そんなヒロキも異世界へ

『ソウナンですか?』のタッグが描く異世界マンガ

そんなヒロキも異世界へ 岡本健太郎 さがら梨々
六文銭
六文銭

飛行機事故で無人島に漂着してしまった女子高生たちの、本格的サバイバルを描いた名作『ソウナンですか?』のタッグが今度は異世界ジャンルに。 大分、方向転換されたなと。 特に原作者である岡本健太郎氏は『山賊ダイアリー』なども手掛けており、リアルで生々しい世界の知識や描写が持ち味だと思っていたから、正直びっくりしました。 さて、その内容ですが、ブラック企業に勤めていた主人公は、異世界へ・・・と、ここまではいつもの異世界系のテンプレ。 (主人公がそのテンプレを理解しているのはいつものと違いますが) 主人公は、エルフのミリアを指導者に、そこで魔道士として修行をしていくという展開。 異世界系としては奇をてらっていない、ど真ん中の作品とも言えるのですが、これがなかなかどうして面白い。 自分自身、前作の『ソウナンですか?』は、随所に大笑いではないがクスリと笑えるギャグ要素とかわいいキャラが相まって魅力だと感じているんですよね。 本作も、著者独自の異世界のおもろい設定(魔法は耳からでるとか)や、前述のミリアや竜人ソフィーなど、異種族のかわいいキャラたちが、ジャンルが違えどテイストやノリが同じで楽しめました。 まだ2巻時点ですが、ブラック企業で 「代わりはいくらでもいる」 と言われていた主人公。 異世界で魔道士としてどう変わっていくのか。 また、この異世界の中でも戦争など緊張感のある展開も少しずつでてきて、今後もストーリーが楽しみな作品です。

まほろば小町ハルヒノさん

「奈良マジエモい部」、私も入りたい #1巻応援

まほろば小町ハルヒノさん ユウキレイ
兎来栄寿
兎来栄寿

現住所は東京ですが、魂は奈良県民なので全力で推したい作品がこちら。 「倭まほろば郷土研究部」、通称「奈良マジエモい部」の活動を通して、奈良の歴史や現在の見どころ、名産やグルメなどを楽しく知ることのできる4コママンガです。 ヒロインの春日大社の神鹿が化けた姿であるハルヒノさんは、ウマ娘ならぬシカ娘といった風情(不敬)。普通の人には人間にしか見えないハルヒノさんですが、東京から転校シてきた主人公の中西ちあきくんにだけは本来の姿に見えてしまうところからふたりの少し特別な関係性も始まりほんのりほんのり進展していきます。 最初は基本を押さえて奈良公園や東大寺などの超有名どころから始まりつつ、ならまちミジンコブンコのスパイスカレーなど近年人気のスポットも登場。 「斑鳩、明日香、吉野もお薦めだぞ」 と、私の故郷である吉野を推してくれるハルヒノさん、推せます。 十津川の谷瀬の吊り橋は高さ54mで全長は300m近く風の強い日には渡るのもかなり怖いですがDQウォークでもランドマークに指定されたところで迫力満点ですし、1巻後半でフィーチャーされる洞川は街全体が昔ながらの温泉街の独特の雰囲気が強く漂っていて素晴らしいですし、作中で描かれる面不動鍾乳洞はRPGのダンジョンのような風情もあってライトアップは綺麗ですし何よりそこに辿り着くために乗るトロッコが非日常感満載で楽しいところなので、ぜひ一度観光に行ってみて欲しいですね(饒舌早口)。 4コママンガですが、1ページまるまる使ったワイドタイプであり背景がかなり精緻なので、舞台探訪欲を掻き立てられます。実際に現地に行ってみたら、ほぼ同じ景色が広がっているので感動することでしょう。 1300年の歴史を身をもって知るハルヒノさんがガイドしてくれる奈良紀行は、とても豊かで楽しい学びです。逆に、そんなハルヒノさんが現代文化に触れるときのギャップの面白さも良い感じで描かれています。 魂が奈良県にある方には問答無用で、そうでない一般の方にも日本の歴史や文化が詰まった作品として推せますし、また奈良に旅行に行く際にはお供として携えていって欲しい作品です。 なお、単行本巻末にはおまけとしてかわいさマシマシなハルヒノさんらの初期デザイン案が載っていますが、個人的には現行のカッコよ美しさマシマシなハルヒノさんがより好きです。

限界ダンジョンの繁殖事情

ダンジョン復活のためにモンスターを増やす

限界ダンジョンの繁殖事情 文屋リヱ
ゆゆゆ
ゆゆゆ

まさか、ダンジョンのモンスターは生成ではなく、繁殖で増えていたなんて。 勇者たちに倒されすぎて、モンスターが減りすぎ、あっという間にボス居所へたどり着かれてしまうことになってしまった、ダンジョンの主エギン。 エギン自体は勇者たちをかるがるやっつけられるほどのパワーを持つようですが、ボスエリアに来た勇者たちを待ち構えるため、サービスで固い玉座に座って待つお仕事をしていたら、戦う気も起きないほど非常に困った腰痛に‥ 副官に叱咤され仕方なく、「モンスターを増やして、勇者たちをなかなかボスエリアまで来られなくし、ダンジョンを復活させよう(そして腰を癒そう)」という導入です。 繁殖が進まないモンスターたちのために、ダンジョンの主自ら、モンスターたちの不可思議な性癖や不満を解消してあげます。 モンスターを増やして腰も癒したい、それだけなのに一筋縄ではいきません。 第一話のスライムを繁殖させようとしている様子をみていると、こちらの世界で絶滅危惧種の動物を保護している施設での繁殖事情を聞いたときの気持ちを思い出しました。 増やすって、大変です。 その視点はなかったなあと思いながら、おもしろく読んでいます。

