わたしたちが育てました

RPG世界のモンスター牧場にようこそ!

わたしたちが育てました 平平平平
名無し

RPGをプレイしていて抱く疑問ーー「モンスターはどこから来るのか?」 少なからずありますよね それ専用の牧場「有限会社 魔界牧場」という答えを出したのが本作です。 打倒勇者の為それまで育てていたモンスター用の飼育場を、魔王軍のお偉いさんの命令で、より強いモンスターを育てるために解体したり、食用として売ったり…… ファンタジーに「下請けの悲哀」という要素を掛け合わせた目の付け所が光っています。 画風もがぁさんなど彷彿とさせる平成・萌えノスタルジックなものでたいへん魅力的 サキュバスの新人飼育員のティマちゃんがぽんこつえっちでかわいかったです(小並感 ティマが上司に抗議したりスライムを愛でたりする、一挙一動がとことん愛おしい。 またティマの独特なファッションが「瘴気を取り込むため」なのにクスリ。 全般にこうした理屈づけが上手いなと。ミノタウロスもかわいいです。ニッコニコで水浴びに来るシーンとか、すごく。小ネタのいっぱい詰まったお弁当箱のような楽しさ、読んでいてあります。 さてやられっぱなしとはいかないのですが、どうなるのかは読んでみてのお楽しみ♪ 本作以前にもいくつか読み切りを発表している平平平平(ひらだいらへいべい)、今後が楽しみなマンガ家です。

ソイ・ストーリー まんが家はタイの小路をゆく【タテスク】

まだまだ溢れるタイの魅力 #1巻応援

ソイ・ストーリー まんが家はタイの小路をゆく【タテスク】 小林眞理子
兎来栄寿
兎来栄寿

『タイのひとびと』、『タイランドクエスト』の小林眞理子さんが、新たにタテスクコミックにて描くタイの実録エッセイマンガです。 前作までの魅力はそのままに、また新たににさまざまなタイの魅力を描いて届けてくれます。 小林眞理子さんのマンガは、読みやすいすっきりした絵柄でありながらも、異国の地であるタイの街並みや食べ物などは情報量濃く絵でしっかり描きこまれている絶妙なバランスが良いです。 1話で言えば水上バスが走る運河の様子であったり、夥しい電線の上を闊歩するリスであったり。同じアジアでも、景色の全然違うタイのありようはとても興味深いです。 iPadとApple Pencil片手に、そんな異国で悠々自適に執筆活動をしているさまを見ると「良いなぁ〜!」と思わされます。最近は円安で東南アジアから日本の方が物価が安いと遊びに来る話も聞きますが、タイやベトナムなどはまだ日本人的な感覚からするとリーズナブルに満喫できる場所で良いですよね。 私は東南アジアは行ったことがないですが、興味はあるので一度1〜2週間くらいゆっくり滞在してみたいです。そしてこの作品の中でたびたび描かれているような、タイの人々の温かさや大らかさに直に触れてみたいですね。 現在は単話ごとの購入ですが、5話の内3話までは無料で読めるのでそちらだけでも読んでみてください。タイにそこまで興味がないという方でも、単純なマンガの上手さと面白さで楽しめるのではないかと思います。

アッコちゃんは世界一

今に疲弊した人へ送られるエール #1巻応援

アッコちゃんは世界一 鳥トマト
兎来栄寿
兎来栄寿

『幻滅カメラ』の1,2巻と同時発売となった、鳥トマトさんの短編集です。 「アッコちゃんは世界一」 「三田君は大丈夫」 「マイお兄ちゃん」 の3つの短編が収録されています。 表題作の「アッコちゃんは世界一」から、とにもかくにも最高なので百聞は一見に如かずでまず読んでみて欲しいです。 https://x.com/tori_the_tomato/status/1788949089192923568?s=46&t=S5wm4E-TmT39NBg4BgQsPA 今この瞬間も、現実世界では元々とても素敵であったはずの人がさまざまな理由でその輝きを失わされるということが起きているのでしょう。そうなった時に、物語の中では救いの手が差し伸べられますが現実にはその手となるものは自分自身しかないのではないか。そんな感想を抱く人には、まさに3作品目の「マイお兄ちゃん」が刺さることでしょう。 解像度の高い、現代社会で人間を壊す力を持つストレスの元凶たち。そういったものたちから自分を守れるのは究極的に自分だけで、大切な自分を守ることを諦めたり忘れてしまったりしている人に力を与えてくれる物語となっています。 「三田君は大丈夫」は、東大生の本郷くんとKO生の三田くんがそれぞれ会長と副会長をこなす国際交流サークルのお話です。本郷くんにコンプレックスを持つ三田くんが、自尊心を保つために本郷くんにはできない女の子と遊びまくるという行為に直走っていきます。 言うまでもなく本郷は東大の、三田は慶應のキャンパスがある土地の名前で、ヒロインのキラキラした白金さんや芋な千駄木さんさんも土地のイメージから来ているのでしょう。 こちらも「東京最低最悪最高!」の鳥トマトさんだなぁというのを強く感じさせてくれる作品で、競争社会の歪みが生む空虚さや絶望感が何とも名状し難い読み味をもたらしてくれます。三田くんだけならまだしも、最後の方の千駄木さんのセリフが実にリアリスティックで無情感を呈しているところが好きです。 この作品の並びも絶妙で、「マイお兄ちゃん」で締められることによって全体的な読後感としては非常にスッキリしたものになっています。 いろんなものに負けずに大切なあなたの人生を生きて欲しいという祈りの込められた、素敵な短編集です。

