落日のパトス

リアルじゃありえないのに生々しい

落日のパトス 艶々
野愛
野愛

艶々作品の魅力は人物の解像度の高さだと思う。 ご都合主義のどエロい設定どエロい肉体どエロい展開。絶対にありえないことだらけなのに、人間の感情は異常なほどリアルに描かれている。 壁が薄すぎるアパート。 駆け出し漫画家の青年・アキ。 隣に引っ越してきたのは、高校時代の憧れの先生。 単身赴任の旦那がいる日だけ、先生の部屋から喘ぎ声が聞こえてくる。 エロ漫画過ぎて逆に清々しいほどのシチュエーションでありながら、まあ焦らすこと焦らすこと。 後ろめたさを抱えながらもどうしようもなく先生に惹かれてしまうアキ。 アキの視線に興奮したり、うぶな反応を愛おしく思ってしまう先生。 お酒を飲んで暴走したり、一緒に海に行ったり、アキのアシスタントの女の子に嫉妬したり…。 一線を越えてしまいそうな瞬間が訪れるけれど、ためらう。 一線は越えないものの、2人の距離は縮まり、寸止め的行為も過激になっていく。 踏み出せない臆病さ、踏み出さない狡猾さ。もう止められない域まできているのに、相手の様子を伺い続ける2人。 あっさりヤっちゃうよりもずっとエロいし、生々しい。リアルじゃありえない話なのに、リアルだと感じてしまう。 艶々先生、天才だなあ。 自分勝手で狡くて可愛くて不器用で欲望に正直で…艶々先生の描く女性はとにかく生々しくて魅力的なのでぜひ体感してほしい。

黒岩メダカに私の可愛いが通じない

「歩」との共通点が多い期待のマガジン新作

黒岩メダカに私の可愛いが通じない 久世蘭
mampuku
mampuku

ラブコメ戦国時代の覇者「五等分の花嫁」が完結した後も、戦乱は終わる気配を見せません。 「カッコウの許嫁」「それでも歩は寄せてくる」など歴戦の実力派作家が着実に人気を集める一方、「アオのハコ」のような活きのいい新作も登場しています。個人的には次世代の本命に推したいのは「アオのハコ」なんですが、“穴”はこの「黒岩メダカ」なんじゃないかと期待しています。 この漫画の一番のセールスポイントはやはり萌えとフェティシズムだと思います。絵がとにかく上手く線が美しいので、あらゆるポーズ、あらゆる角度、大ゴマだろうと引きだろうと可愛さとセクシーさが安定していて素晴らしいです。「それでも歩は」も絵が卓越してクオリティ高いですよね。大事なポインツだと思います。 アオのハコとそれでも歩は…に共通しているのは軸となるメインヒロインがいる点ですね(黒岩メダカはどちらかというと「長瀞さん」や「歩」に近いシステムだと思いますが)いずれにしてもラブコメ少年漫画が氾濫していてとても全員のヒロインは覚えていられない昨今、本誌読者としてはこういうスタイルは有難いです。

オクターヴ

愛されたい私と一瞬の裏切り

オクターヴ 秋山はる
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ

一人の十代の「女性」の葛藤と自己確立の為の、繊細なドラマである本作。軸が無くフラつく人の苦しみに心寄せたいと思う方には是非、手にとって欲しい作品です。 ★★★★★ アイドルになりたかった主人公・雪乃。彼女が欲しかったのは「皆んなに見られる」事でした。 誰も自分を見てくれない都会で、自分を見つけてくれた節子と恋人になった雪乃。しかし「皆んなに見られたい」欲望、節子が自分以外を見るかもしれない嫉妬、男性への嫌悪と好奇心、はっきりしない性指向と外からの視線……百合好きに嫌われる例の「裏切り」のシーンは、雪乃の歪みと捉えれば、私も心を寄せられる。 全てに好かれたかった雪乃。しかしかつて信頼していた人の心は、ほんの少し時を置き・場所を隔てて全く別物の様に変化し、一瞬で雪乃を裏切る。 一方、例のシーンを含め、雪乃と節子の心も、ほんの数コマで簡単に変化する様子が何度も描かれる。では雪乃を裏切った人達と、節子との違いは何だったのか。危うげな雪乃と節子の関係はどう変わっていくのか。……そこは是非、作品を読んで確かめて下さい。 描かれる人間模様、雪乃の心模様に苦しさを覚える事も多い作品です。しかしそれ故に自己の頼りなさ、どうやって人は心を保って歩き続けるのか、という事を我が事の様に考えさせられる……やっぱり名著だと思います。

マカロン アイドル百合アンソロジー

アイドル百合…強さしか無い!

