ワンコそばにいる

めちゃくちゃリアルなマンガ

ワンコそばにいる 路田行
じゃこ
じゃこ

はじめにお試しで1話を読み始めた時はシュールギャグなのかな?肌に合わないかもな? と思ったけど、 どっこい!! 1話の最後にどんでん返し。 引きが気になって単行本を買った! そして読み終わったら読む前と印象が全然変わった。 ツイッターマンガ風に内容を説明すると 「独り身OL(咲山さん)が仕事から帰ると見た目は人間、中身は犬のシロさん(住田君大学生)がガラスをブチ破って不法侵入していた話」 っとまあ突飛で大ウソぶっこいた設定なんですが人物描写に全然ウソがないんですよね。 まず上の様な状態なのにもしかしたら人間と見間違えてるだけで本当は犬なのかもしれないと何度も信じそうになるし、さらにはそんなヤツをそのまま家に泊める!というなんともぼんやりした人、もとい頭のネジが飛んでいるOLの咲山さんのモノローグが2話のあたまにあるんですが、 そこで彼女は自分自身の事を「満足の上手い人間」と評してるんですよね。 物事への関心がふわふわと薄く、自分で何かを決める事が苦手で、恋人がいない事を同僚に陰口を言われてるのを聞くまで何とも思っていなかったような性格を「満足の上手い人間」と表しているんですけど、確かに周りからはぼんやりしてるようでも自分の頭ではちゃんと考えてるよなと。 確かにこんな人間っているよなって思ったんですよね。 住田君もよく言えばフットワークが軽く、溺れてる犬を助けようとするような良い子。悪く言えば何も考えていない薄っぺらいな、だけどどこか憎めない子なんですけどこんな大学生いるよな〜って。 キャラクターが記号として存在してるじゃなくてちゃんと生きてるんですよね。 それぞれがどこか抜けていたり、悩みを持っていたりと本当リアルなマンガだなと感じました。 まあそんな事は抜きにしてもめちゃくちゃ面白いんですけどね!! 咲山さんヤバいし!シロさんも住田君もかわいいし!お隣さん不憫だし!吹き出し外のローマ字ツッコミおもしろいし! 私はただ生きてるだけで人生の楽しみを探そうともせず灰色な毎日を過ごしていたのにドタバタラブコメに巻き込まれしまう良い人なお隣さんの瀬野さんに感情移入しまくってるので 瀬野さんが幸せになってくれるといいなと願ってます!!

赤灯えれじい

時間に接近する漫画たち

赤灯えれじい きらたかし
影絵が趣味
影絵が趣味

いまや漫画には、豊富なジャンルをして、ものすごい数のタイトルが存在しますけども、"時間"というものに接近していった漫画というのはあまり多くないような気がしています。 映画のジャンルのひとつに「ロードムービー」というのがありますけど、まあ、たとえば、主な登場人物が三人いて、オンボロな車でハイウェイを旅している、と。90分なり120分の上映時間のなかで、いくつかのなだらかな展開があり、映画が幕を閉じるときには、三人の関係性が当初とは変わっていた。というときに、その映画は過ぎてゆく時間というものに接近していると思うのです。 ところが、漫画においては、映画においては王道のひとつとさえ言えるロードムービー的なジャンルがふしぎと存在していないんです。むしろ、漫画は永遠に小学三年生を繰り返す『ちびまる子ちゃん』のように時間から遠ざかってゆくのを得意としているらしい。漫画で"時間"を描こうとした『刻刻』が時間を止めるというところに行き着いたのも示唆的だと思います。 そんな状況のなか、時間に接近していった数少ない漫画のひとつに、きらたかしの『赤灯えれじい』があると思います。いきなり原付バイクで富士山に行ってしまったり、まあ、たしかにロードムービー的ではあるんですけど、登場人物をバイクで旅させたからといって時間に接近したことにはなりません。そういう意味では、漫画においても、旅はつきものだと思いますが、どういうわけか漫画における旅は西遊記的な冒険になりがちです。コマは旅(冒険)における数々の展開を披露して、そこに時間を捻出してゆきます。往々にして漫画における時間というのは、このように流れてゆくものではなく、コマによって捻出されるものなんです。だからコマは時間を捻出することはできても、時間を過去に置いてくることはあまり知りません。コマは時間を副次的につくることはできても、時間そのものと出会うことは知らないんです。 そこらへん、きらたかしは普通の漫画家とは感覚がズレているのか、あるいは意識的にそうしているのか、その都度、その都度、時間を過去に置いてくるような描き方をしてしまう。これは大変なことです。彼の漫画は、漫画としては構造があまりにも異形なんです。 そのほか、時間に接近していると思われる漫画を挙げるなら、『ヨコハマ買い出し紀行』、『敷居の住人』、『げんしけん』あたりがそうでしょうか。このほかにも、こういった漫画があれば、ぜひとも教えてください。