ビッグX

連載時代人気だったスーパーヒーローもの

ビッグX 手塚治虫
酒チャビン
酒チャビン

少年ブックに1963年〜1966年に連載された作品です。連載当時大人気だったようで、連載も長く続いています。 話は特殊な薬品で鋼鉄のような体になったり、巨大化したりしながら悪役を倒すスーパーヒーローものです。「サイボーグ」という単語がしょっちゅう出てきますが、この作品の連載中に連載が開始したサイボーグ009の影響があったのかも知れません。 敵としてナチスが出てくるのですが、総統をはじめ幹部どころも実名で登場していて、だいぶ攻めているなぁと感じました。 主人公は、基本、敵であっても殺さずにすぐ助けてしまいます。意図的にそういう設定にしていると思われますが、見ているこちらからするとすごくもどかしく、ハラハラ・イライラします。何気に手塚先生自身も「やたらと正義の味方ぶるからあまり好きな作品ではない」と語られており、後年の大人向け手塚作品への伏線を感じます。 正直、私もいい大人なので、シンプルな勧善懲悪のスーパーヒーローものを無邪気に楽しむことができなくなっており、読んでいて「すごく面白い!」というものではありませんでした。 ただ、夏みかんの袋の中にある粒々一つ一つが一つの細胞だとか、鳥の卵が一つの細胞だとか、そういう科学的な知識は、知らなかったのですごくためになりました。さすが「空想科学マンが」だと思いました。

ドン・ドラキュラ

連載時は不人気でしたが、名作と遜色ない面白い作品だと思います。

ドン・ドラキュラ 手塚治虫
酒チャビン
酒チャビン

あまり人気は高くない気がしますが、かなり面白いです!!少年チャンピオンでブラック・ジャックの後を受けて1979年に連載された作品です。 ブラック・ジャックと同じく、主要なキャラクターを中心とした1話完結ものが続くスタイルで、このスタイルにはブラック・ジャックと本作の他、ミッドナイト、七色いんこなど名作揃いのお得意なスタイルです! とにかくキャラも皆楽しく、好感が持てます!ドラキュラとチョコラの親子はもちろん、イボジがすぐに破裂してしまうヘルシング教授(そのせいでいつも貧血気味なので、血を吸うドラキュラに敵意を燃やしており、吸血鬼撲滅研究所の所長をやっている)や、サイコパス気味で行動が破天荒な村井警部、よくわからないブロンダなど皆魅力的です! ドラキュラもニンニク・水・日光・杭など弱点がかなり多く、しょっちゅう灰になってしまっています。 本人もかなり楽しんでノッて執筆していたとのことで、ギャグなどは手塚作品屈指の切れ味だと思います!かなり面白いです!!! ただ連載時の人気はイマイチだったようで、半年ほどで打ち切りに・・・こんなに面白いのに・・・ ちなみにアニメも打ち切りになっていて、放映話数はなんと4話・・・史上最速の速さです・・・ ただ、不人気というよりは大人の事情での打ち切りだったようで、そこは安心しました! 小山高生さんは、ドン・ドラキュラのアニメが思いがけず早期打ち切りになったことによって、ドラゴンボールのアニメに関わることになったとのことで、縁というものは不思議だなあと思いました。 https://twitter.com/koyamatakao194/status/1455183876792340480

空気の底

名作・佳作揃いの短編集!

空気の底 手塚治虫
酒チャビン
酒チャビン

「オッス!おバンです ぼくは田所満男 徹夜で勉強机を前にウンウン唸っている諸君! それともグロッキーになってゴロ寝でうとうとしている諸君! 聴いてくれたまえ そして話しあおうモロモロの人生論 そして音楽を!」 の名台詞でお馴染みのカタストロフ・イン・ザ・ダークも収録された短編集です。漫画アクションやビッグコミックの好評を受けて秋田書店から刊行された青年向けマンガ誌「プレイコミック」創刊から掲載された手塚先生による短編を集めたものです。 手塚先生の青年向けマンガは長編も短編も粒ぞろいでハズレがないのですが、こちらも短編ということで小粒ながらもピリリと辛い珠玉の作品たちが収録されています。手塚先生もこのシリーズはかなり気に入られていたようですね!聖女懐妊の最後のページは神秘的で感動ものでした! 収録作品は以下のとおりです。B6版の全集とは違ってるので、そこは注意です。 空気の底シリーズ  Lジョーを訪ねた男  L野郎と断崖  Lグランドメサの決闘  Lうろこが崎  L夜の声  Lそこに穴があった  Lカメレオン  L猫の血  Lわが谷は未知なりき  L暗い窓の女  Lカタストロフ・イン・ザ・ダーク  L電話  Lロバンナよ  Lふたりは空気の底に 処刑は3時におわった おそすぎるアイツ 聖女懐妊 帰還者

ブッダ

超おもいでの作品

ブッダ 手塚治虫
酒チャビン
酒チャビン

高校生の頃(すでに手塚先生は亡くなられていましたが)、火の鳥を読んで、その面白さに圧倒され、続けて読んだのがこのブッダで、それまでに読んでいたマンガとは完全に別格の面白さに、すっかり虜になりました。わたしがヅカラーになる決定打となった作品で、とても思い入れがあります。この度、再読して、その面白さを再確認しました。 もし「ゆうれい小僧がやってきた!」がもう少し面白ければ、ゆでラーになっていたと思うので、人生なにが起こるかわかりません。 本作品は、ブッダの生涯を描いたものですが、物語は生まれる少し前からスタートします。 仏教の教えについては、そこまで詳しくないので、この作品に書かれている数々の教えが、仏教の教えそのものなのか、それとも手塚先生なりのアレンジが加わっているのかは分かりません。本作中のブッダは、決して最初から聖人だったわけではなく、どちらかというと問題児的な部分や弱い部分もありながら、いろいろ経験していく中で迷いながら悟っていくので、自分を諦めない勇気をもらえます(作中の弟子たちも皆そうです)。 ただ、実在のブッダや本作品中のブッダが数多の人の心をお救いになったように、手塚先生は本作品によって、わたしの心をありがたくもお救いになられました。その意味で、手塚先生は、巷間言われているとおりマンガの神様であると同時に、我が心の仏様でもあります。 ちなみに、作中登場するタッタ、ミゲーラ、チャプラ、ブダイ将軍、バンダカ、アッサジあたりは手塚先生のオリキャラだとのことです。まぁ正確な歴史を知りたいわけではないので、別に良いですし、むしろその辺のオリキャラの存在によって、より心根に響く作品になっていると思います。