幻滅カメラ

汚泥のような現代を切り裂く刹那の光 #1巻応援 #完結応援

幻滅カメラ 鳥トマト
兎来栄寿
兎来栄寿

「東京最低最悪最高!」の流れを色濃く受け継いで、現代を鋭利に刳り取ってみせる鳥トマトさんの新作が1・2巻同時発売となりました。同時発売の『アッコちゃんは世界一』とあわせて3冊同時発売ですが、全部オススメです。 主人公のジゲン(27)は売れないカメラマン。その姉・姫子は、新興宗教の教祖と仮面結婚をして莫大な財力を手に入れ、学生時代からの関係がある社長令嬢でビッチのアメリと恋仲。ジゲンが好きな5つ年上の男性・山田は、アメリと不倫する仲で奥さんとの離婚を画策中と1話目で提示される人間関係からドロドロの泥沼の様相を呈してきます。 そして、それだけでも成立しそうな人間ドラマにひとつまみ盛り込まれるファンタジーが、タイトルにもなっている「性欲を消すカメラ」の存在です。人間の根源を司る三大欲求のひとつを消し去ると、何が起こるのか。さまざまなシチュエーションの人間たちが、どこからどこまで性欲を原動力に駆動しているのかということを目の当たりにできるという意味でも非常に面白い作品です。 お金が無さすぎて資本主義の犬になるしかないジゲンは、生活のために姉や社会から多種多様なことを強いられます。マッチングアプリやブラック企業、メン地下や新興宗教、モラ男や家父長制など現代の象徴的なシーンを巡っていく中でさまざまな人間と関わっていきますが、「普通」とか「まとも」と呼ばれるような生き方をしている人がメインにはほぼ出てきません。 しかしながら、深い中身を見ようとしなければ、皆普通に生きているように見えるであろうという絶妙な状態の描き方が最高な作品です。あたかもカメラを通して切り取った一瞬が、現実よりも美しく見えるように。みんなみんな生きているんだ、友達ではないけれど。 ジゲンの恋愛に関するトラウマであったり、姫子やアメリの現在に至るまでの諸事情などが徐々に明かされていく構成、その上で描かれる主軸の人間ドラマも良いです。個人的には、1巻終盤のドライヴ感全開のセリフと展開が好きです。呪詛返しして強く生きていく力と魂を常に持っていきたいものです。 鳥トマトさんの絵柄とお話の相性も絶妙で、デフォルメが強いところとシリアス時のギャップがまた演出として強い効果を発揮しています。表情の描き方などもすごくいい瞬間があるんですよね。 唾棄したくなるような現実、人間、事象を描きながらも、読んでいると不思議とエネルギーをもらえる紛うことなき現代文学です。

結界師の一輪華

何もしないことで、蔑んできた奴らを見返す

結界師の一輪華 クレハ おだやか ボダックス
ゆゆゆ
ゆゆゆ

のはやめて、老後に備えて少し働きます。 少しだけ、少しだけですよ?! という始まりです。 考えたら、最初からフラグはたっていた。 いつも優秀な双子の姉と比較され、周囲からは残り滓だのなんだの言われ、両親も姉を贔屓し、能力が低いと虐げられてきた。  でも覚醒したら、めちゃ強。 能力も式神もめちゃ強。強いってもんじゃないくらい強い。 強いものが正義の世界なので、強いとわかれば皆手のひらクルン間違いなし。 覚醒を詳らかにすると思いきや、残念ながら覚醒したのは、家族に受け入れてもらいたいという願いが消え果てたあと。 全力で覚醒した能力を隠し、能力なんて関係ない普通の仕事に就いて、一人悠々自適な老後を過ごすことを目標にした。 なんて健気…と思ったところで、本家ご当主様の登場。 主人公の強さに気づいたのはご当主様ひとり。 当主母も力が弱くて気づかず、主人公家族も気づかず、学校はみんな学生だからか気づかず。 能力の弱い人が周りに多すぎて、この世界は大丈夫だろうかと不安になってくる。 さらに主人公がなぜ覚醒したかもわからない。 わからないことが多いけど、離婚条件がついに成立したと主人公が喜び、なんやかんやあったところで2巻終了。 気になるところは3巻以降にわかるんだろうか。 離婚条件の成立が想定外に早くかった。 こんなに早く終わる条件なら、主人公もノリノリで応じて、式神は騙されていると心配するよねえと得心してしまった。

