ガサツな線の集積が逆に功を奏している
例えば、小畑健の様な卓越した絵柄で同じ面白さが獲得できただろうか?もしくは、高橋留美子の様な可愛いらしい絵柄だとどうか?また、萩尾望都の様な豪華絢爛な美しい絵では?はたまた、諫山創の様なバトル漫画でしか機能しないタイプの粗さでは?この作者は確かにまだ、技術は拙いが、どこか主人公の青臭さ満載の行動や表象と、筆者のガサツな青臭さ、技術不足が妙にマッチしていて、(たかだか漫画の絵)にも関わらず、ここまで重苦しい痛みが、紙面を越えて我々の肉体に突き刺さる。内容が重いから苦手などという愚かな感想は置いといて、ここまで重苦しさを線の集積で伝えられるのはしっかりと評価しなければならないのではないだろうか?
親友のマリコが死んだことをニュースで知ったシイノトモヨ。
子供の頃より虐待を受けて育ったマリコは自殺をした可能性が高く、葬式もまともにしてもらえない。そんなマリコに自分が何ができるかと考えた末、トモヨはマリコの父親から遺骨を奪い、逃げた。
家に行ってから逃げるまでの一連の流れがすごい。地獄からマリコを救ってやるという主人公の想いが爆発するシーン。
また、こうなる前にマリコを助けてあげられなかった負い目もあり、すこし血迷ってしまった感もあるが、トモヨにとってマリコはどういう存在だったのかが伝わる。
マリコの家から逃げたところで一話目が終わるが、このまま遺骨を抱えてどこへ行くのか…
「2人」の逃避行の続きが早く読みたい。