背中で語ってくれているように感じます。 藤子Aさんチックな絵柄で描く、原田高夕己さんの筆致もまたこの作品において絶妙です。基本は親しみやすい線で読みやすく、昔の大御所作家から現代のネットミーム的なネタまで幅広く入れ込んでありユーモラス。ただ、ここぞというシーンは最上の演出でキメてくれます。1巻最後のたまがスターダムに上る大きなきっかけである伝説の「イカ天」出演時のお話や、終盤のいくつかのライブシーンなどは特に最高です。 セカンドアルバムを作る時の「国内のスタジオの使用料がバカ高いから渡航費や宿泊費含めても海外の方が安上がりなのでイギリスとフランスでレコーディングする」というエピソードや、女性ファンがメンバーの泊まるホテルを特定して、ロビーで酒を飲みながら待ち構え、本人たちを描いた18禁BL同人誌を直接手渡したという今だったら大炎上不可避案件には時代を強く感じました。価値観の変容が読み取れるところは、史料的な意義も感じます。 何事も始まりがあれば、終わりもあるのがこの世の理。たまという船から下りる人が出てくるころのお話は切ないです。日本を飛び越えてワールドワイドにも活躍したたま。その「最期」は胸に来ました。 最後のエピローグの後に、石川さんの「玄関」という曲の歌詞が綴られており、そこにある仕掛けやあとがきも含めて何とも言えない良い読後感に包まれました。 ″世の中何がおこるかわからないから 色んな事楽しみにして ニコニコゲラゲラ 笑って生きていくといいと思うよ〜!″ これからどんな風に世界が変わっていこうとも、この石川さんの言葉に救われる人が多くいることを祈ります。 たまを好きな方は読んで懐かしみ、たまを知らない方はこれを機にこんなすごい人たちがいてこんな曲があったのだということを知るきっかけにしてみてはいかがでしょうか。
どくだみの花咲くころ
言葉が無粋になる少年たちの情緒と創作 #1巻応援
どくだみの花咲くころ
兎来栄寿
兎来栄寿
筆者の城戸志保さんは2020年に安野モヨコさんの「ANNORMAL展」を見て触発されて描いたのがこの作品だそうですが、2022年の10月に四季賞でその安野さんより「絵柄やセリフ・エピソードの選び方に独創的なセンスを感じる」「無造作な美しさが個性であり武器」と講評を受け、そして大賞を受賞。そして連載化して、今日単行本1巻が発売と創作が人の心に及ぼす素敵な連鎖を感じさせてくれます。 安野さんが指摘する通り、この物語の人物の配置は少し特殊です。癇癪持ちで怖い噂もあり関わりにくい信楽くんという問題児の存在と対置される主人公の優等生・清水くんは、一般的にはマジョリティ的感性から信楽くんに戸惑う普通の人物として描かれることが多いでしょう。しかし、清水くんは勉強も運動もできるにも関わらず、お金持ちの家の息子としてやや感性が庶民からズレており、言動も信楽くんに負けず劣らず危うく突飛なところがある少年として描かれます。 そして、何より大事なのは清水くんだけが信楽くんの創り出すものに心酔し、信楽くんに神聖性を見出すところです。他の誰も知らない、世界で自分だけが知っているダイヤモンドの原石のように。狂信的になる清水くんの気持ちも、とても解ります。 清水くんは冒頭で ″俺は自覚なく信楽くんを傷つけるだろうし そうなったら信楽くんがどうなるのかわからない それはいやだ″ と客観的な視点からの自覚を持っているのですが、その気持ちの大きさ故にとてつもなく不器用になって暴走してしまうところも痛々しいほどに解ります。子供のころなんて自分の感情を上手く表現できなくて当たり前ですし、それ故に失敗することも多々ありますが、ままならない情動に苦しむ信楽くんも含めてそんな淡く苦い記憶を呼び覚まされるようです。 人間が誰か特定の個人と結びつくのはそれだけでも貴重ですが、それが双方向的に圧倒的に強く結びつく瞬間というのは、奇跡と呼んでも差し支えないものです。