兄の存在感が強すぎる
あだち充先生の初期の絵柄が今と全然違ったのがびっくりです。それは当時の流行とかを取り入れて反映していたからと書いてあり、巨匠作家にもいわゆる下積み(というのか?)時代があったんだな、と。 あだち充物語と謳っていながらお兄さんの存在感の強さ半端じゃないですよ。もはや主役。実際にこの人無しでは今のあだち充は生まれてないんでしょう。きっと。
ミッツあだちことあだち充先生のこれまでを、お兄さんであり、ご自身もマンガ家であるあだち勉先生がマンガにされたものです。
マンガ家マンガが大好きなので、これもすごく楽しめたのですが、それをヌキにしてもこの作品は面白かったです。少し赤塚先生風のタッチで、時折書き込み多めの真面目な感じを交えつつ、キレのあるギャグがとても楽しかったです。
ものすごく失礼なことにあだち勉先生の作品は、これまで読んだことがなかったのですが、こういうことであれば、先生の他の作品にも余裕があれば手を出してみようかなと思いました。
しかも、充先生の未発表短編であったり、COMに投稿したときのCOM誌面だったりといった一級の資料が収録されているので、資料としても貴重で、ご家庭の書棚に一冊おいておいても決して損のない仕上がりになっていると思います。
最後おまけで充先生によるアンサーマンガまで収録されています。
戦後マンガ史の頂点に立つ偉大な弟を持ってしまった兄が、涙と笑い、優しさと、微かな嫉妬の情で綴る、生きたマンガ史。