マカロン アイドル百合アンソロジー 平尾アウリ 一迅社アンソロジー 山田あこ 黄井ぴかち くもすずめ きぃやん 嶋水えけ はづき 柚原もけ 辻柚那 上林眞 ウミノモクズ KOUGI 坂城
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ

ここ数年、百合姫から何冊も百合アンソロジーが出版されましたが、この「アイドル百合」アンソロ、強度が段違いだと感じました。 アイドルですので顔も衣装も力入りまくり。見目麗しき女の子達の物語は、漫画にピッタリ! 芸能人ならではの、ステージへの思いや高い意識、仲間との意思疎通やすれ違い。またファンとの交流やそこを越えていく想い……コメディもありつつ、最終的に心高鳴る物語のオンパレード。 これこそハズレ無しのアンソロです! ♡♡♡♡♡ ●ポニーテールと青い空(坂城先生)/背中を追い続けたメンバーが、卒業する。 ●キミイロスターチス(ウミノモクズ先生)/新人アイドルとマネージャーは、幼馴染。 ●貴方のとなり(嶋水エケ先生)/コンビ売りの二人。でも私はあんた嫌い。 ●出席番号1番(柚原もけ先生)/滅多に登校しないクラスメートがアイドルだと知った。 ●手のひらのしるし(山田あこ先生)/新人アイドル、憧れのアイドルに告白!? ●アイドル“失格”(KOUGI先生)/いつも客席にいるあの子がいない… ●My Flower…(黄井ぴかち先生)/愛想いっぱい×毒舌系アイドルユニットの関係。 ●百合営業って呼ばないで!(辻柚那先生)/メンバー皆んなと仲良しアイドルに、ファンの愛ある「百合営業」コール! ●遠くて近いものたち(くもすずめ先生)/元アイドル、トップアイドルの幼馴染と同棲中。 ●Yovr York(きぃやん先生)お人好しアイドルに絡む捻くれアイドル。 ●となりのぶきっちょ(上林眞先生)/うまくいかないアイドルは同居もうまくいかない。

月50万もらっても生き甲斐のない隣のお姉さんに30万で雇われて「おかえり」って言うお仕事が楽しい(ガルドコミックス)

私も転職希望です

月50万もらっても生き甲斐のない隣のお姉さんに30万で雇われて「おかえり」って言うお仕事が楽しい(ガルドコミックス) アサヒナヒカゲ 野地貴日 黄波戸井ショウリ
六文銭
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■募集要項 「おかえり」というお仕事 ■対象  隣に住むお姉さん(スタイル抜群)  仕事以外は幼児化する ■条件 ・月30万 ・休日手当あり こんなんあったら、応募が殺到して、サーバパンクするでしょう。 なんというホワイト企業。 内容はタイトルのとおりです。 バリキャリで、バリキャリゆえに生活力皆無な早乙女ミオに、主人公が雇われた話。 条件は、帰ってきたら「おかえり」というだけ。 ミオは仕事以外に興味がなく、趣味もなく、友達もいないため、月収53万あっても使うアテがない、なんとも寂しい生活。 なので、30万で雇っても問題がなく、むしろそれに喜びを感じるという話。 全体的にギャグ展開多めで、バリキャリのときと、家に帰ったときの幼児化のギャップがたまりません。 まだ、恋愛感情はなさそうですが、ラブコメなのかな? 2巻ではミオの過去に踏み込んでいくあたり、 少なからぬ感情があるように見えますが、今後どうなっていくか楽しみですね。 そして主人公の名前は「まつとも」です。 「まつもと」ではありません。何度も読み間違えましたのでご注意を。