アルバート家の令嬢は没落をご所望です

左遷を望む、悪役令嬢マンガ

アルバート家の令嬢は没落をご所望です 双葉はづき 彩月つかさ さき
ゆゆゆ
ゆゆゆ

本作は、小説家になろう→書籍化→コミカライズと、夢の街道をまっしぐらに進んでいる作品です。 原作は2014年に投稿されているものです。 従者とは思えない態度と性格の従者や、それを許しているご令嬢は超絶権力持ち公爵家の娘。 どこへ行くにもその従者を連れ歩き、学園へは馬車でなく自転車通学、好きなものはコロッケ。 でもやろうと思えば立ち振舞は地位に見合った完璧公爵令嬢を振る舞うこともできる。 にもかかわらず、悪役令嬢だと記憶を取り戻してからは、悪役っぽい振る舞いを従者とともに研究… それから、悪役令嬢を強制するかのような縦ロール。ドリルのような縦ロール。緩やかにならない、かきあげれば、フワッでなく、ブンッ。 なんじゃそりゃ、となる書き方ですが、そこがおもしろいです。 ラブコメですが、主人公は鈍感というかフラグクラッシャーというか、そんなかんじなのと上述のとおりなので、コメディも強いです。 それから表紙イラストより、漫画のほうがキャラクターがイキイキしています。 デフォルメ、コミカル、シリアル。どれも魅力的です。 ちなみに、転生先のゲームは、売れたとあるのにアラが多いストーリーだなあ、と本編とは関係ないところに疑問をもってしまいました。 「乙女ゲームだから仕方ないよNE★」で許されているところが多いです。なので、そこは目をつむりましょう。舞台と、ストーリーを強制するゲームが悪いのです。 続編の逆ハーレムルートはKUSOゲーと言われても仕方ない気もする勢いです。 それでもやりこんでしまう人たちがいるのはキャラクター愛故なのでしょうか。 もしくはだからこそ、3作目が出なかったのでしょうか。いや、1作目が人気すぎたのか。 話がずれました。 オリジナルの小説も読みやすいです。 コミカライズのこちらも読みやすいです。 悪役令嬢系が好きな方はぜひ。

東遊高校の日々

変人奇人たくさんの高校コメディ #1巻応援

東遊高校の日々 ★薄荷堂★
兎来栄寿
兎来栄寿

みなさんの学校では先生はどんなあだ名で呼ばれていましたか? 私の学校の先生方は「極道」、「ソルジャークラス1st」、「化身」(いずれも女性の先生)などと呼ばれ親しまれていました。そんな懐かしい記憶を呼び起こしてくれたのが、この愉快な4コママンガでした。 生徒も先生もキャラがとにかく濃い東遊高校を舞台に繰り広げられる学園コメディで、ギャグ色強めのラブコメ成分も多めに含まれています。 バレエをやっていたものの背が伸び過ぎてモデルをやっており、同じ事務所に所属する超美形の恋人もいるものの、独特の感性を持った美人ゾーィ。 人間観察が趣味で、茶道部に入って「頂上(てっぺん)」を取ろうとしている、自分の容姿に自信がありすぎる鈴音。 身長は低いもののラグビー部で活躍する、優しいけど鈍い、いつも笑顔でスマイル王子と呼ばれている鍛冶。 中学時代から鍛冶を慕いストーカー化しているが自覚に乏しい怜。 そんな怜への気持ちに徐々に自覚的になっていく、この作品の中では常識人寄りで清涼剤のような存在の小川。 おとなしいメガネ文学少女的な外見で、バイオレンスアクション小説を書いている青山さん。 10年間「とび森」をやりこみ続け公共事業をコンプリートしている斉木。 ミステリアスな美人だが、目を開けたまま眠ることができ、鍵開けが得意で、男子ふたりのかけあいに妄想を昂らせる五十嵐さん。 他にも、書ききれないほどたくさんの個性的なキャラクターたちが登場します。 教師のあだ名も「アンドロイド」、「板長」、「アガペー」など特徴的で、それだけで日々の賑やかさが伝わってきます。倫理教師のあだ名がアガペーになるところ、好きです。 それぞれのキャラクターたちが複雑に関係し合って織りなされる群像劇は実際の学校生活さながらで、その中で萌芽を見せるいくつかのラブの部分も見どころとなっています。ラブらないところも、それはそれでまた良く。 私はこういった耽美な絵柄で描かれるエキセントリックなギャグが大好きです。同じ趣味の方、変な人間が好きな方にオススメです。