マンバ1年以上前編集1 はじめに 2009年2月、村上春樹はエルサレム賞の受賞挨拶で「もしここに硬い大きな壁があり、そこにぶつかって割れる卵があったとしたら、私は常に卵の側に立ちます」(*1)と宣言しました。「壁」と「卵」のメタファーに関して、彼はつぎのように説明しています。 こう考えてみてください。我々はみんな多かれ少なかれ、それぞれにひとつの卵なのだと。かけがえのないひとつの魂と、それをくるむ脆い殻を持... 続きはこちら 記事の感想はコメント欄にどうぞ!0わかるfavoriteわかるreply返信report通報
竹崎 伸司1年以上前本作のレビューでは、村上春樹のエルサレム賞受賞の卵と壁についてのコメントから、壊れやすい卵(人間)を、無慈悲なシステム(壁)から守るため、物語は語られるとの視点から、弱い人間を擁護する物語として、村上かつらさんの『淀川ベルトコンベアガール』が紹介されました。未読だった自分は慌てて、電書で全3巻を買い、直ぐ読み通しました。 高校に行かず豆腐工場で働く16歳のかよ。有名私立高校に通う中流家庭の那子。同じ高校のお嬢様で、那子も属するグループを率いる女王然としたエリカ。同世代の友達が欲しくてたまらないかよの工場に、アルバイトとして那子が入ってきて、物語が始まるのですが、経済的に大きな差はあれど、どの人物もそれぞれの事情を抱えており、過酷ともいえる現実の中でもがく彼女たちを安易に裁くことなく、作者のそれぞれの生への温かい眼差しが感じられる良作でした。 様々な危機を迎える終盤に対して、どの人物に対しても前向きで希望をもたらす変化や展望を与えるラストは清々しかったです。 批評が作品へと導く役割を担うものであるなら、本レビューは良い作品へと自分を引っ張ってくれました。 マンバ通信壊れやすい卵のための21世紀マンガレビュー 村上かつら『淀川ベルトコンベア・ガール』36わかる
1 はじめに
2009年2月、村上春樹はエルサレム賞の受賞挨拶で「もしここに硬い大きな壁があり、そこにぶつかって割れる卵があったとしたら、私は常に卵の側に立ちます」(*1)と宣言しました。「壁」と「卵」のメタファーに関して、彼はつぎのように説明しています。
こう考えてみてください。我々はみんな多かれ少なかれ、それぞれにひとつの卵なのだと。かけがえのないひとつの魂と、それをくるむ脆い殻を持... 続きはこちら
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