人気TCG「カオス」に存在する激レアカード「大魔道士サガン」を偶然手に入れたことで周囲から狙われ始めた水見まなみ。
初心者がルールを学びながらライバルたちと競い合うというカードゲームモノの王道ストーリーを少女マンガでやっていく意欲作…ということなのでしょうが肝心要のゲームのクセがすさまじく強いです。
カオスの基本ルールは
・山札からカードを引きプレイヤー間で攻撃と防御を交互に繰り返す
・ポーカーのようにカードを揃え完成した「役」の点数を競い、持ち点を削り合う
とかなりシンプル。要は相手の攻撃手をかわしながら強い役を生み出すカードを手札に揃えるのが目的のゲームです。
なのですが、この「役」の作り方がすごい。
このカオス、カードの種類が多すぎるのかどうもプレイヤーが把握できない役が存在しているらしく、そういう役が「できたっぽい」となったときは相手に対して役が成立してそうな理由を「申告」していくのです。他にもカードの組み合わせによって相手の攻撃をジャミングしたり自身のカードパワーを上げる際もその裏付けを「申告」するシーンがみられます。
この「申告フェイズ」こそカオスの最大の特徴であり醍醐味です。ノリが砦を守る翼竜に勢いで回避確率を付与してた初期遊戯王ぽくて本当に好き。
ちなみに『カードの王様』では高難度の役や複雑な攻防が発生した際は必ず審判が「アリかナシか」を判定するので実は遊戯王より公平かもしれませんね。
序盤から「ルールにない事態が起こったときはカードの表示に従います」「人を納得させられれば勝ちってカンジかな」など迫力のパワーワードが繰り出され、カードゲーマーほど面食らうかもしれません。けどめちゃめちゃ面白いです。
悪く言えば「言ったもん勝ち」のゲームの何が楽しいんじゃと思うかもですが、申告フェイズに至るまでの心理描写、伏線となるキーカードの提示、キャラクターのプレイスタイルがしっかり描かれているので意外なほど自然に盛り上がって読めてしまう。やっぱりカードゲームって勢いが大事なんですね。
カードゲームモノのストーリーラインに少女マンガらしい恋愛模様が絡んでくるのも新鮮で、とりわけ主人公のまなみちゃんがクズカードなんて無い・好きなカードで戦う・カードとの絆を信じるなど不動遊星もかくやと言う主人公ヂカラを見せつけてくれるのです。
カードゲームマンガで一番強いの、一番カードを楽しんでるひとだから……。
最後に私が最も共感できた“サラマンダー”立花剛のセリフを貼っておきます。カードゲーマーの人にも自信を持っておすすめできる理由がこれです。全部正しい。