いっしょにねようよ

ある意味ずっしり重い、全6巻。

いっしょにねようよ 高尾滋
nyae
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他人同士がひとつ屋根の下でわちゃわちゃしてるんですが、お面の男の子・古白くんと主人公・一子ちゃんが抱える心の傷や抗えない境遇がわりとショッキングなので読んでる間はずっと心がざわざわしてる。 ひとつ前にクチコミを書いた「ディア マイン」と比べると、けっこうシリアス多めです。 ディアマインとの共通点としては、主人公がほんわかしていて自分より他人の気持ちを優先しがちなんだけど、いざという時に芯の強さを発揮すること、あと小さい子供が出てきてやっぱり可愛い(ディアマインでは寿千代、こっちでは寅次郎と名前はごっつめ)。あと、なにかと苦労している子どもの近くに、保護能力があるかっこいい大人がいること(←個人的にはこれがいちばん高尾先生の漫画の好きなところ)。 見たくないものが見えてしまう古白と、あるものだけが見えなくなってしまった一子が、お互いが幸せになってもらうために、そして自分も幸せになるために努力した結果がこれなんだなと思うと、やっぱ最後は泣けてきますね… ある出来事をきっかけに古白がお面を取るんですが、そこからの2人の恋の進行の速さったら、すごかった。 今あらためて読むと、若干6冊の中にいろんなことを詰め込み過ぎかも?もっと学校生活を描いたり、サブキャラの人となりを掘り下げる回があっても良かったかなと思いました。 家族とか血の繋がりとか、年齢や見た目、職業…人間の大事なところはそこじゃないというのが一貫してるテーマかなと思います。

星川銀座四丁目

教師と児童の恋と依存と、その先と。

星川銀座四丁目 玄鉄絢
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ

両親の存在に苦しみ、不登校になった小学六年生の松田乙女。見かねた教師の那珂川湊は彼女を引き取り、養子に迎える事を目指して、共に生活を始める。 強引に乙女を連れて来た湊。真っ当な愛情を注ごうとする、懸命で正義感の強い女性……なんだけど……。 ♡♡♡♡♡ 第一話では、乙女のためにしっかりしないといけない湊が、とんでもない事をしでかして驚かされる。しかもその理由が「乙女がいない時間が辛い」という、情けないもの。最初のカッコよさとの落差は、衝撃的だ。 しかしこれをきっかけに、乙女は大きな決断をする。そして却って湊への信頼を増し、湊の為に在りたいと想うようになる。 そしてその気持ちは、 信頼を超え、恋心になる。 互いを想い合う様子は温かく、二人の時間は甘く、時に危ないほどに気持ちが昂る。 しかし強い恋心は、過度な依存に形を変える。思ったよりだらしない湊と、思ったより恋にのめり込む乙女の関係には、常に危うさが付き纏い、不安になる。 更に協力者と思っている人物も、法律も、決して二人の味方とは言えない状況。乙女が子供であるために、二人が引き離される不安は常に示唆される。本当の心の絆が試される時、湊と乙女は……。 年の差百合にときめきつつ、恋愛依存関係から自立した人間同士の関係へと成長する過程を追った、真剣で優しい物語だ。

フローラ

いつか続きが読めますように

フローラ かわかみじゅんこ
かしこ
かしこ

主人公のフローラさんは幼い頃に母を亡くしていて、小津安二郎の映画みたいに「私が結婚したらお父様が1人になってしまうわ」と言って結婚せずにいたのですが、駅で偶然出会った鉄道オタクの変わり者をどうやら好きになり始めて…!という恋物語です。舞台が20世紀初頭のフランスで、純情だけどおっちょこちょいな主人公という昔懐かしい少女漫画な感じもありつつ、かわかみじゅんこ先生がフランス在住(しかも主人公と同じフォンテーヌブローにお住まい)なので文化や背景の描写にリアリティーがあるのがいいです。恋のお相手の男性が超絶イケメンではないのですが、フローラさんが好きになったポイントが「何かに熱中しているところが大好きなお父様にそっくり!」なので、こういうシュチュエーションの方がドキドキできるという方は私の他にもいらっしゃるでしょう。しかし、この鉄道オタクにちょっとよからぬ噂があるようだ…という、とても気になるところで終わってしまっているのが残念です。どうやら掲載誌が休刊になってしまったよう。あぁ〜!続きが読みたいよ〜!ロマンチックな物語にかわかみ先生のトーンワークがばっちりハマっていて夢心地になれます。オススメです!

魚の見る夢

傷付け束縛する、壊れた姉妹の愛憎

魚の見る夢 小川麻衣子
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ

高1の妹が、高3の姉に首輪をつけて束縛する……そんな始まりのこの物語は、常に幾らかの息苦しさを纏っている。 母を失って「壊れた」家庭で、大切だった家族の関係を妹との間だけでも守ろうとする姉。姉に家族以上の感情を抱いてしまった妹は、気持ちをぶつけ、姉を翻弄する。 好きって何? 女の子同士で? 家族だから何? 疑問符だらけの中を、二人は迷走する。 互いが大切なのに、自分の「大切」の形を守ろうとして、却って互いを縛り、傷付けていく姉妹……二人の張り詰めた心に、重い痛みを覚える。 更に両者とも、友人関係にもこの息苦しさは形を変えて現れ、一筋縄ではいかない重い物語のバリエーションが展開される。最後まで息継ぎをする瞬間は、無い。 この息苦しさを救うのは、小川麻衣子先生の流麗ですっきりとした、軽みのある絵。優しさと、どこか重力を感じさせない浮遊感が、タイトルの様に「水中の夢」を見ているのでは?という気にさせる。 この作品が「夢」なのだとしたら、読み終わった時に、私達は夢から醒める。心の痛みと、纏わり付く甘く息苦しい感情を思い出しながらも、少しずつ、忘れていく。 また思い出す為に、手に取るに違いない。