「偶像エスケープ」感想
繊細で心に残る良作だ。ヒロインとのせつない逃避行や、ゲイである主人公の抱える孤独に胸を痛めながらも、読後感はわりと悪くなかった。そしてあらためて考える。 「正しい道」とはいったい何だろう?…おそらく主人公にとっては、父親からずっと言われ続けた、呪いの言葉かもしれないが、父からすると、まったく違う想いから発言した言葉だ。この親子の溝の一番の原因は、やはり圧倒的に会話が足りていない事だろう。 この作品に登場する人々はみなそれぞれに苦い痛みを抱えている。誰の視点で物語を読むかによって見え方も違って見えるから不思議だ。
厳格な父親の元で育った神無愛之助はその父親に反発して高校卒業後に家を飛び出し1人暮らしをしていました。
愛之助が父親に反発した理由、それは彼がゲイだったから。
父親に正しい生き方と認めて貰えなかった彼はとあるアイドルを見て漠然と、
「彼女みたいにかわいくて綺麗な女の子に生まれていたら…」と羨望を抱いていました。
しかし、そんな彼がバイト先のラブホテルで出会い頭に助けを求められたのが
他でもないそのアイドル・朝日奈花恋だったのです。
この作品はそんな出会いから始まる、それぞれの過去と複雑な思いが絡まり合いながら進む、
愛之助と花恋、2人の逃避行の物語です。
上下巻読了