これはホラーなのかギャグなのか。思わず笑ってしまうけど、笑えない。面白いけど不安になる作品が詰まった短編集。

うまとし
「男同士で結婚して何になる。子どもはどうするんだ」に対する完璧な答え。
瀕死の恋人と雌の馬を繋いでケンタロウスにしたら結婚もできて子どもも産まれてこれ以上ないハッピーエンド。
なんて納得できるわけないけど子どもが可愛いからどうでもよくなるあたり人間味あるようなないような。

・押し人
埋葬に関する法律が改正され、押し花の要領で死体を飾る「押し人」が流行した未来のお話。
じいちゃんの死体まじ映え〜リビングに飾ろ〜みたいなノリ。
故人を偲ぶ気持ちがあれば形はどうであれと思うけど、流行が廃れて残るのは死体が飾られたリビング。
弔いとか何それ?な世界観でも死の禍々しさは変わらないんだなあ、と。

マリオネットイズム
不慮の事故にあったアイドルが奇跡の復帰。
しかしそれはクローンで、本体は頭と脊椎だけになって培養されている状態。
偽物が生まれたら本物が消えるわけではなく両方存在していたら、アイドルとして生きているのが本物…?
本物は偽物の体を奪って本物を取り戻そうとする、ってやっぱりどっちが本物なんでしょう。
まあアイドルなので見たい姿を本物だと思えばいいか。

などなど。

考えすぎるとしんどくなりそうなので表面の楽しさだけを掬って読むようにしたけどそれでも抉られること間違いなし。
笑えて笑えなくて不気味で不穏で面白い短編集でした。

読みたい
じゃあ、あんたが作ってみろよ
アップデートというよりも根本のお話
じゃあ、あんたが作ってみろよ
野愛
野愛
見た目も収入も申し分ないけどモラハラ気質で古い男が、恋人にフラれたことをきっかけに自らをアップデートしていくストーリー。 恋人が仕事終わりに作ってくれたご飯に、色味がどうだ出汁がどうだバランスがどうだとケチ(アドバイス)をつけ、そりゃプロポーズしてもフラれるわ!ざまあみろ! と思うものの、ちゃんと傷つきちゃんと学ぼうとする姿を見るとだんだん応援したくなってくる。 そして変わろうとするのは何も男ばかりじゃない。勝男をフった鮎美も、自分が本当に好きなものを見つけ人生を変化させていく。 読んでいくと2人はお似合いのカップルだったんだなあ、と皮肉じゃなくて本当に思う。 理屈じゃなく惹かれあった男女が、結婚という目的や男と女という役割に縛られてお互いが見えなくなっていく、なんて悲しい話。 そうさせているのは世間の空気や常識や今まで歩んできた人生など要因は様々だけど、「わたし」と「あなた」だけをしっかり見ていれば起こらないはずなのになあ……。でもそれが難しいんだよね。 勝男と鮎美の人生が再び交わるかどうかはさておき、2人もわたしもみなさんも、自分と相手の好きを大切にして人間関係を築いていけたらいいなと思った。
ストアに行く
本棚に追加
本棚から外す
読みたい
積読
読んでる
読んだ
フォローする
メモを登録
メモ(非公開)
保存する
お気に入り度を登録
また読みたい
笑えて笑えない短編集にコメントする