神話のような、人の話
表題作を含めて不思議な話が多い。ただ、共通して言えるのはどれも「人」の深い深い奥底にある、なにかを汲み上げて創られているということだ。 それは劣等感かもしれないし、憎悪かもしれない。寂寥感かもしれないし、愛情なのかもしれない。どれとはハッキリとせず、混ざりあっている曖昧模糊としたものに響く。「半神」は静かな部屋の中、ひとりきりで読みたい。
双子の姉妹ユージーとユーシー。神のいたずらで結びついた2人の身体。知性は姉のユージーに、美貌は妹のユーシーに。13歳のある日、ユージーは生きるためにユーシーを切り離す手術を決意した……。異色短編「半神」、コンピューターが紡ぎだす恋の歌と夢「ラーギニー」、植物惑星オーベロンでの男女4人の一幕劇「真夏の夜の惑星」など香気あふれる傑作ストーリー全10編。
この、たかだか十数ページの短編マンガに、いったいどれだけのものが詰まっていることだろう。
これは単なる痛々しげな物語や寓話のたぐいではけっしてない、そうと呼ぶにはあまりに多くの、わたしたちの身に毎日のように降りかかっている事態が描かれすぎている。そう、わたしたちは誰も彼も半神である、それ故にもう半神を探し求めて人生をあてどもなく彷徨する。そして、半神ではない何者かのことを古代の哲学者は神と名付けたのである。