ダメスキル【自動機能】が覚醒しました~あれ、ギルドのスカウトの皆さん、俺を「いらない」って言ってませんでした?~

強すぎる力はギャグになる

ダメスキル【自動機能】が覚醒しました~あれ、ギルドのスカウトの皆さん、俺を「いらない」って言ってませんでした?~ 中島零 赤衣丸歩郎 LA軍 潮一葉
ゆゆゆ
ゆゆゆ

ダメスキルと言われていたものの、実は強いスキルだったんですよね、というかんじの、小説家になろう作品が原作、タイトル通りなお話です。 主人公のスキル「自動機能」はいわゆるチートスキルです。 自動機能をオンにすると、人としてありえない曲芸を可能にします。 代償は、達成するまで記憶が無くなることです。 戦ったら怪我はするようですが、無理な動きをして筋肉痛が起こるような代償は、コミカライズを読む限りはないみたいです。 自動機能の内容は、最速で家に帰る、最速で行ったことがある場所へ向かう、最速で知っているものを採取する、最速で敵と戦う。 どれもさえない響きがあるけれど、最速で成し遂げるためにルートが尋常ではなかったり、戦い方が異常だったり、実行したら様子がおかしくなるものばかり。 様子がおかしいものの、本人は成し遂げている最中の記憶がないので、そんなことをしているとは思いません。 傍から見ている人は、人としてありえない動きをする主人公に驚愕します。 そこがこの漫画のおもしろいところです。 あの手この手で自動機能のバランスブレイカーっぷりが描かれていて、見ていて小気味いいです。 強すぎる力はギャグになってしまうという話を、ふと思い出しました。

封神演義

思わず自分語りしてしまうほど、絶大な影響

封神演義 藤崎竜
ゆゆゆ
ゆゆゆ

封神演義は中国のお話が原作なんだって! と友人から聞き、先のストーリーを知りたいと思った当時の私は図書館にあった「封神演義」に果敢にも挑戦、文字の多さにあえなく敗退した。 そして、漫画家という職業を尊敬すると同時に、毎週のジャンプを楽しみにする生活に戻った。 とはいえ、この漫画のお陰で中国に殷と周という時代があって、紂王と武王がいて、と簡単な中国史の始まりを知ることができ、歴史の授業でさらっと名称が出ればキャラクターの顔が思い浮かび、なんだか心浮き立つ気分を味わうこともできた。 四字熟語の「酒池肉林」も「封神演義」で知った。あれはなかなか衝撃的なビジュアルだった。 知らないことを自然と身につけることができる漫画のパワーって偉大だよなあと思う。 そして私が好きだったキャラクター・藤崎竜先生版の太公望といえば、ぐだぁっとしたマイペースな性格と、あのツノのような頭のかっこいい結び目、ほっぺたのカワイイZマーク。 イラストを描くときは真似してZをほっぺたに描くだけで、絵がものすごく下手な自分でも、カワイイ絵が描けた気がした。 さらに手足を大きくデフォルメして描く技を真似して、さらに上手になった気分を味わった。 周囲の絵が上手な友達は、先生が描くイラストの要素があった気がする。 他の方のレビューをみても、みんな思わず思い出すことがあれこれあるようで、絶大な影響を与えた作品だと思う。

異世界迷宮でハーレムを

ハーレムハクスラスローライフローグライク

異世界迷宮でハーレムを 氷樹一世 蘇我捨恥 四季童子
えっちな名無し

原作は所謂なろう的な異世界転移で、ゲーム的な異世界にチート能力付きで転移して、戻れないから生活していこうという典型的な物。 だが当時のなろうでは珍しかったダンジョン探索、および迷宮による経済、奴隷ヒロイン等々いくつかの要素は後続に与えた影響も多い作品で、世界観部分は結構しっかりしていた。 ダンジョンに潜るたびにシステムの新たな発見をしてプレイヤーが成長していく過程はローグライクそのもので、その手のゲームにヒロイン攻略要素を付けた上でラノベに落とし込んでいる部分は未だに感心する部分がある。 しかし原作後半は元々主人公にダンジョンの奥の秘宝などの目的もなかったので、ダンジョンに潜るのは単に奴隷ヒロインのハーレムと自分の健康を維持する「日課」になってしまい、最強装備をそろえているのにボス戦前で引き返すようなだらだらした雰囲気が漂い始めてしまった。 その上ノクターンではなくなろうなので、奴隷ハーレムのイチャつきこそ多少有れどえっちな生活は碌に描かれなかった…のだが コミカライズでは作画が上手い上にハーレムのえっちな生活が存分に丹念に描かれるという良改変を行い、色々な意味で満足度は上昇している。 だからといって世界の雰囲気は疎かにされておらず、丁寧に漫画化されていて単純にダンジョン探索物としても出来は良い、原作後半に入っていないのも有るが。 なろう原作のハーレム物としては展開はややスローで、二人目が加入するのに6巻が費やされているが、その分一人目とのえっちぃ部分やダンジョン探索もしっかり描かれていて、そういう部分も見応えは有る。 原作後半部分に入るには相当な年数がかかるので、ヒロイン全員登場できるかは不明だし、原作小説も果たして完結するのかという部分は気になるが、冒険心も下心も満たされる良コミカライズ。