そんな言葉では表せない奇跡の眩いばかりの尊さが、この物語では描かれていて惹かれます。 湿った日陰で育ち、生臭い魚のような臭いから魚腥草とも呼ばれ、海外でもfish herb・fish mint・fish wortなどとも呼ばれるどくだみ。その花言葉は、「白い追憶」「自己犠牲」「野生」。仄暗さと高潔さ、危うさを含む他者との関係性と激しさが同居するようなそれらは、この作品全体のイメージとしてどくだみは非常に合っているように感じます。 ジャリジャリのミロや、アスパラのエピソードなど、独特の感性から描き出されるひとつひとつの要素も印象的です。 果たして、彼らの関係性や未来はどのようになっていくのか。言葉では何とも言い表し切れない強い魅力が随所にあり、今目が離せない物語です。 余談1 信楽、清水、瀬戸、伊賀、砥部、美濃、九谷、小鹿田、壺屋など、登場人物の多くは焼物から名前が取られています。作っては微細なコンディションの差で失敗し、壊してまた作り直す焼物もまた本作において象徴的な存在と言えるのかもしれません。 余談2 2話の最初で、教室の後ろに掲示されている書が「一意専心」はともかく「鬼手仏心」は趣深いです。九谷さんの「魁」書道バッグも好きです。
ならべ カヤック
カヤックで楽しく働く面白く熱い人々 #1巻応援
ならべ カヤック
兎来栄寿
兎来栄寿
昨年で25周年を迎えた、「サイコロ給」などで有名な面白法人カヤック。そこで働くさまざまな人や事業を、『漫画 君たちはどう生きるか』の羽賀翔一さんや『左ききのエレン』のかっぴーさん、『半人前の恋人』の川田大智さんなど、さまざまな漫画家の方々が描いたマンガです。 15周年の際に公開されたものなど一部古いものも含まれていますが、内容としては今読んでも十分面白いです。 『ことばのパズル もじぴったん』や『冒険クイズキングダム』を作った後藤裕之さんの「存在感の作り方」では、後藤さんが円周率を42195桁暗唱して世界記録を樹立したり、夏休みの自由研究で人間が100時間寝ないとどうなるかの研究を自分の体を使って人体実験した話など、突き抜けたお話がまず面白いです。 マジカルラブリーの『スーパー野田ゲーPARTY』も後藤さんだったんですね。川田大智さんが描く「スーパー野田ゲーPARTYを作った男たち」も笑いながら読みました。(『野田ゲー』の中でも邪道バースは天才的だと思いましたし、全国大会も熱かったです)。 突飛なところはもちろんですが、地に足のついたビジネス的な部分の良さもあります。 「ゲームやサイトを作るだけがクリエイティブな仕事ではない」 「メールひとつにも思いと工夫をこめれば喜んでもらえる」 という、秘書を描いたエピソードなどは社会人にとって参考になる一節でしょう。 それを体現するかのように、別の話ではユーザーからのゲームへのお問い合わせに世界観を尊重し反映した回答をするという別の社員のエピソードが描かれており、「王が履いているパンツは何色か」という質問にも極めて真摯に答えていきます。 ゲーマーならお世話になったことがあるかもしれないLobiや、e-sportsの普及に向けての愛溢れるモチベーションなども読んでいて高まります。コロナ禍でオフラインの大会が消えても、オンラインで毎週大会を行い配信をして格ゲーコミュニティを熱くし続けたなどの近年のエピソードなども好きです。 総じて、楽しみながら仕事をするということの素晴らしさ・大切さを教えてくれる掌編が詰まっています。 現在多くの電子書店で無料で全編読めるので、この機会にぜひどうぞ。
天国に生まれた僕らの話 石田ゆう短編集
今を生きる喘鳴が聞こえる短編集 #1巻応援
天国に生まれた僕らの話 石田ゆう短編集
兎来栄寿
兎来栄寿
