どろろ

最近もなにかと話題の作品ですが、ちょっと待ってください!!!!

どろろ 手塚治虫
酒チャビン
酒チャビン

1967〜1968年に週刊少年サンデーに、その後1969年に冒険王にて連載された作品。サンデー時代は「暗い」という理由で打ち切りになったようです。 なぜか手塚治虫先生の代表作の一つっぽく扱われることが多いのですが、自分自身(ヅカラーです)はそこまで好みではありません。 2000年代に入ってからも、2度の小説化(2001、2006)、ゲーム化@PS2(2004)、アニメ化(2019)、映画化(2007)、舞台化(2004、2009、2019)と、ひくて数多のメディアミックス王となっています。 そして2022年12月になんとタテヨミマンガとしてリメイクされ、日韓同時配信開始とのことでしたので、再読しました。 https://tezukaosamu.net/jp/mushi/entry/26314.html ストーリーは、戦国時代に、父の天下統一の願いと引き換えに魔神の生贄とされた主人公(百鬼丸)が、失われた自己の48個の体のパーツを取り戻すため、48匹の妖怪を倒す旅に出るというものです。 つくりは、基本的には1匹とのバトルを1週〜数週で描くのの繰り返しで、いわゆるバトルものの王道ともいえるものになりましょうか。ちなみに百鬼丸は拾って育ててくれた医者に、ピノコ的な魔改造を施され、失ったパーツの各部分に武器(剣や爆弾など)を仕込まれており、それらを駆使して敵と戦います。 ヅカ先自らお認めになられてるとおり、水木しげる先生の各種妖怪もののヒットに触発されて生み出された作品とのことですが、正直手塚先生にこういった王道バトルものは向いてないように思われます。 各種メディアミックスの影響や、あたかも先生の代表作かのような扱いで誤解してほしくないのですが、手塚先生の作品に興味を持つことがあったら、個人的には、絶対にどろろからは読んでほしくないです!!!火の鳥やブラックジャック、ブッダ、きりひと讃歌、奇子、陽だまりの樹、アドルフに告ぐあたりがまだでしたら、そちらの方を先に読んでほしいです!!!! もし「どうしてもバトルものが読みたいんだ!!」ということでしたら手塚先生の作品ではなく、宮下あきら先生の「魁!男塾」にしてください!

総員玉砕せよ!! 他 【水木しげる漫画大全集】

これほど濃厚な味のする、淡々と進行する漫画はない

総員玉砕せよ!! 他 【水木しげる漫画大全集】 水木しげる
完兀
完兀

『総員玉砕せよ!』は巨匠・水木しげる先生が自身の戦争体験を基に描き切った長編戦記漫画だ(※新装完全版を読んでのクチコミです)。 等身大の兵隊さんたちの日常が淡々と描かれる前半から、その淡々さはあまり変わらないまま物語のトルクは増していき、やがて感動的というにはあまりにも悲しく、あまりにも空しい結末を迎えて話は終わる。私はこれを読み返す度に泣いてしまう。 巻末の筆者あとがきで「九十パーセントは事実です」と物語の最後を脚色したことが語られ、寄せられた解説ではそのことについて「(ラストのフィクション化によって)”事実を超える真実”を描くことに成功した」と評される。 とても同意できるのだが、私としてはあのラストは水木先生にこみ上げてくる”わけのわからない怒り”を最も強く紙にぶつける挑戦であり、戦死者の霊たちがさせた仕業ではないかと思う。そしてそのラストが”わけのわからない怒り”をどれだけ昇華させることに成功したかはわからない。確かなことは、強烈な読後感を読者に与えてくれるということだ。     ラストも印象的だったが、天国のようなところだと作中で触れられる舞台の美しい背景、とりわけ数度あらわれる鳥と花、及び天から射す光が印象的だ。 どれも日本人の想像する天国と結び付けられる存在なのだが、そういった観点で、鳥は物語から姿を消すタイミングが、花は背景に現れるタイミングが、天から射す光はコマとして使われるタイミングがなんとも思わせられる。特に花は、水木先生が大胆に意図して配したフィクションではないかと考える。泣けてくる。         それからこの作品と一緒に、ズンゲン支隊に関するNHKの戦争証言アーカイブの視聴も薦めたい。 水木先生の生証言は当然だが、堀亀二さんの証言なんかも必聴ものだろう。印象深いキャラクターである中隊長の下で戦争を過ごしたズンゲン支隊の生存者だ(1965年にズンゲン支隊の本を出版されてもいる。水木先生も資料としてあたったかもしれないが、この本は簡単には手に入らなさそうだ)。 最後に、些末な不満点が一つある。新装完全版『総員玉砕せよ!』はなぜ文庫サイズで発売されてしまったのか。同時期に出た『漫画で知る「戦争と日本」』と同様のA5サイズだったらどれほどうれしかったことか…