早川書房マンガの感想・レビュー9件楽しい古き神々異形たちによると世界は… Coco cocoナベテツ元ネタとなっているクトゥルー神話に関して、正直それほどの知識はありません。ただ、作者のCOCO先生はクトゥルーもお好きなんだなあというのは今日の早川さんでも随所にちりばめられており、知らなくても楽しめました(基本愛らしいキャラクターばかりでしたし) 時折描かれるホラー描写も、この作品に刺激を与えてくれるスパイスなのではないかと思います。 今日の~でも登場していたティンダロスはじめ、クトゥルーやダゴンなど、可愛らしくデフォルメされた神々の愉快な生態(?)は、肩肘張らずに楽しめる作品だと思います。 70年代のりぼんに花岡ちゃんというヒロインがいたこと花岡ちゃんの夏休み 清原なつのまるまるhttps://manba.co.jp/manba_magazines/16043 この記事に書いてあるのを読めば花岡ちゃんがどういう子なのかがほぼ分かるのですが、70年代の、しかもあの少女マンガ誌「りぼん」に、この「花岡ちゃん」をヒロインとした漫画が掲載されていたと考えるとたしかにびっくりです。自分はリアルタイムでは読んでないですし、漫画の存在もこのマンバ通信の記事で知りました。掲載順としては花岡ちゃんがまだ脇役キャラとして出ていた回を経て、主役に躍り出るって相当人気があったことの証明ですね(読者人気を受けて主役にしたのか作者の独断かはわかりませんが)。恋愛に縁がないキャラなのかと思いきや、偶然であった男性と急接近します。しますけど、その距離感がまたなかなか見ないタイプのやつで面白いんです。そしてその相手の男性も、美男子ではありますがこれまたりぼんヒロインの相手としてはなかなか癖の強い…(笑) 当時のことを振り返るあとがき漫画も読み応えがあって内容も面白かったです。 今の作者が描く「花岡数子」をぜひ読んでみたいものです。夏次系先生には珍しいエッセイ漫画(読み切り)宮崎夏次系・特別インタビュー漫画「あなたにとってSFマガジンとは?」 宮崎夏次系名無し2013年〜2020年の7年間にかけてSFマガジンにのった読み切りシリーズをまとめた単行本『と、ある日のすごくふしぎ』が重版されたことを記念して描かれた 夏次系先生にはやや珍しいエッセイ漫画。 インタビューを務めるナレーターと先生のやりとりにはさまるとぼけたギャグ。 とてもほんわかする内容です。 照れながら受け答えしてる夏次系先生の天然な肖像が漫画に登場するキャラみたいで楽しい......。 こんな趣で旅行や料理などを題材にしたら結構面白くなりそう.......読みたい...... 以下の早川書房Twitterアカウントのリンクから飛べます。 https://twitter.com/hayakawashobo/status/1329634313197948928これぞ宮崎夏次系入門書かもしれないと、ある日のすごくふしぎ 宮崎夏次系starstarstarstarstarnyaeもしかすると、最新コミックスでありながら宮崎夏次系入門として最適なのでは?と思いました。とくに「シュール」とか「不思議系」という印象を強く持っている人には本書から読んでみてほしい。ずっと笑っていられるから。最初から最後までずっと、声出して笑えます。 最後から2番目の「と、ある日の“パ“」は正直アウトかもしれない前代未聞の回となってます。何かあっても擁護できないほど攻めてます。 それは冗談として、もれなく全話最高と言えるショートSF短編集です。 あとおまけで作者のエッセイ(のような)短編も収録されています。珍しいですよね。 読んだひとだけが闘える世界で 凹村戦争 西島大介野愛閉塞感を打ち破る何かが欲しい。火星人でも魔法でもなんでもいいから、ここをぶち壊してどこかに行きたい。 外界から隔離された凹村という小さな村。少年少女たちはどこにも行く場所がないと嘆いたり、ここが世界のすべてだと目を伏せていたり、閉塞感に包まれながらも平和な日常を過ごしている。 ある日、物体Xが落下する。 何も変わらないと思っていた世界に、非日常がやってきたらどうする? 宇宙人が侵略してきたら、窓からテロリストがやってきたら、異世界に転生したら。 平和すぎてつまらない日常を変えたくて、ありもしないことを夢想する。起こり得ないと思っているから、誰もが一度は通り過ぎる妄想。 本当に起こったら、どうする?逃げる? わたしは闘う?見て見ぬふりをする?撃ち落とす? 闘う妄想はしていても実際は体が動かないかもしれない。恐怖すら感じず、人ごとのように過ぎ去るのを待つかもしれない。 だって、そんなことあるわけないんだから。 凹村ほど閉ざされてないにしろ、何もない、絵に描いたようなくそド田舎で育った。 日常に疑問すら持たない周囲の人間に辟易しながら、カラオケとかセックスとかお手頃な娯楽を消費する青春を送っていた。 凹村みたいに閉ざされた空間で、インターネットだけが世界だと思っていた。 そんな青春から逃れていつの間にか大人になっていた。 ところで。 どこか新しい場所へたどり着けた? 