『妄想フライデー』の石田ゆうさんが、これまで描いた短編5つを雑誌・出版社の垣根を越えて収録した短編集です。 「光のゆくえ」 やっと就職できて半年働くことを続けられたと思ったら、大規模な電波障害により街の人々と共にみんなスマホが使えなくなり途方に暮れているところで「ネットを使える場所を知っている」というバニーガールに出逢う一夜の話。 「美人は三日では飽きない。」 大学を中退し就活23連敗中の25歳フリーターで、美人にトラウマと嫌悪感を持つ青年が新たに美人と出逢う話。 第84回ちばてつや賞ヤング部門大賞。 「犬も喰わない僕」 8年ぶりに東京から帰ってきた地元で、昔馴染みの画家を目指す20歳の女の子に自分は今漫画家であると偽る天才になれないアシスタントの青年の話。 ヤングマガジン月刊賞入選作。 「彼女とわたし」 外国人のような風貌の転校生が、クラスのアイドル優子の一言をきっかけに不登校になり「魔女」と仇名されるようになって、本来カーストは下なのに優子のグループに属する主人公が同じ団地に住んでいる魔女とある契約を交わす話。 「ブルーブルースプリング」 高校卒業以来7年ぶりに学校の制服を着て遊んでいたら、夜の公園で女子高生と知り合うお話。 個人的には『コミックビーム』に載っていた「彼女とわたし」がとても好きで、去年読んだ読切の中でも特に印象的だった作品のひとつです。 かわいくて穏やかなのに端々から性格の悪さを感じさせる優子ちゃん。彼女を中心とするグループに必死にしがみつく主人公。学校生活における人間関係の息苦しさのリアルさ。脆い尊厳を容易く踏み躙られた悔しさや悲しさ。それでも、そこから始まるシスターフッドの美しさ。 写実的な画風で、全作品を通して背景や小物も緻密に描かれているのもリアルさを底上げしています。生きることに向いていなかったり自分や他人を受け入れられなかったり、それぞれに思い悩む現代の人間たち。おのおのの蟠りを煮詰めながらも、最後の「ブルーブルースプリング」と巻末のおまけで読後感はすっきりとしています。 若々しさ溢れる部分もあり、今後のさらなる活躍も楽しみになる1冊です。
回胴創世記 パチスロを創った男達
バジ絆はいかにして作られたか #1巻応援
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兎来栄寿
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『ロックンリール』や『《魔力無限》のマナポーター ~パーティの魔力を全て供給していたのに、勇者に追放されました。魔力不足で聖剣が使えないと焦っても、メンバー全員が勇者を見限ったのでもう遅い~(コミック)』の伊藤ひずみさんによる、パチスロ版『プロジェクトX』や『ガイアの夜明け』的なドキュメンタリーです。 私はパチンコ・パチスロは付き合いで5号機以降を多少嗜んだくらいですが、元々『バジリスク』の原作もアニメも山田風太郎さんも好きだったので、『バジリスク』シリーズは多少触りました。 当時は陰陽座が大好きで、カラオケでの十八番も「蛟龍の巫女」だったので、『バジリスク2』でシングル曲でもないアルバム収録曲が激アツの際に流れる曲として採用されたのは望外でした。 1/16000の白バジが揃ってエンディングまで到達し、弦之助と朧の悲痛な最期を見て泣きながら打ったのは良い思い出です。 そんな『バジリスク』シリーズの中でも人気の高い『バジリスク~甲賀忍法帖~絆』がいかに誕生したのかというエピソードからこの本は始まります。 『バジリスク2』から間も無く絵やアニメーションの素材はそこまで増やせない中で、どうやって新鮮味を生み初心者から玄人までを楽しませる台を作るのか? その苦心惨憺ぶりが描かれていきます。そこには他の分野と何ら遜色のない、モノ創りへの熱情があります。 パチスロなんて低俗なギャンブルでしょ? という人もいるかもしれませんが、絆高確はこのようにして生まれたんだなぁ、原作への愛があればこそなせた仕事だなぁとその魂の込め方に感心しました。良いものを作れば絶対に売れるというわけではないこの世界ですが、結果的に妥協せず良いものを作って広くユーザーに愛されていくようになったことは素晴らしいなと。 他にも『アナザーゴッドハーデス』、『ディスクアップ』、『ハナビ』など長年ホールで愛された名機たちの誕生秘話が記されています。このあたりの台に思い出や愛着がある方であれば尚更楽しめることでしょう。 伊藤ひずみさんの絵はスタイリッシュで読みやすいですし、パチスロを打たない方でも「こういう世界があるんだなぁ」とビジネスマンガとして楽しめる作品であると思います。
