「家族」によって押し込まれ、ねじ込まれ、見放され、将来の蓋を閉められたある女の物語。 「ギリギリの正気と生命を保っているだけでも心の底から凄い」と思ってしまう程の極限とも言える理不尽な精神・身体への暴言・暴力(精神的虐待・身体的虐待・性的虐待)を「家族(および近親者だった人)」から受けている女性の主人公が、親族同様に自分勝手に生きようとせず、理性・常識性をギリギリに保ちつつも狂いきってしまわないどころか、そこかしこに自分を責めてしまうほど脆い心を持つ上、家族がクズになり下がるほど歪んでいようとも、家族との縁を切りきっていないところは読んでいて苦しかったです。 主人公が抱える怒りは、途中までは各々が努力して上手く機能していた家族が有る出来事を発端に崩壊した事に依るものです。 主人公が抱える「家庭崩壊のトラウマ」や「信じて居た者からの裏切りと置き去り」によって湧いた怒りは、幼少時~少女時代に家族から与えられていた「一家の誇り」と「幸福」の記憶が残っているだけに性質が悪く、その感情がコントロール出来なくなった時に、主人公自身もまた暴言・暴力を弱き立場になった者へと振るう…あれほど忌み嫌っていたにも関わらず。 モノクロ(ほとんど白い背景)で構成されたシンプルな作画である一方、チクチクする感覚と、ガンガンと殴られる感覚が半端ないです。 かきおろしパートでの主人公の言葉は何度読み返しても「経験した人にしか口に出来ない言葉なのだろう」「現代の悲惨な精神構造がここにある」と感じてしまいます。 ニーチェが指摘した「奇妙な自己虐待の本能」、あるいはフーコーが言った「生-権力による自己監視システム」の苦しみが、本作ではこれでもかとばかりに描かれている…そんな漫画作品です。 重すぎる上に辛すぎる機能不全家族漫画ですが、私は思うところがあってたまに読み返しています。
@名無し

いい感想だ

「世代を越えて引き継がれてしまう負の連鎖」を描いた機能不全家族漫画にコメントする
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先生の子を妊娠しました

不朽の名作が電子で復活 #1巻応援

先生の子を妊娠しました
兎来栄寿
兎来栄寿

きづきあきらさん&サトウナンキさんの過去作品『いちごの学校』が、改題され電子書籍として刊行されました。 きづきあきらさん&サトウナンキさんといえば、人間の闇や病みを描くことに定評のあるコンビで私は名前を見掛けたら必ず作家買いするほど好きです。代表作は『ヨイコノミライ』や『うそつきパラドクス』などが挙げられると思いますが、場合によってはこちらを最高傑作と推す人もいるほどの名作です。 改題された新タイトルの通り、本作は女生徒が先生と関係を持ち子供を孕んでしまう物語です。一般的な恋愛マンガでは、男性教師×女生徒という組み合わせはそれなりにポピュラーなジャンルです。しかし、本作の場合はそれが非常にリアルで重いものとして描かれます。 特に印象的なのは、女生徒を妊娠させた主人公の「責任」。「責任を取る」と口で言うのは簡単でも、実際にそうなってしまった時にどうするのが「責任を取る」ことになるのか。相手に対して、相手の親に対して、自分の親に対して、学校に対して、同僚に対して、生徒に対して、そして自分の子供に対して。 愛する気持ちがすべてに勝る甘美で絶対的なものだったとしても、その先にある果たすべき道義や免れない誹りと向き合った時に、生身の人間はどうしたって削れます。現実がそれほど容易くないことを、重みを持って描いています。 主人公が受け持つ現国のテストのように曖昧な部分はあったとしても、それでも学校のテストには答があります。しかし、人生には定型の答はありません。幸せとは相対比較したり誰かに決められるものではありませんが、それでも愛する人と結ばれ愛する人との間の子を授かった彼らが、本当に幸せと言えるのだろうかと考えずにはいられません。 引用される『星の王子さま』や『ひかりごけ』やボードレールなども人によって解釈が様々に分かれる作品であり、そのことを一層強調しているように感じます。 1話ラストの ″自分の命が自分のために存在しなくなった とりあえず今 それだけはわかるんだ″ というモノローグが昔からとても好きでしたが、かつて読んだときよりも実感を伴っています。 余談ですが、甘々な夫婦生活部分と学生時代のツンツンな時の対比をシンプルなラブコメとして描いたら今のTwitterではバズりそうだなぁと詮無きことを思いました。

だれもこりない
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