作品タイトルは、誰が口にした言葉なのか。
癇癪を起こしやすかった我が子。 子育てに夫婦ともに疲れ始めた頃、夫はカルトに傾倒し始めた。 離婚して、シングルマザーとして、中学生の子供を育てている主人公。 主人公は、それぞれのご家庭に少しはありそうな要素がギュギュッと詰め込まれた設定。 離婚したことで、周りの人々がいう言葉が嫌味に覚える。 離婚したことで、年齢に引けを取りつつもお母さんでなく女としての気持ちも揺れ動く。 等身大の、身近にいそうな女性設定。 子どもは手が離れ始める年齢のせいか、主人公はあまり子供を構ってあげられていないように見える。 反抗期だから、構ってあげても大変なんだろうか。 サトルくんなのに、学校が同じだった人に「親がカルトにハマったカトルくん」なんて呼ばれて辛い思いをしているとは、きっと言われるまで気づかないんだろう。 自分の悩み、子どもが抱えている悩み、人付き合い。 生活していると浮上してくる様々な悩みが平行して描かれる。 そして、表題。 誰が口にした言葉なのか。 みんな「わたしが誰だかわかりましたか?」と聞いてきていそうな気がしてくる。 なんなら、主人公も言ってそうな気がしてくる。 最終章で、仕掛けがわかったあとに残る疑問は、主人公が「わたし」の正体に気づいていたかどうか。 わかっているとにおわせる章タイトルや行動だけど、正解を掴んだかどうかは語られない。 読者は「わたし」の正体を知ることができるのに、彼女が、かつてやりとりしていた相手が本当は誰か知っているかどうかは、わからない。 あとがきの前のピアスの写真が、誰かを愛する「女」であること、あったことを想起させて、なんとなく好きだ。 このコミックが出された「シリーズ 立ち行かないわたしたち」はコミックエッセイとセミフィクションのシリーズとあるのだけど、なるほどねと思ってしまった。 たしかにうまく行かないことはあるし、完全なノンフィクションのように劇的なスッキリとしたラストでもない。 モニャモニャしてしまう。 こういうのが、レタスクラブ読者に共感を呼びやすい内容と展開なのだろうか。 とはいえ、どうなったらスッキリとする展開なのかと言われると、悩ましい…。
恋愛、子育て、仕事、友人関係に悩むシングルマザーの等身大の人間ドラマ。プラス、ミステリー要素があるのが面白い。
主人公はアラフォーのシングルマザー・海野サチ。
毎日毎日仕事に追われ、家に帰れば思春期かつ反抗期の息子がいる。女友達もなんだか優しくない。
変わり映えのしない日々を送るサチだったが、会社のパーティーで出会った男性・川上樹と意気投合。
恋の予感に胸を躍らせながら、毎日毎日メールのやりとりをし始める……。
この作品の魅力は、良くも悪くもサチが等身大の人間として描かれているところ。
友人に対しても息子に対しても鈍感で無神経な発言を繰り返すけれど、自分に対する悪意には敏感。
久しぶりの恋に浮かれてしまうのも、自分の弱みを隠そうとするのも、人間としてめちゃくちゃリアル。
人間のちょっと醜い部分が誇張なしでしっかり描かれている上にミステリー要素がプラスされているので、イヤミスを読んでいるかのようなハラハラドキドキ感がある。
レタスクラブ公式サイトで先行配信されているけれど、レタスクラブに縁がない層にも読んでほしい。