30年以上の積み重ねが生んだ精緻なアイヌ漫画にイヤイライケレ
アイヌというと皆さんはどんなイメージを思い浮かべるでしょうか。近年ではゴールデンカムイやうたわれるもの、咲-Saki-といった作品で興味を持つ方も増えていると思います。 そうして少しでもアイヌに興味がある方にぜひ読んで欲しいのがこの一冊。筆者は30年以上前からアイヌの漫画を描きたいという想いを持っており、それが遂に結実したのが本書です。 1話10ページ前後の短編で、様々なアイヌの風習や文化、日々の営みが紹介されていきます。アイヌ式の求婚や犯してはならないタブーなど、今まで知ることのなかったアイヌにまつわる知識が得られます。特に丁寧に数多くルビが振られたアイヌ語は沢山学ぶことができます。 アイヌの歴史は悲劇の歴史でもあり、アイヌへの差別などについても意志を持って触れられています。元々、アイヌではなく知識も全然無かったという筆者が、それを自覚して真摯にアイヌについて長年調べて学び、蓄積していった膨大な知識が漫画という形に昇華されています。 私はかつて阿寒湖に行った時にアイヌコタンに入りカルチャーショックを受けましたが、この本を読んだ後に行くとまた違った視点から見ることができそうです。 これだけ高純度でかつ読み易いアイヌの本もなかなかないのではないでしょう。読んでおいて損はない一冊です。