
両性花~交わる運命の番(つがい)~ キラト瑠香
これもセクハラ及びパワハラなのでは?
『夫にキレる私をとめられない』や『夫を捨てたい』が世間的にも有名ないくたはなさんですが、近年はオリジナルストーリーでの開花が著しいと感じます。
並行してさまざまな作品を描かれていますが、その中でも個人的に特に好きなのはこの『フツーの恋って何?』です。
まず、表紙絵を見た時に率直に「売れ感が圧倒的に増してる!」と思いました。装画デザインの方の功労ももちろん大きいですが、シンプルに絵の引き込む力がとても増していて、中心となる3人のキャラクターたちが実に魅力的に見えます。
そして、ストーリーも「一目惚れ」を絵で語るところから始まるしっかりと質量のある百合です。
元々、家が隣同士・親が親友同士で幼い頃からずっと一緒でこれからもずっと一緒にいると思ったふたり。そこに、運命的な出逢いを果たした少女が現れて感情を掻き立ててくる三角関係を織りなしていきます。
非常に特徴的なのは、キャラクターの名前が出てこず常に代名詞で「わたし」「あなた」といった形で進行していくこと。あるはずの名前が呼ばれないという不思議な欠落があります。
代名詞は代替物、代わりがあるもの。
固有名詞は、代わりがないもの。
そのメタファー、その演出がどのように作用して、物語がどのように帰着していくのか。今、目が離せない百合です。
連載も面白く追っていますが、単行本で一気に読むと双方向的な視点が際立って改めて良さを感じました。