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今年の4月に発足したこども家庭庁によれば、
"「ヤングケアラー」とは、本来大人が担うと想定されている家事や家族の世話などを日常的に行っているこどものこと"
と定義されています。現実には数多く存在し、私自身もヤングケアラーでしたがこの言葉を知ったのも10年は遡らないほどでした。近年は少しずつ認知されてきているように思いますが、高齢化が進む社会では子供の数は少なくなりながらもヤングケアラー化してしまう子供はなかなか減っていかなそうにも思います。未来の担い手が不条理にその先の道を閉ざされてしまうことは誰のプラスにもならないので、何とか社会のシステムでケアしていくべき課題のひとつでしょう。
本作は、自身もヤングケアラーとしての経験がある筆者によって描かれるヤングケアラーたちの短編集です。1話~数話完結型で、自宅介護や病院通いなどそれぞれ異なる事情を抱える少年少女たちが描かれます。
学業やバイト、友人たちとの交遊などは著しく制限され自分が本来やりたかったことも諦めざるを得ず周囲の「普通」から取り残されてしまうこと。元々は大好きだったはずの人が認知症の進行によってその優しさや知性や尊厳をみるみる失っていってしまい、あまつさえ自分へ加害するようになってしまったときの言葉に表せない絶望感・虚無感。子育てと違って終わりの見えない状況の中で痩せ細っていく思考力や判断力。閉ざされた将来への不安。そういったことに対する理解を得るのが経験者でないと非常に難しいという側面も、丁寧に描写されています。
そしてまた、そんな状況で人生において金輪際関わりたくない(しかしながら関わらざるを得ないことがまた多大なストレスを生む)と思うような親類が存在することの苦しさも生々しいです。
ただ、そんな中でも同じような経験をしている人や暖かく手を差し伸べてくれる人も世の中にはいるのだという大事なことを伝えてもくれます。現代社会の暗部が描かれていますが、決して辛く苦しいだけではなく希望の光も見せてくれます。
今現在も苦しんでいる人は多くいると思いますが、そういった方々には頼れる人やものには頼って欲しいですし、そういう道もあるのだと気付かせてくれる作品です。渦中にあると、心身の疲弊で正しい判断を下したり新しく誰かに会ったり何かをしたりする気力体力がないということも往々にしてありますが、だからこそ自分が壊れるという最悪の結末を迎えないように自愛して欲しいです。
相葉キョウコさんの絵が美しくかつ読みやすいのも特筆すべき点で、10代が背負うには重すぎるものを抱えた心情もよく伝わってきます。
ヤングケアラーという言葉を知っている人も知らない人も、当事者もそうでない方も読む価値のある作品です。
あるべき瞬間を然るべき場所で過ごせない十代の若者、子供たち―― 「私は透明に映る病なの……!?」 誰の目にも留まらない私は、いま高校三年生。愛と心理のEvangelist相葉キョウコが贈る珠玉の短編3テーマ、5話収録。
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