物体Xが落下したらどうする? 火星人が侵略してきたらどうする? 西島大介先生が描いてみせた答えは、実にクールだ。 クライマックスの怒涛の畳み掛けがもの凄い。滅茶苦茶じゃねえか、投げっぱなしじゃねえかと思う人も少なからずいるのではないか。絶望的だと思う人もおそらくいるだろう。 わたしが見たのは希望だった。 確かな闘い方を、ひとつ教えてもらった。 この世界はつまらないしちっぽけだ、それなのに見えてない部分や知らない部分が多すぎる。何もないように生きることだって、難しい。最悪で滅茶苦茶で容赦のない世界で、わたしたちはは生きるしかないのだ。 ならば。この方法で闘おうじゃないか。 パルプンテなんて待ち望んでる暇があったら、読みましょう。そして、世界と闘おう。 最後まで読んだらきっと、闘えるはず。人が持つ、しなやかな強さ私の保健室へおいで… 清原なつのpennzou『私の保健室へおいで…』は2002年にハヤカワ文庫JAレーベルにて発行された作品集だ。収録作品は81年〜90年作までと年代で見れば幅広いが、版元の紹介文に「スタイリッシュなラヴロマン」と謳われている通り、全作に恋愛要素を含んだ統一感のあるラインナップである。 こう書くと、恋愛最中の高揚感であるとかシャープな駆け引きみたいなのを想像されるかもしれないが、清原先生の作品ではもっと引いた視点から恋愛が描かれる。それが清原なつのシグネイチャーとしか言いようのない個性をマンガに宿している。 清原先生は、思い込みや呪縛などによって凝り固まってしまった心がフッと解きほぐされる瞬間を描く。 そういった人が持つしなやかな強さに触れた時、自分の心も軽やかになった気分になる。 この特色は、恋愛要素を主軸とした本書において特に傾向が強い。清原作品における恋愛は誰かと誰かの交流であり、他者により自己が変化することがあるためだ。それが本書を魅力的なものにしている。「新説 赤い糸の伝説」とか本当に最高…… 本書から清原先生に入門した場合、次に読むのは何がよいだろうか。 発表当時のコミックスは絶版であるが、近年に月刊フラワーズでポツポツと発表されている作品を除けば、ほぼ全作品が文庫などで網羅されている。(電子書籍化も文庫については殆ど為されている状況) そのゆえ間口がとても広いので、コレという名前を挙げるのは難しい。各々の関心領域と描かれている題材がマッチしている作品が適していると考える。 本書から遠くないニュアンスのものを読みたいのなら『春の微熱』、もしSFが好きであるなら『アレックス・タイムトラベル』、歴史物であれば『飛鳥昔語り』、性に纏わる領域に関心があるなら『花図鑑』あたりだろうか。これらをまとめた清原先生の総体と向き合うのなら自選傑作集『桜の森の満開の下』。清原先生が生み出した発明的キャラクター・花岡ちゃんが活躍する『花岡ちゃんの夏休み』もいい。 ちなみに、マイベスト清原なつの作品は『春の微熱』収録「群青の日々」です。前情報ない方が楽しめると思うサブリナ ニック・ドルナソ 藤井光hysysk※ネタバレを含むクチコミです。 グラフィックノベルの常識をくつがえす挑戦的作品!サブリナ ニック・ドルナソ 藤井光書肆喫茶mori店主グラフィックノベル初ブッカー賞ノミネート!早川書房が発行!と話題の多い本作! ある日突然サブリナという名の一人の女性が失踪する。彼女の恋人とその友人、そしてサブリナの妹を中心に物語は進んでいく。 驚くべきは、一部のコマを除き、登場人物たちの顔が、表情筋がないかのような、点と線というシンプルな描線で描かれていること。 その表情は、たとえシビアで悲痛な場面であっても、あたかもアルカイックスマイルのような微笑みを浮かべているようにさえ見えるのだ。 視覚的要素と内容とがチグハグな印象を与え、この作品に言いようもない不気味さを加えている。そして失踪事件にまつわる顛末をいっそう衝撃的なものへと導いている。 グラフィックノベルの常識をくつがえす、グラフィックノベルの新たな境地を追求する、挑戦的な作品です!SFがテーマの短編集千の王国百の城 清原なつの名無し人語を話すゴリラとの恋愛を描いた「金色のシルバーバック」が一番好きでした。宇宙パイロットを目指す男女がひとつになる話やアンドロイドをつくる孤独な博士の話など色んな短編が収録されています。SF好きな方にファンが多い作家さんですが、私は少女マンガらしい心の機微の描写に惹かれました。ぜひSFに詳しい方の感想を聞いてみたいです。
元ネタとなっているクトゥルー神話に関して、正直それほどの知識はありません。ただ、作者のCOCO先生はクトゥルーもお好きなんだなあというのは今日の早川さんでも随所にちりばめられており、知らなくても楽しめました(基本愛らしいキャラクターばかりでしたし) 時折描かれるホラー描写も、この作品に刺激を与えてくれるスパイスなのではないかと思います。 今日の~でも登場していたティンダロスはじめ、クトゥルーやダゴンなど、可愛らしくデフォルメされた神々の愉快な生態(?)は、肩肘張らずに楽しめる作品だと思います。