ネタバレ
名無し

「食べること」が「生きること」であるのは自明だ。けれどこの時代ほど、それが密接な関わりをもっていると理解できることがあるだろうか。いや、ないだろう。
本作は江戸時代の極楽長屋に暮らす牢人が飯を作る話だ。作ったものをつまみ食いされ、人からもらったもので料理をつくり、共に飯を食う。ときには人殺しの現場に出くわして、子供を拾って、飯を与えもする。
そこには「人」と関わりがあり、「食」があり、「死」があって、「生」がある。人が死ぬ時代でなければ描けない「料理漫画」があるのだと新鮮な気持ちで、読むことができた

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堤鯛之進 包丁録

食べて、働いて、生きる。古来から変わらぬ人の営み

堤鯛之進 包丁録 崗田屋愉一
兎来栄寿
兎来栄寿

歴史サスペンスハートフル疑似家族グルメマンガ。一冊の中に色々な要素が詰まっていますが、冒頭で梅干しと鰹節を煮て煎酒を作るシーンに象徴されるように江戸を舞台に非常にシズル感の高い食のシーンにフィーチャーした作品です。 実際に17,8世紀に記された『料理山海郷』等の本の記述にあるレシピを元に、服より食に財を注ぐ主人公が料理の腕を振るっていきます。鰯を煮詰めたり、柿の美味しい調理法を語ったりする時の生き生きとした雰囲気に、読んでいる方もワクワクしつつお腹が鳴ってきます。崗田屋愉一さんの高い画力と語り口のハイブリッドによりあまりにも美味しそうで、メシテロ的な意味で暴力的とすら思います。 そして何より 「ごちそうさまでした これで今日も生きられます」 と、主人公が味を隅々まで堪能した後に食べた命に手を合わせて感謝をする姿に心が洗われました。ああ、良いマンガだな、と。 中盤で事件が発生し子供を預かることになるのですが、躾の様子も微笑ましく、頷く所もあり、子を育てるという営為も加わってより「人が生きる」姿とその良さをありありと描いた作品であるなと感じられました。 『極楽長屋』と同じ舞台で同じキャラも登場しますが、こちらから単独で読み始めても一切問題ありません。癖はありながらも、皆気立ては良い長屋の人々も魅力的です。 全1巻なのが勿体なくもっと長く読んでいたくなる良いマンガです。

堤鯛之進 包丁録

つつみたいのしんほうちょうろく
最新刊:
2021/02/24
つつみたいのしんほうちょうろく
堤鯛之進 包丁録 極楽長屋編
堤鯛之進 包丁録 江戸料理編
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