自分探しの旅・・
ジョゼフィーヌ!で話題になった、ペネロープ・バジュ―さんの作品で 記憶を失った女性が「自分が何者なのか」自分探しをしていくお話。 自分が記憶をなくしたことに気づいたら、エロイーズのように自分探しをしようと 考えるだろうか・・。ひたすらパニックになってそう。パリの女性は精神が強いのかしら 個人的にはジョゼフィーヌ! の方が好みかも。
ある夜、パリの街の、とある路肩のベンチに座っていたエロイーズは、ふと気づくと記憶を失っていた。 自分が誰なのか。 なぜ記憶を失ってしまったのか。 いっこうに思い出せない彼女は、自分のことを調べはじめる。 そんなエロイーズに待ち受ける答えとは? 今、本当の“自分探し”の旅がはじまる――。
本作、ベンチに座っていたエロイーズがふと記憶喪失になっていたことに気付くシーンから始まるのですが、その自然さがなんだか巧みで、ピンク色のカラートーンとともに強く印象に残っています。
メインとなるストーリーラインはサブタイトルにもある「本当のワタシ」探し。
少ない手がかりを元に記憶を失う前の自分がどんな人間だったのかを調べていく…と書くと壮大なミステリーやサスペンスのようでもありますが、そうそう大変なことが起こるわけでもないのが人生というものかもしれません。
どこにでも居る女性だった(と思われる)エロイーズ・パンソンの身の回りも、世の人のご多分に漏れずありふれた出来事ばかりだったようで、一生懸命過去の自分の身辺調査を行うほどに些細でちっぽけなことばかりが判明していきます。そのようすは親近感やおかしみと同時に、どこか空虚さというか、切なさも感じさせたり…。
「記憶を失う前の自分ってどんな人間だった?」というのを入り口に「そもそも根本的に自分ってどんな人間なんだろう?」という二重の意味で「本当のワタシ」を探すことになるのが妙味です。
そんな深いテーマもありつつ、バンドデシネとしてはかなり読みやすい部類に入ると思います。エロイーズのちょっとした仕草がどれもかわいかったり、普段縁遠いフランスでの「フツーの」暮らしが垣間見えるだけでも面白いので、読む機会があれば気軽に手に取ってみてほしい一作です。