しれっとすげぇこと言ってるギャル。―私立パラの丸高校の日常―
トロッコ問題すらしれっと解決するギャル #1巻応援
しれっとすげぇこと言ってるギャル。―私立パラの丸高校の日常―
兎来栄寿
兎来栄寿
https://youtu.be/JfvbpGcwyc8?si=87H35GAwt33QJS70 ここから始まった『私立パラの丸高校の日常』。YoutubeやTikTokで人気でしたが、コミカライズもされその1巻が本日発売となりました。 本作は全員何かしらの特殊能力を持っている世界における、私立パラの丸高校を舞台にした、ゆるい群像コメディです。 元々は、ぴかるんことただ体が発光するだけの能力を持った多々光(ただひかる)が主人公でしたが、元の動画版の方でも別格の再生数を誇り大人気のギャルズがこちらのコミカライズ版では主人公のようになっています。 未来視(ヴィジョン)の能力を持つ見里未来(みさとみらい)さんと、平行世界移動(バタフライエフェクター)の能力を持つ黒髪ロングストレートギャルの「へー子」こと平翔子さん。 共に超絶チート級の能力を持ちながら、ギャル特有の異常に軽いノリが合わさって化学反応がものすごいことになっています。 2話の平行世界移動を繰り返す話での 「ここ有機生物が酸素を必要としなかった世界だ」 「えーじゃこっちのうちらなにで代謝してるん?」 「ベリリウム」 「やば 緑柱石かよ」 「まあ酸素と同じ第二周期だしね」 という会話など大好きです。「あーね」とか「が?」「が」くらいのテンションで気軽に物理法則が捻じ曲がっていくのえぐちです。 皆大好き、オタクに優しいギャル回では、マンガを描いていたクラスメイトに 「てかこれワンチャン『転スラ』に影響受け過ぎ?」 「『盾の勇者』もじゃね?」 と、異世界ものへの解像度が高く的確にアドバイスする様も激チルです。 「説ある」が「説あるコアトル」に進化するなどの語彙の無限の羽ばたきも、ギャルらしさが溢れていてエモです。更に、本作には競馬回ありホラー回あり巨女ありと、さまざまな属性の人が引っかかるフックが存在します。 作画を担当しているのが『いびってこない義母と義姉』や『通りがかりにワンポイントアドバイスしていくタイプのヤンキー』のおつじさんということもあり、ヴィジュアル的にもつよつよで、未来とへー子がより魅力的になっています。 時折捩じ込まれる『ハンターハンター』や『エヴァ』ネタも私には効きます。巻末おまけも10Pもあるので、単行本でまたじっくり楽しむのも良きでしょう。
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神々の山嶺

エヴェレスト初登頂の謎を解く可能性を秘めた古いカメラ。深町誠は、その行方を追う途中、ネパールで“毒蛇(ビカール・サン)”と呼ばれる日本人男性に会う。彼がネパールに滞在する理由とは!? そして、彼の正体とは…!? 巻末に、夢枕 獏[『神々の山嶺』漫画版によせて]+谷口ジロー[もうひとつの山嶺]収録
スラムダンク

スラムダンク

中学3年間で50人の女の子にふられた桜木花道。高校生となった彼は、ふと声をかけてきた女の子・赤木晴子に性懲りもなく一目惚れ。その「バスケットはお好きですか?」との問いに花道は…!?
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